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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
閑話集

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A級冒険者への推薦

  カイルが、ふっと表情を引き締め話しだした。


  「……さて」


  視線が、ハルとリュカへ向けられる。


  「お前たちに、伝えておくことがある」

 


 空気が、すっと変わる。

 先ほどまでの柔らかさが、わずかに引き締まった。


 

 カイルは、ためらうことなく言った。


 「ロザたちがお前たち二人を——A級ハンターへ推薦してくれた」


 一瞬、言葉の意味が理解できなかった。


 次の瞬間——


 「……え?」


 「は?」


 ハルとリュカの声が、ほぼ同時に重なる。


 目を見開いたまま、言葉が続かない。

 A級ハンター。


 それは、この世界において一つの到達点とも言える称号だった。


 試験を受けるだけでも、誰にでも許されるわけではない。


 確かな実力を持ち、なおかつ冒険者ギルド職員の推薦があって、ようやく“受験資格”を得ることができる。



 だが——本当に厳しいのは、その先だ。



 求められるのは、単なる強さだけではない。


 戦闘技術、判断力、状況対応力、知識、そして人格。


 あらゆる要素が、試される。


 試験の内容は多岐にわたり、形式も一定ではない。


 いつ終わるのか——それすら明確には知らされない。



 不適格と判断されれば、その場で終了を告げられる。


 逆に、すべてを満たせば、短期間で合格することもある。


 数年かけても届かない者もいれば、わずか数日で到達する者もいる。


 ——それほどまでに、不確かで、そして過酷な試験。


 そんなものに、自分たちが——?


 

 ハルは言葉を失い、リュカはただ口を開けたまま固まっていた。



 「……ちょ、ちょっと待ってくれよ」


 ようやくリュカが声を絞り出す。


 「A級って……あのA級だよな?」


 「う、うん……」


 ハルもまだ信じきれない様子で頷く。


  二人の動揺をよそに、ロザが静かに口を開いた。


 「……大丈夫よ」


 落ち着いた声音で、まっすぐ二人を見る。


 「あなたたちには、十分その資格があるわ」


 少しだけ間を置いて、言葉を重ねる。


 「合格までにどれくらい時間がかかるかは分からないけれど……“受けるに値する力”は、もう持っている」


 ハルとリュカは、まだ戸惑いを隠せないまま、その言葉を受け止めていた。


 ロザは、そこでふっと表情を和らげる。


 「それにね」


 視線を少しだけ細めて続けた。


 「A級冒険者に一番必要なものは——強さじゃないのよ」


 その一言に、二人の思考がぴたりと止まる。


 「……え?」


 「強さじゃ、ないのか?」


 思わず顔を見合わせる。


 (じゃあ……何が必要なんだろう)


 驚きと疑問が、同時に胸の中に広がっていく。


 その様子を見て、カイルが小さく笑った。


 「それはな」


 腕を組みながら、少しだけ遠くを見る。


 「きっと、A級になったときに分かる」


 言い切るでもなく、教えるでもなく。


 ただ、確信を持ってそう言った。


 その言葉に、アオミネが「だな」と短く頷き、クロも静かに腕を組む。


 「うむ……その通りでござるな」


 「細かい説明は、ここではできないのよ」


 カップを置きながら、ロザが穏やかに続ける。


 「近いうちに、冒険者ギルドで正式に説明するわ」


 その言葉に、場の空気が再び静かに整っていった。


 その静けさの中で、カイルがゆっくりと口を開く。


 「……それでだな」


 視線をハルとリュカへ向ける。


 「お前たちの試験開始の手続きが済んだら——父さんたちは、ミナの目を治すための旅に出るつもりだ」


 一瞬、空気が止まった。


 次の瞬間。


 「……え?」


 ハルの声が、小さくこぼれる。


 


 言葉の意味を理解した瞬間、ハルは顔を上げた。


 「じゃあ……僕も行くよ」


 迷いはなかった。


 「母さんの目を治す旅なんでしょ? だったら、僕も一緒に行きたい」


 まっすぐにカイルを見つめる。


 「僕だって、役に立てるかもしれないし……何もしないで待ってるなんて、嫌だよ」


 


 その横で、リュカも一歩前に出る。


 「俺も行く」


 短く、しかしはっきりと。


 「正直、どれくらい役に立てるかは分かんねぇけど……それでも、行きたい」


 拳を握りしめる。


 「仲間だろ」


 


 二人の想いが、まっすぐにぶつけられる。


 


 だが——


 


 カイルは、ゆっくりと首を横に振った。


 「……悪いが、それは無理だ」


 「お前たちが足を踏み入れることのできない場所なんだ」


 その一言が、重く落ちる。


 ハルの表情が強張る。


 「でも……!」


 思わず一歩踏み出す。


 「確かに、僕たちはまだ未熟かもしれないけど……」


 言葉が少しだけ詰まりながらも、必死に続ける。


 「それでも、ついていきたいんだ」


 リュカも頷く。


 「お荷物になるかもしれねぇ。でも、それでもいい」


 真っ直ぐな目でカイルを見る。


 「それでも、行きたいんだよ」


 部屋の空気が、ぴんと張り詰める。


 誰もすぐには言葉を挟まなかった。


 張り詰めた空気の中で、ふと——


 ミナとカイルが、そっと顔を見合わせる。


 そして、どこか困ったように、小さく苦笑した。


 カイルは一度だけ息を吐くと、ゆっくりと口を開いた。


 「……ハル」


 呼びかける声は、先ほどよりも少し柔らかい。


 「ちげえんだよ」


 ハルのまっすぐな視線を受け止めながら、言葉を選ぶ。


 「お前たちが弱いとか、足手まといになるとか——そういう話じゃねえ」


 軽く首を振る。


 「そもそも、その場所に入る“資格”がないんだ」


 一瞬、間を置く。


 「だからな」


 少しだけ口元を緩めて続ける。


 「その資格を、取ってほしいと思ってる」


 その言葉に、空気がわずかに変わる。


 ハルは目を瞬かせ、言葉を整理するように小さく息を吸った。


 「……資格……?」



 頭の中で、いくつかの点がゆっくりと繋がっていく。


 (もしかして……)


 ちらりとロザの方を見る。


 さっきの話。A級ハンターへの推薦。


 「……なるほど」


 ぽつりと呟く。


 「だから、A級ライセンス……?」

ツムギの物語はしばらくの間不定期更新、ハルの物語は月曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

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⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

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