温く昏く頑丈なローブに包まれて
「…疲れた」
入った宿はボロ宿だが、夕食付きだった。食事と最低限の寝床のみを欲していた彼女にとっては丁度良かった。
宿の店主は門番と同様、ステラの容姿を見るやいなや、お情けで宿代を無料にした。
ステラはそれが少し居心地悪く、嫌だった。
ぱたぱたと、雨粒が窓を叩く。その小気味良い音が心地良い。
しかし、すぐ休む訳にはいかない。ステラは荷物の殆どを自室に置いて宿を出た。
とぼ、とぼ、という擬音が似合いそうな足音。大通りを歩き、辿り着いたのは、教会。
ぎぎ、ぎぃ…と、重苦しそうな音を立て、大きな扉が開く。
「おや、どうしましたか?今日はそろそろ閉める時間だったのですが…」
中で掃除をしていたシスターに話しかけられる。
「…祈りの間、空いてますか」
「はい、こちらへどうぞ」
自分の姿を見た瞬間、シスターの目が揺れたのを、ステラは見逃さなかった。
祈りの間。
ここでは全ての神が祀られており、神に縋りたい、神に感謝したい、神に懺悔したい、他様々な理由で多くの人が祈りを捧げる。
ステラは星の神に懺悔しに来たのだ。
目を閉じる。両膝を地につける。
(星の神様、申し訳御座いません)
告げる。
(私は、星の力を暴走させ、多くの人を殺めてしまいました。赦してほしい、等とは言いません。…言えません。けれど、自己満足と分かっていても、どうしても懺悔しなければと思い…)
丸々十分、祈りを捧げて。
立ち上がり、回れ右をして、ゆっくり目を開く。
そのままステラは祈りの間を出て、シスターに会釈をし、呼び止めにも応じずに教会を立ち去った。
少女は少しすっきりした様子で、ベッドに転がった。少なくとも、この街に来たばかりの時の、今にも死にそうな表情よりは、幾らかマシになった。
(…きっと、私が赦される事は無い)
視界が半分になる。
(ちゃんと、贖わないと)
それでも。
それでも、この瞬間、この温く昏く頑丈なローブに身を包まれて眠っている時だけは。
この心地良さに任せて、なんだか自分の事を、許してもいいのかな、なんて。
(…ばかみたい)
その信号を最後に、ベッドの上の丸まりは、意識を夢へと落とした。煌めきが、目尻から零れ落ちた。
これにて第一章終了です。
次週はあらすじ投稿を行います。




