役立たずで替えが効く儀式用ナイフ
「はぁっ、はぁっ…」
がむしゃらに走り、気がついたら隣街の検問所前まで来ていた。
ただし、門は通れない。通行料が払えないのだ。
(お金になりそうなもの…できれば、役立たずか、替えが効くもの…)
ポケットをまさぐる。出てきたのは、儀式用ナイフ。物を切る事が出来ない、文字通り儀式にしか使えないナイフだ。
『いいかい。占い師はね、いついかなる時も、占い道具を手放してはならないんだよ』
「…っ」
師匠の言っていた事を思い出す。
(私は、占い師失格だ)
ナイフをすぐ取り出せるポケットに入れ直して、検問所へと向かう。
仮証もらってナイフ売れば通行証と、その後の費用分も入るだろう。
結局、ステラはナイフを失わずに宿泊代では収まらない金を手に入れた。所々に見える火傷痕や靴の無い足などを見て、門番が情けをかけたのだ。
(よくよく考えたら、星の力を暴走させた時点で、星占い師として失格だった。なら、いっそのこと、全て売り払ってしまおうか――)
頭を振って、思考を止める。
(お金が貯まったら、店の設備をまた買えばいい。特注になるだろうから高くなるけれど…あれ?)
どうして、私は“星占い師でいること”に拘っているのだろう?
どうして、その古い存在証明に縋り付いているのだろう?
その日、その疑問が晴れる事は無かった。




