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蜘蛛はいろいろ侮れん。

「命名、タランで」


 赤い蜘蛛が前足を上げてこっちを見ている。お前の名前だよ。ルビーがつけろって言うんだから仕方がないだろ!


 赤くて黒い斑点のある蜘蛛の名前なんて思い付かないから毒蜘蛛のタランチュラから取ったんだよ。危険そうだからな俺に対して。今も威嚇してるし。やられっぱなしもなんだし、


「シャーー!」


 俺も手を鉤爪の形にして威嚇する。


「……め!」


 ルビーさん、俺を蜘蛛と一緒に叱らない! いや、うん。反省します。


ニャ。(蜘蛛と同程度か)


 失礼な評価だな! とりあえずルビーと一緒に粘土を与えて捏ねさせる。タランは粘土の上で這い回っているだけだが。


ニャ?(あんたは何してるの?)


 パシュティさんの前足持って頬に押し当ててますが? ニクキュー成分が最近足りないから。ここで補充しておこうと思って。


ニャ!(離して!)


 嫌です。このニクキューのプニプニ感が気持ちいい。前足を上げてつけて、鼻の頭にも。


ニャ。(キモい)


 爪を立てて逃れようとするが、そんなことでは逃がさない! 更に後ろ足も持ってまぶたの上に当てる。パシュティさんが悲鳴を上げているが気にしない。


「……ニクキューアタック!」

「ぐぼっ!」


 右頬に打ち込まれたルビーのパンチでパシュティさんを落とした。そして、


ニャ!(引っ掻き乱舞!)


「ニギャァァァァーー!」


ニャギャ!(背骨が折れると思ったわよ! 何してくれてんのよ!)


 ニクキューの為に無理な体勢にされたことを怒っているようだ。更に噛みついてきた。ついでにエメドラも巻き付いてくる。腕ごと巻き付かないで! 爪から逃げられない!


 顔を碁盤の目処か魚を焼く網目並みにされてようやく解放された。


「俺が一体何したってんだ……」


 泣いているとタランがやって来た。そして、前肢で足をポンポンと叩くとそのまま去っていった。……慰められたのか、バカにされたのか分からない。


「飯の時間か」


 気がつくとそんな時間になっていた。皆は……俺をほっといて行ってしまった。呼びに来るまでここにいてもいいが、パシュティさんがやけ食いして食うものは無くなっているだろう。早く行かなければ!


「……ん?」


 机の上に粘土が置いてある。それはルビーの無表情を模した胸像でよく作られている。ここってあの蜘蛛がいた場所だよな? あいつが作ったのか?


「蜘蛛の癖に侮れん」


 食堂に行くともうすでに食い物は無かった。タランとパシュティさんが競い会うようにして俺の食い物を食い散らかしたらしい。


 じろりと睨むとパシュティさんは澄まし顔でそっぽを向き、タランは威嚇してきた。


「……お前、またでかくなってないか?」


 手のひらで動けるサイズだったのが、手のひらから動きずらそうな大きさになっている。


 ルビーはそいつを撫でて落ち着けようとしている。気づいてるよね? ルビーさん。


「タランはこんなに成長が早いのか?」


 蜘蛛、侮れん。

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