欲に塗れた商業ギルド
「…分からない、です」
怯える受付嬢は、辛うじてその一言を絞り出し。
「…そう」
しかし返答は薄かった。すると、ステラは回れ右をし、受付嬢に背を向ける。そしてカウンタに寄りかかった。
「ぇ…?」
「密会所が発動しているのは偶々。私は受付カウンタに寄りかかる不審者。あなたの事なんて知らないし、あなたが何を言っても、気にも留めない。だけど、偶々後ろから聞こえてきた声に反応して、独り言を呟くことはあるかも。聞こえた事を、強面だけど優しい冒険者ギルド長に、ポロっと喋ってしまうかも」
何とステラは滅茶苦茶な理論を展開し始めた。先程以上に憲兵に突き出されてもおかしくない。
「っ」
しかし受付嬢は気付いてしまった。
自分は、明らかに年下の少女に、気を遣われたのだと。
「…」
「…」
ステラは星占い師だ。
占い師とは、悩める人々を導く者。
悩み相談のプロを舐めてはいけない。
「…本当は」
「…」
「本当は、嫌なんです。あのセクハラパワハラジジイの下で働くのも、休日なのに仕事に呼び出されるのも、残業で事務室の中で日の出を見るのも。給料はケチられるし、辞めたくても辞めさせてもらえないし、挙句ちょっとでも楯突いたら罵倒されて。昨日なんて、冒険者に薬草とポーションをかわせるために、採取ポイントに、除草剤かけてこい、って。そんなひどいこと、したくないのに!」
「…」
不審者は、黙って聞いていた。自身の持つ看破のスキルが、それらが全て嘘ではない事を証明する。
「…そのセクハラパワハラジジイ、他に何をやってるんだろうなー」
「えっ」
わざとらしい不審者の独り言。しかしそれは少し歪な優しさの塊で。
「ううっ…ぐすっ…」
受付嬢は、ゆっくりと、内部告発を始めた。




