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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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冒険のはじまり

 その沈黙を破るように、ミナがふっと肩をすくめて笑った。


 「でもね、私はそんなの全然気にしてなかったのよ。私にはそういう力があって、それが家族の役に立つなら、使わない手はないじゃない?」


 


 からりとした声が、重くなりかけた空気をやわらかくほどいていく。


 


 その言葉に、クロがわずかに眉を寄せ、腕を組んだまま小さく息をつく。


 「……そういうことばかりしておるから、置いていかれる羽目になるのでござるよ……」


 


 その隣でコウがくつりと笑い、ちらりとハルを見やる。


 「なるほどな、そっくりだ」



 「えっ?」とハルが顔を上げると、コウは肩をすくめて続けた。


 「自分のことより先に他人のこと考えて突っ走るとこだよ」


 その言葉に一瞬言葉を詰まらせたハルは、すぐにミナの方を向き直る。


 「……もう、母さんはさ、いつもやりすぎなんだよ。目が見えなくなるほどやること、ないでしょ……」


 ミナはその言葉を受け止め、少しだけ肩をすくめていたずらっぽく笑った。


 「そうねぇ、ちょーっとやりすぎちゃったかもしれないわね。反省してます」


 くすっと笑うその表情は変わらずやわらかかった。




 ミナは一度ゆっくりと息を吸うと、改めて皆の方へ向き直る。


 そして、少しだけ照れくさそうに笑いながら言った。


 「……やりすぎた尻拭いをさせるみたいで悪いんだけど、また一緒に冒険させてくれるかしら?」


 


 その言葉に、空気がほんの一瞬だけ止まり——


 


 すぐに、クロが腕を組んだまま鼻を鳴らした。


 「ミナ殿のやりすぎは、今に始まったことではござらんよ。……とはいえ、しばらくは力を使うのは控えるでござる」


 


 その横で、アオミネも口元を緩める。


 「だな。今度は俺たちの番だ、ってやつだ。無茶すんなよ」


 


 サイルは、にこりと笑みを浮かべながらカップを持ち上げる。


 「そうですよ、ミナは今回は“ついてくるだけ”です。余計なことをして仕事を増やさないでくださいね?」


 その言葉には、軽い調子の中にしっかりとした釘が含まれていた。


 


 ロザはそんなやり取りを楽しそうに眺めながら、くすっと笑う。


 「それに、しばらく男ばっかりだったから嬉しいわ」


 軽く肩をすくめて、


 「また女子会、しましょうね」


 


 その言葉に、ミナの表情がぱっと明るくなる。


 


 カイルはその様子を見て、やれやれと肩をすくめながら苦笑した。


 「……ミナ」


 少しだけ声を強める。


 「よーく、みんなの言うことを聞くんだぞ」


 


 「はーい」


 ミナは素直に返事をしながら、どこか楽しそうに笑った。


 その様子を見ていたハルは、ぽかんとしたまましばらく言葉を失い——


 やがて、小さく呟いた。


 「……なんか、母さん……子供みたい」



 隣にいたリュカも、こそこそと声を潜める。


 「な。いつものミナさんと、ちょっと雰囲気違うよな」


 二人で顔を見合わせ、小さく肩をすくめる。


 


 そのままリュカは、ふと思い出したように顔を上げた。


 「そういえばさ、この前のダンジョンの時、みんなカイルさんの話はよくしてくれたけど……ミナさんの話って、あんまり出なかったよな?」


 


 その問いに、ロザたちは一瞬だけ言葉を止める。


 


 ロザがちらりとカイルへ視線を送り、少しだけ困ったように笑った。


 「それは……ね」


 


 カイルは、軽く頭をかきながら苦笑する。


 「俺が、話さないでくれって頼んでたからな」


 


 ため息まじりに続ける。


 「どう考えたって、ミナが冒険者だったって知ったら、おかしいと思うだろ」


 


