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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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作業効率

 ハルはしゃがみ込み、草むらをかき分けながら、一本ずつ丁寧に毒草を見分けていく。


 棘の形、葉脈の色、茎の模様。


 似た草も多いが、薬草採集に慣れてきていたハルの目は、少しずつ違いを拾い上げていた。


 「これが毒草で……こっちは薬草」


 小さく確認するように呟きながら、毒草だけを根ごと引き抜いていく。


 その後ろでは、コウが抜かれた跡地をぴょこぴょこと移動しながら、今度は状態の良い薬草を選んで回っていた。


 「お、これは良さそうだな」


 色艶の良い薬草を見つけるたび、器用に摘み取り、お腹のポケットへしまっていく。


 ハルはそんな様子を見て、少し嬉しそうに笑った。


 「薬草、いっぱい採れそうだね。きっとみんな喜んでくれるよ!」


 するとコウが、薬草を抱えながら頷く。


 「セン爺にもお裾分けしたいよな。ああいうの、絶対喜ぶだろ」


 それから、ふとハルの手元へ視線を向けた。


 「……それより、お前大丈夫なのか? 毒草の汁とか飛んでるだろ。腕、ただれたりしてねぇか?」


 ハルは自分のグローブを見下ろしながら、ぐっと指を握ってみる。


 「うん。今のところ平気みたい」


 表面には毒草の汁らしきものがついているが、手の中へ染み込んでくる感じはない。


 「やっぱりこのグローブすごいね。ちゃんと毒草も弾いてる感じがする」


 感心したように呟くと、コウは「へぇ」と感心しながらも、すぐに真面目な顔へ戻った。


 「でもよー、時間経過で溶けてくるかもしれねぇし、油断するなよ?」


 そう言いながら、自分もまた草むらへ顔を突っ込んでいく。


 「うん、わかってる!」


 ハルも返事をしながら、再び毒草へ手を伸ばした。



 風が吹くたび、草原がざわざわと揺れる。


 地道な作業だったが、不思議と嫌な感じはしなかった。


 黙々と毒草を抜き続けていると、不意にコウが羽をぱたつかせながら声を上げた。


 「さすがに、そろそろ休もうぜー」


 その声に、ハルははっと顔を上げる。


 「……あれ?」


 気づけば、太陽はずいぶん高い位置まで昇っていた。朝の涼しさはすっかり消え、じんわりとした熱気が草原を包み始めている。


 「うわ、もうお昼!?」


 思わず目を丸くする。


 「つい夢中になっちゃってた……! すっかりお昼ご飯食べそこねてるね」


 慌てて腰を伸ばしながら、ハルはえへへと苦笑した。


 「よし、お昼にしよう!」


 そう言って荷物へ向かいながら、心の中では少しだけ不思議な感覚を覚えていた。


 (草むしりって……なんか無心になれるなぁ)


 一本ずつ見分けて、抜いて、分けて。


 単純な作業の繰り返しなのに、不思議と頭がすっきりしていく。


 そんなことを考えながら、ハルは荷物の中からお弁当を取り出した。


 包みを開けば、中にはバルド特製のサンドイッチと、甘い卵焼き、それから香草の効いた肉料理まで入っている。


 「うわぁ……今日も豪華」


 思わず頬が緩む。


 ハルはさっそくサンドイッチにかぶりつき、幸せそうに頬をほころばせた。


 「やっぱりバルドさんのお弁当、美味しいなぁ……」


 そんなふうにほわほわしていると、向かいで薬草を整理していたコウが、ふと真顔になる。


 「なぁ、ハル。俺、気づいちまったんだけどよ」


 「ん?」


 ハルが顔を上げると、コウは草原をぐるりと見回した。


 「これだけやって、依頼範囲の……せいぜい百分の一くらいしか駆除できてなくねぇか?」


 「……あ」


 言われて、ハルも改めて周囲を見る。


 確かに、自分たちなりにかなり頑張っていたつもりだった。


 けれど、見渡す限り、まだ草原は毒草だらけだ。


 コウはさらに続ける。


 「しかもよ、いくら丁寧に根っこ掘ってるって言っても、多分ちょっとは残ってるだろ。これ、また普通に生えてくるぞ」


 薬草をぽいっと袋へ入れながら、眉をひそめた。


 「なんかやり方考えねぇと、終わりそうになった頃には最初の方がまた毒草だらけとか、普通にありそうなんだよなぁ」


 その言葉に、ハルはサンドイッチを食べようとしていた手をぴたりと止めた。


 「……確かに」


 ぽつりと呟く。


 「このままだと、コウの言ってる通りになるよね」


 視線の先では、風に揺れる毒草たちがざわざわと音を立てていた。


 「同じ作業を延々繰り返すのは、さすがに嫌だし……何か考えないと」


 そう言いながらも、表情は少し難しい。


 「でも、毒草だけ根絶して薬草は残すなんて……そんな都合のいいこと、できるのかな」


 考え込むように視線を落とす。


 頭の中では、いくつもの方法をぐるぐると試していた。


 (いっそ薬草を先に全部抜いて避難させる……?)


 (そのあと毒草ごと焼き払うとか……)


 そこまで考えて、すぐに首を振る。


 (いや、それも現実的じゃないよなぁ……)


 量が多すぎる。


 薬草を全部無事に移すだけでも、とんでもない手間だ。


 ハルは小さく唸りながら、再び草原を見渡した。


 風に揺れる毒草たちは、まるでこちらをあざ笑っているみたいに見えた。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

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