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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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帰り道とギルド職員

 森を抜け、城下町へ続く道をしばらく歩いたところで、ハルたちはこちらへ向かってくる数人のギルド職員と落ち合った。


 どうやら彼らはリムの指示を受けて動いている者たちらしく、合流するなりリムの周囲へ集まり、短く言葉を交わし始める。普段の気さくな様子とは違い、職員たちへ指示を出すリムには迷いがなく、その姿を少し離れたところから眺めていると、本当にこの人はA級冒険者で、しかも自分の試験官だったのだという事実が、今さらながら実感を伴ってハルの中へ落ちてきた。


 少しして、リムが振り返る。


 「悪い。ちょっとだけ離れてついてきてくれ」


 「うん」


 言われた通り、ハルはコウと一緒に少し距離を取り、そのまま一行の後ろを歩き始めた。


 ところが、先ほどまで普通に聞こえていたリムたちの声が、あるところから突然まったく聞こえなくなった。


 距離が離れすぎているわけではない。歩く足音も、風に揺れる草の音も聞こえるのに、リムたちの会話だけが綺麗に消えている。


 (……なんだろう。周りに声が聞こえなくなる魔道具でも使ってるのかな)


 気にはなったものの、ハルはすぐに考えるのをやめた。


 何を話しているのかは分からないが、わざわざ聞こえないようにしているのだから、きっと自分たちが聞いていい内容ではないのだろう。それに、知らなくていいことを無理に知ったところで、あとから面倒なことになるだけだというのは、これまでの経験でなんとなく分かってきている。


 (うん。こういうのは、知らない方がいいやつだ)


 そう結論づけると、ハルはリムたちからそっと視線を逸らした。


 そして、代わりに考えなければならない、もっと身近で、もっと切実な問題へ意識を向ける。


 「……コウ。帰ったら、なんて説明したらいいと思う?」


 「俺に聞くなよ。俺だって怒られる側だろ」


 「でも、コウが先にバリアから飛び出したんだからね」


 「お前は約束破って二回目のバリア張っただろ」


 「それは必要だったから……」


 「俺だって必要だと思ったから飛び出したんだよ」


 どちらがより怒られるのかを小声で相談しているうちに、結局のところ二人とも怒られるのではないかという、あまり嬉しくない結論へ辿り着く。


 そうしている間にも道は少しずつ見慣れた景色へ変わり、やがて前方に城下町の門が見えてきた。


 そこで、それまでギルド職員たちと並んで歩いていたリムが列を離れ、ハルたちのところまで戻ってくる。


 「今日は疲れただろ。俺はこれからギルド長に直接報告しなきゃならないから、お前たちはもう帰って休め。ギルドへの報告は俺の方でしておく」


 それを聞いて、ハルは少しだけほっとした。


 けれど、リムは続ける。


 「それと、POTENの人たちに礼を言っといてくれ。すぐギルドまで伝言を届けてくれたおかげで、こっちも早く動けた」


 「うん。分かった」


 「……まあ、あいつらの話じゃ、相当心配してたみたいだけどな。早く帰って、無事だって説明してやった方がいいぞ」


 「…………え?」


 その瞬間、ハルの足が止まった。


 何か、とても大切なことを忘れている。


 そんな感覚とともに、森の中で最後に魔導通信機を使った時の記憶が、ものすごい勢いで頭の中へ戻ってきた。


 (あ――――!!)


 連絡していない。


 ギルドへ応援要請を頼んでから、一度も。


 確か、最後に送ったのは――。


 —— 《ハルです! 緊急事態! 一緒にいるリムから、ギルドへの応援要請を頼まれました。すぐにギルドへ行って応援をお願い! リムの名前を出してほしいって言ってるから、お願いします!》


 そんな内容だったはずだ。


 今思い返しても、どう考えても緊迫した内容である。


 しかも、そのあとに「大丈夫だった」とも、「無事に撤退している」とも、一言も送っていない。


 そこまで思い至ったところで、ハルはふと胸元へ視線を落とした。


 魔導通信機が、ぴか、ぴか、と何度も淡い光を繰り返している。


 怪物から逃げることに必死で、まったく気づいていなかった。


 どう考えても、一度や二度ではない。


 (…………終わった)


 誰から、どんな連絡が届いているのか。


 確認しなくても、なんとなく想像できてしまった。


 ハルの肩が、がっくりと落ちた。


 これはもう、怒られるかもしれないという段階ではない。


 怒られる。


 間違いなく。


 「……う、うん。すぐ帰って報告するよ」


 力なく答えながら、それでもハルの頭は最後の逃げ道を探していた。


 「いや……でも、その前に魔導通信機で連絡だけしておいた方が……」


 今から「無事です」と送っておけば、少しくらいは怒られずに済むかもしれない。


 しかし、もう城下町の門は目の前にある。


 「……いや、今さらだよね。うん。帰ってからちゃんと話そう」


 それはどう考えても、怒られる時間をほんの少し先へ延ばしただけだった。


 肩にいるコウも同じことに気づいたらしく、何も言わず、なんともいえない同情のこもった目をハルへ向けている。


 リムもまた、ハルの急激な落ち込み方から何かを察したのだろう。先ほどまでの真面目な表情がわずかに崩れた。


 「……お、おう。頑張れよ」


 その励ましが、今は妙に胸に刺さった。


 「一応、明日は俺もそっちに行って、今日のことは説明するから……」


 ハルは勢いよく顔を上げた。


 「絶対来てね」


 「え?」


 「絶対。絶対来て。ちゃんとリムからも説明してね」


 「分かったって」


 「僕が勝手に全部やったわけじゃないっていうのも……」


 「そこは内容次第だな」


 「リムぅ……」


 早くも涙目になったハルに、リムは困ったような顔をしながらも、最後には「ちゃんと行くから」と約束してくれた。


 そうしてギルドへ向かうリムたちと別れ、ハルはコウを肩に乗せたまま、POTENハウスへ続く見慣れた道をとぼとぼと歩き始める。


 怪物から逃げていた時よりも、足取りが重い気がした。


 そんなハルを横目で見ながら、コウはしばらく黙っていたものの、やがて口元をにやりと緩めた。


 「まあ、安心しろ」


 「……何を?」


 「そんな青くなんなって。ちょっと怒られて、しょんぼりしときゃすぐ終わるだろ」


 「…………うん」


 ありがたいような、まったくありがたくないような言葉を受け取りながら、ハルは遠くに見えてきたPOTENハウスへ視線を向けた。


 そして、そこにいるであろう仲間たちの顔を思い浮かべ――もう一度、大きく肩を落とした。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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