↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
父との日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/211

コウテイくん空を飛ぶ

 「……とりあえずだ」


 小さな体で腕を組み、どこか落ち着いた声になる。


 「たぶん俺らも、共鳴型テイムだな。

 ハル、お前にもあるだろ? このマーク」


 そう言って、コウテイくんは自分の胸元をぽん、と叩いた。

 そこには、淡く光る小さな星の印が浮かんでいる。


 「えっ……ホントに?」


 ハルは慌てて自分の腕や首元を見回し、服の裾をめくり——

 やがて、おへそのあたりに、同じ印があるのを見つけた。


 次の瞬間、ぱっと顔が明るくなる。


 「……ほんとだ!」


 ぎゅっと拳を握り、満面の笑みを浮かべる。


 「やったね!

 これからもよろしくね、コウテイくん!」


 「おう、もちろんだぜ」


 コウテイくんも、どこか照れたようにクチバシをゆるめた——が、すぐに表情を引き締める。


 「……ただな、今はそれどころじゃねぇ」


 「え?」


 「なんかよ……

 俺にも風の加護がついてやがる」


 ハルが息を呑む。


 「たぶん、ハルの加護が俺にも流れ込んだんだ。

 でも聞いたことねぇぞ、こんなの」


 コウテイくんは小さく肩を震わせ、にやりと笑った。


 「しかもな……これを使えば——

 おそらく、あれができる」


 次の瞬間。


 ふわり、と風が巻き起こった。


 コウテイくんの足元をすくい上げるように、柔らかな気流が集まり——

 その小さな体が、すっと宙に浮かび上がる。


 「……っ!? お、おおっ!?」


 最初は驚いた声だったが、すぐに弾んだ叫びに変わる。


 「うおおおおー!!

