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【第1章完結】僕だけ戦う素材収集冒険記 〜集めた素材で仲間がトンデモ魔道具を作り出す話〜  作者: 花村しずく
父との日々

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旅の終わり

 ひとしきり空を舞っていたコウテイくんが、ふわりと弧を描いて降りてきた。


 ハルの肩先に着地すると、胸を張る。


 「いやー! 夢が叶ったぜ!」

 短い翼をばたばたさせながら、上機嫌に言う。

 「俺はな、これから空を泳ぐ訓練をするんだ!」


 「……泳ぐ?」

 ハルが瞬きをして聞き返す。


 「おう!」

 コウテイくんは得意げにうなずいた。

 「俺は本当は“泳ぐ鳥”なんだよ。

 異国に皇帝ペンギンってのがいてな、それが俺のモチーフってわけだ。

 海の鳥だから、泳ぐのはめちゃくちゃ速いんだぜ?」


 そう言って、短い足をぴっと突き出す。


 「……でもよ、見ての通り足が短ぇだろ。

 陸を歩いてたら、なかなか前に進まねぇ。

 海もそうそうあるわけじゃねぇし……だから思ったんだ」


 コウテイくんは、ハルを見上げてにっと笑う。


 「空が泳げたら最高じゃねぇかってな。

 ハル、お前の風属性のおかげだ。

 練習すりゃ、自由に空を泳げるようになるぞ!」


 ハルはその足元を見て、思わず苦笑した。

 「……確かに、短いね」

 そして、やわらかく続ける。

 「でも、役に立ててよかったよ。コウテイくん」


 すると、コウテイくんがむっとした顔になる。


 「おいおい、いつまで“コウテイくん”なんて他人行儀なんだ?」

 「コウでいい。コウって呼べ!」

 少し間を置いて、悪戯っぽく付け足す。

 「それとも……ペンギンがいいか?」


 「はぁ!?」

 すかさずリュカが吹き出した。

 「ペンギンじゃコウテイの“コ”の字も入ってねぇじゃんか!」

 「ていうか、ペンギンってなんだよ! 聞いたことねぇぞ!」


 「いやいや!」

 コウはむきになって反論する。

 「異国じゃ、種類的に俺はペンギンらしいぞ!」


 ハルは目を輝かせた。

 「へえ……コウは“ペンギン”って種類なんだ」

 「今度、図鑑で調べてみようよ。リュカ!」


 「おう!」

 リュカも乗ってくる。

 「どんな海の鳥なのか、見てみたいよな!」


 そんなふうに話しているうちに、

 呼び名は自然と「コウ」に落ち着いていった。


 肩の上で、コウは二人のやりとりを聞きながら、

 どこか満足そうに目を細める。


 そして、誰にも聞こえないほど小さな声で、ぽつりと呟いた。


 「……まぁ、この世界の生き物じゃねぇんだけどな」


 その言葉は、風に溶けて消えた。


 「ほらー! 三人とも、早く来ないと行っちゃうわよー!」


 少し先を歩くロザの声が、夕方の空気に軽やかに響く。


 「はーい!」

 「待ってください!」

 「今行くぞー!」


 ハルとリュカ、そしてコウが、顔を見合わせてから慌てて駆け出す。

 小石を蹴り、笑い声を弾ませながら、皆の背中を追いかけた。


 しばらく歩くと、道の先がゆっくりと赤く染まりはじめる。

 低く傾いた太陽が、山の稜線を金色に縁取っていた。


 ロザが振り返り、空を見上げて言う。

 「このままだと、城下町に着くのは夜になりそうね」


 「カムニア町に戻る魔道列車の最終便……間に合あわなそうだな……」

 カイルが少し考え込むように呟く。


 すると、すぐ隣を歩いていたリュカがぱっと顔を上げた。

 「カイルさん、もし間に合わなかったらPOTENハウスに泊まるといいですよ!」

 「バルドさんのご飯はめちゃくちゃ美味いし、みんないい人だし、部屋も余ってるみたいですし!」


 「そうだよ!」

 ハルもすぐに頷いた。

 「父さん、そうしなよ。みんなに紹介したいし」


 その勢いに、カイルは思わず苦笑する。

 「……そうだな。お邪魔じゃなければ、一泊させてもらうか」


 「決まりね」

 ロザがくすりと笑い、皆も「よかったな」「あそこの料理は絶対美味しいでござる」と口々に言い合う。


 わいわいと賑やかな声が続く中、

 道は次第に夕暮れへと溶け込み、赤から橙、そして紫へと色を変えていった。


 その輪の少し後ろで、ハルは歩きながら、そっと胸の内を見つめる。


 ——いろんなことがあった。

 怖かったことも、苦しかったことも、失いかけたものもあった。


 けれど、誰ひとり欠けることなく。

 それどころか、新しい仲間まで増えて——

 こうして、みんなのところへ帰ることができる。


(……本当に、よかった)


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


(早く、みんなに会いたいな)

(これまでのことも、これからのことも……たくさん話したい)


 夕焼けの道を歩くその背中は、

 もう迷いなく、帰る場所へ向いていた。


 ——こうして、ハルたちの長い長い数ヶ月にわたる物語は、静かに幕を下ろした。


 第1章・了

同じ世界のお話です

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