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恋の成就も、ネコしだい?  作者: 朝姫 夢
第五章 幸せになる権利

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3.か細い声で

 それから数日後に、フィリベルトが戻ってきたっていう知らせがようやく届いたんだ。前日もビアンカのとこに行ってたから、たぶんボクがお家に帰ってきたあとの話だったんだろうね。

 ちなみにニンゲンたちが話してた感じだと、ホントはフィリベルトが行方不明だったことは秘密だったみたいなんだけど、ボクたちがフィリベルトがいるとこまで案内したから、特別に教えてくれたみたいだった。

 セレーナもその知らせを聞いて安心してたし、ようやく会えたフィリベルトとの時間をジャマしないように、ボクも今日はビアンカのとこに行かないようにしようって思ったんだ。


 でもまさか、予想してなかったことが起きてたなんて、ボクは全然知りもしなくて。

 一応先に革袋だけ渡しておけば、いつでも手紙をセレーナに届けてあげられるっていう軽い気持ちで、その翌日にフィリベルトの部屋に行ったら。


『…………ルシェ……』

『……え? なんで、フィリベルト……』


 いつもだったらビアンカが丸くなって寝てた場所に、もうお日様が真上にいるこの時間まで、なぜかフィリベルトが寝てた。しかもなんか、ちょっと苦しそうにしてて……。


『ルシェ、フィリベルトがっ……フィリベルトが、昨日から目を覚まさないのっ……』

『!!』


 つらさも悲しさも隠さないまま、ビアンカがか細い声で鳴き続ける。ずっとずっと、フィリベルトのそばから離れようとしないまま。尻尾も全然動かさずに。


『ニンゲンたちが言うには、体が冷えて弱っちゃってるんだってっ……でも触ってみると、ワタシよりもすっごく熱いのっ……』


 ボクのほうを見たのだって一瞬で、あとはずっとフィリベルトのことだけを見ながら、必死に説明してくれる。その姿に、ボクは昨日すぐに来なかったことを後悔したんだ。

 だってホントなら、前みたいに元気なビアンカとフィリベルトに会えると思ってたから。それがまさか、こんなに弱った姿のフィリベルトと、悲しそうなビアンカの姿を見ることになるなんて、考えてすらいなかった。


『ビアンカ……』


 いつもだったらベッドには乗らないでって言われちゃうんだけど、今日はきっとそんな場合じゃないはずだから。ベッド横のテーブルに一度乗って革袋をそこに置いてから、そっとベッドの上のビアンカに寄り添って、心配そうなその顔を舐めてあげる。


『ルシェ、ワタシ……ワタシ、どうしたらっ……』

『大丈夫だよ、ビアンカ。ボクが会った時、フィリベルトはいつも通りだったから。きっとニンゲンたちが言う通り、ずっと外にいて寒くて体が弱っちゃったんだよ』

『でも、でもっ……!』

『だからこそ、ビアンカはフィリベルトの近くにいてあげて。セレーナが言ってたんだ。具合が悪い時にボクが近くにいると、安心するんだって』


 セレーナが倒れちゃうなんて、ホントに珍しいことだけど。でもやっぱり、そういう姿を何回か見たことがある。

 その時に、同じように苦しそうにしながらも言ってくれたんだ。「ルシェが側にいてくれるだけで、なんだか元気になれそうな気がするわ。すごく安心するの。ありがとう」って。

 だからきっと、フィリベルトだって同じはず。だってセレーナとフィリベルトって、結局ボクたちネコのことが大好きなとこは一緒だから。


『むしろビアンカの元気がなかったら、きっとフィリベルトのほうが心配しちゃうから。今ビアンカがするべきことは、しっかりごはんを食べて、フィリベルトの目が覚めるまで近くで見守っててあげることだよ』

『……本当に? 本当に、それだけでいいの?』

『うん! 目を覚ましたフィリベルトがビアンカを見たら、絶対言うよ! いてくれてありがとうって!』


 それだけは、自信を持って断言できるんだ。だってホントに、フィリベルトはビアンカのことが大好きなんだから。

 そもそも休憩時間のたびに、わざわざ部屋に戻ってまでビアンカに会いに来るニンゲンなんだから、心配してくれてたなんて知ったら大喜びだよ。間違いない。


『……そう、よね。ワタシがフィリベルトにできる一番のことは、一緒にいてあげることだもの』

『そうそう。フィリベルトって、結局それだけで喜んじゃうんだよ』

『そうね、そうよね。だってフィリベルトは、ワタシのことを溺愛しているんだから』

『そうそう!』


 ようやく少しだけいつもの感じを取り戻してきたビアンカは、それでもまだ不安そうにフィリベルトのことをジッと見てたから、この日は夕方まで一緒にいてあげることにしたんだ。

 それにほら、そうすればごはんの時に一緒に連れてけるし。ビアンカにごはんを持ってきたニンゲンも、ちゃんと食べてるビアンカ見て安心した顔してたからね。ありがとうって言われちゃったくらいだし。


『なんなら、オヤツも追加していいんだよ?』

「……さすがに、もう出せないからな?」

『ルシェったら、食い意地張りすぎよ』

『えー? そうかな?』


 実際このニンゲンのオスは、もっとボクに感謝してもいいと思うよ。だって小っちゃい声で「ようやく食べてくれた」って言ってたもん。

 でもまぁ、いっか。ビアンカも少しずつ普段通りになってきてるし。

 とりあえず明日からは、フィリベルトの目が覚めるまで毎日ビアンカのとこに来ようかな。雨が降ってなければ、だけどね。



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