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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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薬草と毒草の違い

 リムはさっそく空いている椅子へ腰を下ろすと、机いっぱいに広がった図鑑や草のサンプルを興味深そうに眺めた。


 「じゃあ早速だけどさ。どこまで調べたの?」


 


 「えっとね」


 


 ハルはアークノートを開きながら説明を始める。


 「まず薬草のエキセモアなんだけど、薬として使うのは若葉と根っこみたい。若葉はそのまま食べても少し回復効果があって、根っこの方は茹でて汁を煮詰めることで、もっと効き目が強くなるんだって」


 


 「へぇ」


 


 リムが感心したように頷く。


 


 「それに日当たりの良い場所を好んで育つらしくて、成長すると花が咲いて、そのあと実をつけるみたい。その実も食べられるらしいんだけど、回復効果は若葉や根っこほどじゃないらしいよ」


 


 「薬草なのに実まで食べられるんだな」


 


 「うん。僕もそこはちょっと驚いた」


 


 そう言いながらページをめくり、今度は机の上に置かれた毒草のサンプルを指差した。


 


 「それでこっちがラッカー。葉っぱや茎から出る汁に痒みの成分が含まれていて、触るとかぶれるんだって。症状の強さは人によるみたいだけど、ひどいと腕が腫れ上がることもあるらしい」


 


 リムは思わず自分の腕を見る。


 


 「なるほどなぁ……俺がああなったのも納得だ」


 


 「でも死んだりする毒じゃないみたいだから、そこは安心かな」


 


 コウが「それはありがたいよな」と頷く中、ハルはさらに続けた。


 


 「あとラッカーは日陰を好むんだ。花は咲かなくて、種じゃなくて根っこを伸ばして増えるタイプらしい」


 


 「根っこか……」


 


 リムが小さく呟く。


 


 「実際に抜いてみると、それがよくわかるんだよね。エキセモアはするっと綺麗に抜けるのに、ラッカーは根っこが太くて長くてすごく頑丈なんだ。途中で切れちゃうことも多いし、毒草だけ抜こうとしてるのに薬草まで一緒に抜けちゃったりしてさ」


 


 思い出しただけで少し疲れた顔になる。



  「思ってたより、ずっと難しかったんだよ」



 リムは机の上に広がる資料へ視線を落としながら、小さく頷いた。


 「なるほどな」


 


 しばらくノートやサンプルを眺めていたが、ふと顔を上げる。


 


 「それで、ハルたちはこれを調べてどうするつもりだったんだ?」


 


 その質問に、ハルは思わず手を止めた。


 


 「どうするつもりっていうか……」


 


 アークノートを見下ろしながら少し考える。


 


 「正直、そこまではまだ考えられてないんだ」


 


 書き込まれたページをぱらぱらとめくる。


 


 「まずは性質を調べようと思って調べてただけで、どこから手をつけたらいいのかもよく分からなくてさ」


 


 昨日から集めた情報はかなり増えた。


 でも、それをどう使うかまではまだ見えていない。


 


 コウも苦笑しながら頷く。


 


 「確かにな」


 


 机の上のサンプルを見回す。


 


 「最初は性質を知るために調べてたんだけどよ。このまま続けても情報ばっかり増えていく気がするんだ」


 


 翼でアークノートを指した。


 


 「どんどん書き込まれていくのに、肝心の着地点が見えなくなってきたんだよな」


 


 「そうなんだよ!」


 


 ハルも勢いよく頷く。


 


 するとリムは少しだけ笑った。


 


 「それならコウの言う通りだな」


 


 そう言ってアークノートを自分の方へ引き寄せる。


 


 「情報を集めるのは大事だけど、ある程度集まったら次にやることは決まってる」


 


 指先でノートをとんとんと叩く。


 


 「まずは情報を全部並べる。そして、その中から必要なものと必要じゃないものを分けるんだ」


 


 ハルとコウは顔を見合わせた。


 


 「必要なものと、必要じゃないもの?」


 


 ハルが首を傾げると、リムは頷いた。


 


 「そう。全部が全部、大事な情報とは限らないからな」


 


 その言葉に、二人は改めて机の上へ視線を落とした。


 その言葉に、二人は改めて机の上へ視線を落とした。


 しばらくノートを眺めていたハルだったが、不意に何かを思いついたように顔を上げる。


 「僕さ、なんで毒草だけがどんどん増えちゃったのかが気になるんだよね」


 アークノートを引き寄せながら続けた。


 「だからまずは、薬草と毒草の違いを書き出してみたいな」


 


 「それ、いいな」


 


 リムはすぐに頷いた。


 机に広げられた資料へ視線を落としながら、考えるように指を組む。


 


 「違いがあるなら、その中に原因へ繋がるヒントがあるかもしれない」


 


 「じゃあ書いてみるね」


 


 ハルは新しいページを開き、ペンを構えた。


 


 「まず、エキセモアは種で増えるだろ?」


 


 リムの言葉に、ハルがさらさらと書き込む。


 


 「ラッカーは根っこで増えるな」


 


 「エキセモアは日向が好き」


 


 「ラッカーは日陰だね」


 


 「エキセモアは食べられる」


 


 「ラッカーは食べられない」


 


 コウも途中から会話に加わる。


 


 「あと忘れちゃいけねぇのが、ラッカーはかぶれるってことだな」


 


 「あ、それも大事だ」


 


 ハルは慌てて書き足した。


 気がつけば三人とも身を乗り出し、机を囲んで考え込んでいる。


 昨日まではただの草にしか見えていなかったものが、こうして特徴を書き出してみると、まるで別の生き物のように見えてくる。


 


 やがてハルはペンを置き、書き終えたページを二人へ向けた。


 


【エキセモア】


・種で増える

・日向を好む

・食用になる

・かぶれない


【ラッカー】


・根で増える

・日陰を好む

・食用にならない

・かぶれる


 


 「こうして並べると、結構違うね」


 


 ハルが腕を組みながら呟くと、コウも覗き込みながら頷いた。


 


 「思ったより正反対だな」


 


 リムはその一覧をしばらく眺めていたが、やがてノートの上を指先でとんとんと叩いた。


 


 「さて」


 


 口元に小さな笑みが浮かぶ。


 


 「じゃあ次は、この違いの中に、毒草だけが増えた理由が隠れていないか考えてみようか」


 


 そう言われ、ハルとコウも再びノートへ視線を落とした。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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