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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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2つの原因

 しばらく三人でノートを眺めていたが、リムは顎に手を当てながら「うーん」と小さく唸った。


 


 「それも原因の一つではあると思うんだよな」


 


 ラッカーのサンプルを指先で転がしながら、考え込むように続ける。


 


 「実際、少しずつ増えていく理由としては筋が通ってる。でもさ、ここ数か月の増え方はちょっと異常なんだ」


 


 その言葉に、ハルが顔を上げた。


 


 「リムってすごく詳しいね」


 


 感心したように目を丸くする。


 


 「もしかして、いつも薬草採取の依頼とか受けてるの?」


 


 その瞬間、リムの肩がぴくりと揺れた。


 


 「え?」


 


 一瞬だけ間の抜けた声が漏れたが、すぐに頭を掻きながら笑う。


 


 「いや、あー……うん。そうだな。俺、結構薬草採取の依頼を受けることが多いんだよ」


 


 そう言って机の上のエキセモアへ視線を向けた。


 


 「最近はエキセモアも採れにくくなってるし、高く売れるからな」


 


 その言葉に、コウも納得したように頷く。


 


 「だよなぁ。絶対数が減れば、そりゃ値段も上がるよな」


 


 少し考え込むように翼を組んだ。


 


 「でもエキセモアから作る薬って日常的に使うものが多いんだろ? 値段が上がったら困る人も多そうだ」


 


 「そう! そうなんだよ!」


 


 リムは思わず身を乗り出した。


 


 「ギルドも価格の急な変動は市場に影響が出るから困るって言っててさ。どうにかしろって話になってるんだよな……そう言われたってなぁ……」


 


 そこまで言ったところで、ふっと動きが止まる。


 


 コウが怪訝そうに首を傾げた。


 


 「ん?」


 


 じっとリムを見る。


 


 「どうにかしろって……お前みたいな子供にギルドが頼むのか?」


 


 リムの表情が一瞬固まった。


 しまった——そんな顔だった。


 


 「い、いや!」


 


 慌てて手を振る。


 


 「俺にじゃない! そう言われてる人がいたって話だよ!」


 


 ごまかすように頭を掻きながら笑う。


 


 「ほら、依頼を受けてる冒険者とかさ」


 


 コウはしばらく疑わしそうな顔をしていたが、やがて「ふーん」とだけ返した。


 


 一方のハルはというと、


 


 「そっかぁ」


 


 特に疑う様子もなく素直に頷いている。


 


 その反応を見たリムは、それ以上突っ込まれなかったことにほっと胸を撫で下ろしながらも、どこか複雑そうな表情でアークノートへ視線を落とした。


 その時、ハルが何かを整理するようにノートを見つめながら口を開く。


 


 「リムの話を聞くとさ、原因は少なくとも二つありそうだよね」


 


 そう言いながらアークノートの空いたページへ新しい項目を書き込んでいく。


 


 「ひとつは、ラッカーが少しずつ増えていった原因」


 


 さらさらとペンを走らせる。


 


 「もうひとつは、ここ数か月で急激に増えた原因」


 


 書き終えると腕を組んだ。


 


 「少しずつ増えた理由は、たぶんもう見えてきてるんだ。ラッカーは増えやすい環境にいて、エキセモアは減りやすい環境にあった。だから長い時間をかけて少しずつ差が広がっていったんだと思う」


 


 そこまでは納得できる。


 だが、その先がまだ見えない。


 


 「でも、爆発的に増えた理由かぁ……」


 


 ハルは頭を抱えながら唸った。


 


 するとコウが、ふと思い出したように口を開く。


 


 「なあ、他にはどんな植物が生えてたんだっけ?」


 


 ハルはアークノートをぱらぱらとめくりながら記録を確認する。


 


 「えっと……さっき調べた分類で言うと、草より蔦系の植物の方が多かったかな」


 


 記録を追いながら首を傾げた。


 


 「というか今思えば、草原なのに草らしい草がほとんど生えてなかったよね」


 


 その言葉に、コウがぽつりと呟く。


 


 「草原なのにな」


 


 短い一言だった。


 けれど、その言葉はなぜか妙に引っかかった。


 


 ハルは慌ててアークノートをめくり始める。


 


 「ねえ!」


 


 何かを見つけたように顔を上げた。


 


 「今、その辺りに出る魔物のメモを見てたんだけど、やっぱり変だよ」


 


 コウとリムが自然と身を乗り出す。


 


 「出てくる魔物が、湿地帯とか沼地にいそうな魔物ばっかりなんだ」


 


 ノートを指差しながら読み上げる。


 


 「ぬめりガエルとか、ドュームスライムとか……草原にいる魔物って感じじゃないんだよね」


 


 そこまで言って、ハルは昨日の景色を思い返した。


 足元は少し柔らかく、ところどころぬかるんでいて、空気もどこか湿っぽかった。


 


 「そういえば地面も粘土質だったよね?」


 


 確認するようにコウを見る。


 


 「おう」


 


 コウもすぐに頷いた。


 


 「沼ってほどじゃねぇけど、確かに少しぬかるんでたな。俺は前日に雨でも降ったせいかと思ってたけど、もしかしたら普段からあんな感じなのかもしれねぇ」


 


 その言葉を聞いた瞬間、ハルの頭の中でいくつかの情報が繋がった。


 


 「だとしたら――」


 


 アークノートへ視線を落としながら考えを口にする。


 


 「日向を好むエキセモアとか、草原に生える植物は育ちにくくなるよね」


 


 誰に向けるでもない呟きだった。


 だが、その言葉を聞いたリムの目がわずかに細くなる。


 


 しばらく三人の間に沈黙が流れたあと、リムが静かに口を開いた。


 


 「つまり、そのぬかるみが急激にラッカーを増やした原因かもしれないってことか」


 


 ハルはゆっくりと頷く。


 


 「ラッカーそのものっていうより、湿った環境を好む植物や魔物にとって住みやすい場所になったんだと思う」


 


 そう言いながら新しい項目を書き込む。


 


 《地面の湿地化》


 


 ペン先を止めたまま、ハルはその文字を見つめた。


 


 「問題は、その環境がどうして生まれたのかなんだよね」


 


 少しずつ謎は解け始めている。


 けれど、その答えの先にはまだ別の問いが待っている気がした。


 


 湿地になった原因。


 それさえ分かれば、この草原で起きたことの全体像が見えてくるかもしれない。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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