 飛んでる! 俺、飛んでるぞ!!」


 風に乗って、よたよたとしながらも空中を進むコウテイくん。

 翼のような飾りがぱたぱたと揺れ、その姿はどこか滑稽で、でも——確かに楽しそうだった。


 「す、すごい……」


 目を見開いたまま見上げていたハルが、はっとして自分の手を前に出す。


 「……もしかして、僕にもできたりする?」


 そっと魔力を流し、足元に風を集めてみる。


 ——が。


 ふわり、と靴底が浮いたかと思った瞬間、

 重さと魔力の釣り合いが崩れ、すとん、と元に戻った。


 「……あ、だめだ」


 「ははっ、まだ早ぇみてぇだな!」


 空中からコウテイくんが笑う。


 突然の出来事に、周囲は呆然としていた。


 サイルは顎に手を当て、首をかしげながらぽつりと呟く。


 「……コウテイくん。

 理論上、その形状で安定飛行が可能とは思えないのですが……」


 そこで一度、言葉が詰まる。

 ふらふらと風に流され、必死にバランスを取っている小さな影が、どうしても視界に入ってしまった。


 「……いえ、その……失礼。

 笑うべきではないのですが……」


 口元を押さえ、わずかに肩が揺れる。


 「……やはり、物理法則を——

 かなり、自由に無視していますね……」


 その一言に、張り詰めていた空気がふっと緩んだ。


 それから二人は、簡単に経緯を説明した。

 共鳴型テイムであること、互いが対等なまま結ばれたこと。

 話を聞くうちに、仲間たちの表情は驚きから、やがてあたたかな笑顔へと変わっていく。


 「ハル殿にも、よいパートナーができて何よりでござるな」


 クロはそう言って、満足そうに頷いたあと、ちらりとアオミネの方を見る。

 言葉は交わさずとも、二人は顔を見合わせ、うんうんと小さく頷き合った。


 「二人でいれば、どんな時も怖くないでござるよ」


 その言葉に、ハルは少し照れたように笑う。


 「いいなぁ、ハル……」


 リュカは腕を組み、むう、と唇を尖らせた。


 「俺もテイムの才能さえあればさ……。

 まあ、悔しいけど……おめでとう!」


 そう言って肩をすくめると、最後にはちゃんと笑顔で祝福する。


 その様子を、ロザは少し離れたところから静かに見守っていた。

 やがて、考え込むように視線を伏せ、不意に口を開く。


 「ねえ、みんな」


 歩調を緩めた一行の足が、自然と止まる。


 「これまでの出来事……

 正直に言って、心の中にしまっておいたほうがいい情報が多すぎるわ」


 誰もすぐには答えられず、風の音だけが間を埋める。


 「どう扱うべきだと思う?」


 「……確かに」


 カイルが低く頷いた。


 「話す相手は、相当選ばないとな。

 まあ、コウテイくんに関しては……魔道具扱いで、なんとか誤魔化せそうだが」


 その言葉に、ハルもこくりと頷く。


 「うん。ぽても、周りからは魔道具だと思われてるし……

 それでいいと思う」


 皆の視線が、自然とロザへ向かう。


 ロザは一度、小さく息を吸い——

 もう一度、口を開いた。


 「……そうね。じゃあ——」


 ロザは歩きながら、少しだけ振り返った。

 その視線は、ハルとコウテイくん、そして皆へと静かに巡っていく。


 「POTENの皆さんには、なるべく正確にお話ししたほうがいいと思うわ」


 その言葉に、ハルは思わず足を止めた。


 「え……?

 話して、いいんですか?」


 ロザは小さく微笑み、迷いのない声で続ける。


 「ええ。今回のことに、POTENの皆さんはとても深く関わっているもの。

 それに——もし何かあった時、きっと一番に力になってくれるのは、あの人たちよ」


 前を向いたまま、穏やかに言葉を重ねる。


 「ハルを守ろうとする人たちに、

 大事なことを伏せたままにする必要はないわ。

 むしろ、早く、正確に伝えることのほうが大切なの」


 その言葉を受けて、サイルが一歩前に出る。

 いつも通り落ち着いた声音だが、どこか教師のような響きがあった。


 「いいですか」


 ハルとリュカのほうを見て、片目を閉じる。


 「問題が大きくなってから慌てて話しても、

 その時には、もう手遅れになっていることが多いです」


 そして、ふっと口角を上げて。


 「信頼できる人。

 味方になってくれる人がいるなら——

 良いことも、悪いことも、早めに共有する。

 それが一番、安全で、強い選択ですよ」


 その様子に、リュカは「なるほどなぁ……」と感心したように頷き、

 ハルも、胸の奥にすとんと何かが落ちたような顔で、ゆっくり息を吐いた。


 少し離れたところで、そのやり取りを見ていたカイルは——

 思わず立ち止まり、皆を見回した。


 「……そうか」


 噛みしめるように、低く呟く。


 「俺がいない間に……

 こうやってハルを見守って、

 ちゃんと教えてくれていたんだな」


  その目には、驚きと、安堵と、そして深い感謝が混じっていた。


 カイルはしばらく、何も言わずに立ち尽くしていた。


 ロザとサイルが穏やかに話し、

 リュカが何かを思いついたように身振りを交えて笑い、

 クロとアオミネが並んでうんうんと頷き合う。


 ハルも、少し照れたように笑いながら、

 その輪の中に自然と溶け込んでいた。


 先ほどの話の、緊張はすぐにほどけ、

 次は何を話そうか、どこへ向かおうか——

 そんな、他愛もない会話が弾みはじめる。


 自分がいない時間の中で、

 彼らはちゃんと歩き、つながり、支え合ってきたのだと。


 誇らしくて、少しだけ寂しくて、

 それでも——何より、嬉しかった。

ツムギの物語は水曜日と土曜日、ハルの物語は月曜日と金曜日の23時ごろまでに1話投稿します


同じ世界のお話です

⚫︎ 僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜

https://ncode.syosetu.com/N0693KH/

⚫︎ 異世界で手仕事職人はじめました! 〜創術屋ツムギのスローライフ〜

https://ncode.syosetu.com/n3980kc/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。