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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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毒草撲滅チームの結成

 翌日。


 ハルとコウは冒険者ギルドの資料室に籠もっていた。


 棚には植物図鑑や魔物図鑑、地域資料などがぎっしりと並んでいる。昨日採取してきた草や土のサンプルも机いっぱいに広げられ、まるで小さな研究室のような状態になっていた。


 ハルは分厚い植物図鑑を開きながら、首を傾げる。


 「ねえ、コウ。この草ってこれかな?」


 図鑑の挿絵を指差す。


 するとコウは机の上の実物と見比べてから、首を横に振った。


 「いや、違うな」


 翼の先で草をつつく。


 「葉っぱは確かに似てるけどよ、根っこ見てみろ」


 そう言いながら、図鑑の挿絵と実物を並べる。


 「こっちは横に広がる根だけど、この草は縦に伸びてるだろ?」


 「ほんとだ!」


 ハルが目を丸くした。


 「全然気づかなかった……」


 慌ててアークノートへ書き込んでいく。


 


 昨日のうちに、問題となっていた毒草の名前は冒険者ギルドの職員から聞いていた。


 毒草の名前は《ラッカー》。


 そして、守るべき薬草は《エキセモア》。


 だが、それ以外にも現地には様々な植物が混じっていたため、二人は今、その正体をひとつずつ調べている最中だった。



 「これは?」


 「それは昨日見たぞ。たしか《ネムリシダ》だったはずだ」


 「じゃあこっちは?」


 「知らん」


 「知らないのかよー」


 

 資料室の静けさの中で、そんなやり取りが何度も繰り返される。


 


 ハルは図鑑をめくりながら、昨日まとめたノートへ次々と情報を書き足していった。


 草の名前。


 特徴。


 根の形。


 生えていた場所。


 近くにあった植物。


 


 気がつけば、最初は数行しかなかったページが、びっしりと文字で埋まり始めている。


 


 「なんか……」


 ハルがぽつりと呟く。


 「昨日まで全部ただの草に見えてたのに、名前がわかると全然違って見えるね」


 


 コウも机の上の植物を見ながら頷いた。


 「わかるな。昨日までは全部“草”だったのによ」


 翼でラッカーを指し示す。


 「今はちゃんと違う生き物に見える」


 二人は再び図鑑へ視線を落とした。


 その時だった。


 ——コンコン。


 資料室の扉が軽く叩かれ、そのままゆっくりと開く。


 顔を上げると、そこには昨日ギルドで会った男の子の姿があった。


 「あ」


 ハルが気づき、コウも顔を上げる。


 二人がぺこりと頭を下げると、男の子は軽く手を振りながら近づいてきた。


 「ねえ」


 机の上に並ぶ図鑑や草のサンプルを見回しながら、興味深そうに首を傾げる。


 「結局どうだったの? 毒草、殲滅できた?」


 その言葉に、ハルは思わず苦笑した。


 「全然だよ」


 肩を落としながら答える。


 「そもそも準備不足だったんだ」


 机の上のラッカーを指差した。


 「毒草の液が体につくと蕁麻疹みたいになって痒くなるし、薬草と毒草も入り混じってるし」


 ノートをぱらぱらとめくる。


 「どう考えても、一生懸命間引きしてる間に、最初の方がまた生えてきちゃうよねって話になってさ」


 そして、両手を上げた。


 「お手上げだった」


 その様子に、男の子は「あー」と納得したように頷く。


 「そっか」


 少しだけ笑う。


 「俺の時もそうだったよ」


 そして自然な調子で続けた。


 「それで? どうするつもりなの?」


 ハルは机いっぱいに広げられた資料へ視線を落とした。


 「正直、まだ全然わかんない」


 そう言って苦笑する。


 「だからまずは状況をちゃんと調べようと思って」


 アークノートを軽く持ち上げた。


 「毒草がなんで増えたのかとか、どんな特徴があるのかとか、そういうところから調べようかなって」


 周囲の図鑑やサンプルを見回しながら肩をすくめる。


 「それで今、この状態」


 机の上には草の束、土の入った小瓶、びっしり書き込まれたノート、開きっぱなしの図鑑。


 どう見ても、駆除依頼を受けた冒険者というより研究者の机だった。


 男の子はその光景を眺めながら、小さく目を細める。


 「ふーん……」


 どこか面白そうに呟いた。


 それから机に身を乗り出し、並べられた草やノートを覗き込む。


 「なんか面白そうなことやってるじゃん」


 にっと笑う。


 「俺もこの依頼受けてるんだよね。一緒に参加させてくれない?」


 その言葉に、ハルは思わず瞬きをした。


 「え?」


 予想外の申し出だった。


 どうしようかと考えながら、ちらりとコウを見る。


 するとコウは、腕を組んで男の子を見た。


 「お前、まだ十歳かそこらだろ?」


 少し眉をひそめる。


 「この間も傷だらけになったって言ってたじゃねぇか」


 翼をぱたぱたと動かしながら続けた。


 「魔物が出にくい場所とはいえ、絶対出ないわけじゃねぇんだぞ? 親御さんが聞いたらなんて言うか……」


 すると男の子は、ぷっと吹き出した。


 「それを君たちが言う?」


 肩を震わせながら笑う。


 「君だって僕とそんなに変わらない歳に見えるし」


 そしてコウを見る。


 「あなたにいたっては、ぬいぐるみじゃないか」


 今度は堪えきれずに笑い始めた。


 コウが「ぐっ」と言葉に詰まる。


 「た、確かにそうだけどよぉ……」


 なんとも反論しにくい。


 「ハルは特別なんだよ。見た目よりずっと強いし……」


 すると男の子は、今度は少し真面目な顔になった。


 「俺だって、自分の身くらいは守れるよ」


 さらりと言う。


 「邪魔もしないし」


 そして、ちらりとハルを見る。


 「ね? お願い」


 その言葉に、ハルは少し考え込んだ。


 ツムギならどうするだろう。


 エリアスなら。


 サイルなら。


 そんなことを考えているうちに、ふとツムギの言葉を思い出した。


 「そうだなぁ……」


 ハルは小さく頷く。


 「ツムギお姉ちゃんも、考える時は一人より二人、二人より三人ってよく言ってるし」


 そして男の子へ向き直った。


 「じゃあ、危ないって僕かコウが判断した時は、ちゃんと言うことを聞くって約束できる?」


 「もちろん!」


 即答だった。


 ハルはコウを見る。


 コウは大きくため息を吐いた。


 「……まあ、ハルがそう言うなら」


 完全には納得していない顔だったが、反対もしなかった。


 すると男の子は、ぱっと顔を輝かせた。


 「やったー!」


 全身で喜びを表すように、両手をぶんと振る。それから勢いよく手を差し出した。


 「よろしくな! 俺、リム!」


 ハルも笑いながら、その手を握り返す。


 「僕はハル」


 そして隣のコウを示した。


 「こっちは相棒のコウだよ」


 「よろしくな」


 コウも羽をひらりと上げる。


 こうして、毒草調査チームに新しい仲間が加わることになった。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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