ここに来て、また人化って……
「ねーんねんころーりーと……イテテッ! 噛むな!」
あの激動のBL設定ノート発見事件から2日。俺はルビーの治療に専念させられていた。治療魔法を発動しながらルビーをずっと抱えていたんだぞ!
だから時々、『ひこーき!』と言って片手で持ち上げたり、ルビーの前足を持って変なオジサンの振り付けをしたり、椅子に足組んで座って偉そうにルビーを撫でたりしたけど……その度に噛みつくの止めて下さい。ルビーさん!
昔ばなしに赤子を抱いてくれとせがまれて抱いたら段々と重くなり、子供をおろしてしまうと鬼に殺される話があった。朝まで抱き続けるとお礼を言われて怪力を授かるのだが、俺の手にはルビーに貰った噛み傷と引っ掻き傷しかない。
「世界は理不尽でできている!」
ニャ。(それが普通だろ)
ガンタイさんがベッドでくつろぎながら呟いた。背中を擦り付けるようにしてベッドでゴロゴロしてる抜け毛付くから止めて!
「ニクキューが無ければ放り出してやるのに」
ニャー!(そんな事より支度しなさい! 今日帰るんだからね!)
パシュティさん一緒になって転がって言ってんじゃねえ! ルビーを投げつけてやる!
俺達の頼んでいた荷物が昨日揃ったと連絡が来た。それを取りに行ってそのまま魔の山に戻るのだ。
ニャー!(ルビーちゃんは私の妹として連れていくのよ!)
投げつけられたルビーをキャッチして一緒に転がるパシュティがそんな事を言っている。ルビーの顔が能面みたいに無表情なのを気がついていない。
うーん。みんながゴロゴロしてんのに俺だけしてないのは負けた気がする。あれからルビーの治療で猫に戻ってなかったし、ここは俺も、
ナッ!(ゴロゴロするのだ!)
猫に戻ってベッドに飛んだ。
ーーぺしっ。
顔面にニクキューの感触がしたと思ったら叩き落とされた。
フジャァァァッ!(仕事しろ! 今日帰るんだからね!)
ルビーを抱えたまま、睨むパシュティさんがいた。くっ! ベッドの下をうろうろしながら隙を窺うがパシュティさんが睨みを利かしているのでどうしようもない。……諦めるか。
ナァオ!(そんな事はしない!)
壁を蹴り三角飛びの要領でベッドを強襲する。パシュティさんのニクキューパンチが顔面を強打! 俺は前足を引っかけて抱き込んだ物と一緒にベッドから落ちた。
ニャッ!(返しなさいよ!)
抱え込んで一緒に落ちたのはルビーだった。
ナ―。(ルビーを返して欲しくば、ベッドでゴロゴロする権利をよこせ)
ニャ。(何言ってるのよ)
前足の中で身をよじる。暴れないで!
ニャ!(隙あり!)
ベッドから飛び降りて爪を立てようとするパシュティさん。危なっ。
思わず人間になってドアに向かう。捨て台詞は忘れないぜ!
「あーばよ! とっつあん!」
そのまま手を引いてドアに手をかける。……ん? 手を引いて?
振り替えると赤い目をした黒髪の少女がそこにいた。




