↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/211

毒草の駆除依頼

 父さんたちが旅立ってから、しばらくして——リュカの試験が始まった。


 どうやら山の中で行う試験らしく、大きな荷物を背負って、試験官の人と一緒にそのまま町を出ていった。いつもみたいに軽口を叩きながらだったけど、あの時のリュカの背中は、少しだけ大きく見えた気がする。


 「お互い頑張ろうぜ!」


 そう言って笑った顔を、思い出す。



 そして僕はというと——特に大きく変わることもなく、いつもの日常に戻っていた。


 POTENのみんなに頼まれた素材を集めに行ったり、新しい素材探しをしてみたり、最近は毎日冒険者ギルドに顔を出して依頼を受けたりしている。


 「ハルくん、今日はこの依頼頼めるかい?」


 「はい! 行ってきます!」


 そんなやり取りも、すっかりいつものことになっていた。


 その日も僕は、冒険者ギルドの掲示板の前に立っていた。掲示板には、びっしりと依頼カードが並んでいる。その中から一枚を引き抜き、内容に目を通す。


 城外の平野で、トゲの生えた毒草が増殖しているらしい。他の薬草の採取に影響が出ているため、駆除の依頼——報酬はそこそこ、といったところだ。


 「うーん……今日はこれにしようかな」


 カードを指先で揺らしながら、小さく呟く。


 横ではコウが、腕を組んで掲示板を眺めていた。


 「悪くねぇな。採集のついでに片付けられそうだしよ」


 「だよね。放っておくと他の依頼にも影響出そうだし」


 そんなふうに言いながら、依頼ファイルと掲示板を見比べていると——


 「それ、受けるの?」


 すぐ隣から、声がした。


 振り向くと、そこには僕と同じくらいの年頃の男の子が立っていた。特別目立つ格好でもない、どこにでもいそうな子供。でも、なぜかさっきまで気配に気づかなかった。


 「え?」


 思わず聞き返すと、男の子は掲示板のカードを覗き込みながら、軽い調子で続ける。


 「それ、結構きついよ?」


 無邪気な口ぶりなのに、どこか妙に引っかかる言い方だった。


 コウがちらりとその男の子に目を向ける。


 「へぇ……詳しそうじゃねぇか」


 小さく呟いたその声には、ほんのわずかに警戒の色が混じっていた。


 すると、その少年は慌てたように両手をぶんぶんと振った。


 「いやいやいやいや、そんなに睨まないでよ。違うんだって」


 少し身を引きながら、困ったように笑う。


 「僕、昨日その依頼受けたんだけどさ……ほら、こんなんなっちゃって」


 そう言って差し出された腕には、赤くただれた跡と、細かな傷がいくつも走っていた。トゲに引っかかれたような線と、毒草に触れた痕が、まだ生々しく残っている。


 コウはそれを見て、ふっと肩の力を抜いた。


 「……お前、それはひでぇ有様だな。大丈夫かよ」


 さっきまでの警戒はすっと消えて、少し呆れたような声になる。


 「え、大丈夫なの?」


 僕も思わず身を乗り出していた。


 「それ、毒草でしょ。ちゃんと薬塗った? ひどくなるかもしれないよ」


 そう言いながら、そっと手を伸ばす。


 「僕、そんなに強くないけど……ヒールくらいならできるから」


 許可を待つより先に、そっと腕に触れて魔力を流した。


 淡い光がにじむように広がって、傷の上をなぞっていく。赤くただれていた部分が、少しずつ落ち着いていき、腫れも引いていく。


 完全に治ったわけじゃないけど、さっきよりはずっとましだ。…と思おう。


 男の子は目を丸くして、自分の腕を見つめた。


 「……やるじゃん」


 ぽつりと呟いてから、少しだけ困ったように笑う。


 「ありがとう……僕みたいになるよって、警告しようと思っただけだったのにさ。なんか、逆に世話になっちゃったね」


 申し訳なさそうに頭をかいた。


 「ごめん」


 その様子は、どこから見てもただ親切心で声をかけてくれたようにしか見えなかった。


 きっと昨日、自分がひどい目にあったから——同じ依頼を受けようとしていた僕を、心配してくれたんだろう。


 そう思うと、少しだけ胸の奥があたたかくなる。


 僕は男の子に向き直って、軽く笑った。


 「忠告ありがとう。でもさ——誰かがやらないと、毒草って無くならないからさ……」


 手に持っていた依頼カードを軽く揺らす。


 「放っておいたらどんどん広がっちゃうだろうし、それで薬草が取れなくなったら、みんな困るし」


 少しだけ考えてから、うん、と頷いた。


 「どうせやるなら、この辺りから根絶させるつもりでやってみるよ」


 その言葉に、コウが横で肩をすくめる。


 「お、やる気満々だな。まあ、お前らしいけどよ」


 呆れたようで、どこか楽しそうだ。


 男の子はぱちぱちと目を瞬かせてから、


 「すごいね。根絶するくらい、徹底的にやるんだ?」


 と、少しだけ驚いたように聞き返した。


 僕は軽く笑って、


 「うん。どうせやるなら、またみんなが困らないようにしておきたいしね」


 と答える。


 それから、カードを持ち直して一歩踏み出す。


 「じゃあ、受けてくるね」


 そう言って手をひらりと振ると、コウと一緒にカウンターへと向かった。


 背後で、男の子がこちらを見送っている気配がしたけど——僕は特に気にすることもなく、そのまま依頼の手続きを進めた。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

https://ncode.syosetu.com/N0693KH/

⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

https://ncode.syosetu.com/n3980kc/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。