 少しだけ視線を落とし、


 「その流れで能力のことまで知られたら……余計なことまで考えさせちまう。ハルに、余計な負担をかけたくなかったんだ」


 


 その言葉に、ロザが小さく頷いた。


 「……まあ、それは一理あるのよね」


 


 肩をすくめながら、どこか呆れたようにミナを見る。


 「この子の能力と性格を知っちゃうと、困ってることとか……あまり良くない話を、逆にしにくくなるのよ」


 


 くすっと笑いながら、


 「だってこの子ったら、すぐどうにかしようとするんだから」


 


 「えー、そんなことないわよ」


 ミナは口を尖らせながらも、どこか楽しそうに笑う。


 


 そのやり取りを聞いていたハルとリュカは、同時に「ああ……」と納得したように頷いた。


 


 「……なるほど」


 ハルがぽつりと呟く。


 


 ミナはそんな二人を見て、やわらかく微笑んだ。


 「でもね」


 少しだけ声を落とす。


 「子供の本音は、いつだって知っておきたいものよ」


その言葉の余韻が、やわらかく場に残る中——


 ロザが、ふっと息をつくようにして口を開いた。


 「……まあ、大体のことは決まったわね」


 


 視線をハルとリュカへ向ける。


 「A級の試験は、なかなか厳しいわよ。でも——」


 少しだけ微笑む。


 「あなたたちなら、きっと突破できるって思ってる」


 


 その言葉に、リュカが身を乗り出した。


 「なあ、その試験ってさ……今までどんなのがあったんだ?」


 


 興味を隠せない様子に、クロが小さく目を細める。


 「ふむ……そうでござるな」


 


 腕を組みながら、ゆっくりと言葉を選ぶ。


 「リュカ殿は王道の冒険者、ハル殿は素材収集系の冒険者といったところでござろう?」


 


 「うん」とハルが頷くと、クロはそのまま続けた。


 「A級ともなると、それぞれが“己の専門”を持っている者が多い。専門というか……まあ、いわば“偏った者たち”でござるな」


 


 少しだけ口元を緩める。


 「ゆえに、その“偏り”に応じた課題が与えられる。……要するに、出てくる試験はどれも一筋縄ではいかぬ、妙なものばかりでござる」


 


 「妙なものって……」


 リュカが苦笑する。


 


 そこへ、アオミネが肩を回しながら口を挟んだ。


 「俺たちが一番苦労したのは、あれだな」


 


 にやりと笑う。


 「ダンジョンマスターと交渉して、試験官が欲しがってるアイテムを取ってくるやつ」


 


 「えっ、交渉!?」


 リュカが思わず声を上げる。


 


 アオミネは面白そうに頷く。


 「そうだ。しかも相手はダンジョンマスターだぞ? 普通に戦うより面倒だったな」


 


 その横で、ロザがやれやれと肩をすくめる。


 「まだマシよ、それは」


 


 少し遠い目をして、


 「私は水属性なのに、火属性でしかダメージが通らないモンスターしかいないダンジョンに放り込まれたんだから」


 


 「はぁ!?」


 ハルとリュカの声が、ぴたりと重なる。


 


 ロザは小さく笑う。


 「本当に理不尽よ。でも、そういうものなの」


 


 そのあとも——


 サイルが「試験官が気まぐれで条件を変えてきた話」をし、カイルが「制限時間も目的も明かされぬまま数日放り込まれた試験」を語り、アオミネが「途中で試験だと気づかず全力で壊しかけた話」を混ぜるたびに、


 ハルとリュカは笑ったり、驚いたり、時に顔を見合わせて苦笑したりと、忙しく表情を変えていた。


 


 けれど、その空気はどこかあたたかくて。


 厳しいはずの試験の話さえも、今はただ、未来へと続く楽しみのひとつのように感じられる。


 気がつけば、窓の外はすっかり夕暮れに染まり——


 穏やかな時間が、ゆっくりと流れていた。

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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