くっ!! ここにもいたのか!
我々はビーライト商会に忍び込んだ。しかも来たのは商会の3階。その屋根裏部屋である。
ナ―?(ここであってるのか?)
ニャ。(ここ)
俺達は先代の住んでいた部屋に来たんだが、ベッドと机が1つだけの部屋って……?
ナ―?(本当にここか?)
ニャ。(住んでた猫が言うんだから信じろ)
商会の会長の部屋だよ? もっともいい部屋で美術品なんかも置いてあるのが普通じゃないの? 使用人の部屋の方が信じられる。
人間の姿になって机の引き出しを開ける。中にはいくつものノートがあった。たぶん商売用のノートだろう。どんなことが書いてあるのか気になったので開いてみる。
……………。
俺は目と目の間を揉みほぐす。疲れてんのかな?BL の設定書いてあるように見えるんだが……冒険者と鍛冶屋の〇〇とかそれに美男子じゃねえし! ガチムチ系だし!
ニャ。(お母さんはときどき変な声あげながら机に向かってた)
ここにもいたのか、BL 信者! なんなのこれ、この世界には腐った奴が引き寄せられてんのか?
ニャ?(この作り物はなんだ?)
ガンタイさんが猫パンチしているのはラッパの音の出る方の形をした物に管が付いている。蓋が付いているので開けてみる。
「猫はどうなっている! 早く殺して死骸を持ってこい!」
「しかし、猫は見つかりません……死んでいるのでは?」
「死んでいるならその死骸を持ってこいと言ってるんだ!」
声が聞こえた。これって音を伝える為の物?
ニャ。(お母さんはよくそれで言って飲み物とかを持ってこさせてたわ)
ニャー!(聞こえてますか~!)
何してんのガンタイさん! ラッパの先に頭突っ込んで! ガンタイさんを引き剥がし耳を当てると先の方が慌ただしくなった。たぶんこっち来るな。
急いで猫に戻り、屋根裏に逃げる。扉をぶち破る様に入ってきたバーコードが使用人を使い部屋の中をひっくり返して猫を探させる。
ニャー!(止めて!)
ルビーが怒りのあまり天井より飛び降りてバーコードの頭に爪を立てる。
「ギャーッ!」
頭の上に乗っかるルビーを掴みあげ、足元に叩きつける。ルビーは転がったまま身動きひとつしない。それに向かって更に蹴りつける。
「このくそ猫が! 人の頭に爪たてやがって!」
頭を引っ掻き傷で血だらけになりながらバーコードはニヤリと笑ってルビーをつまみ上げ、ルビーの目を開かせて覗き込む。
「この目だ、この目。これがあれば俺は貴族にだってなれるぜ」
「どういう意味かな? 教えてほしいな。オジサン」
「ーー!!」
振り返って俺(人間バージョン)を見る俺の回りにはさっきまで部屋を荒らしていた使用人が転がっている。
「どこからわきやがったこのガキ! それにそいつらは……」
「なんだよ。猫持ってきてやったのにその態度は? こいつらみたいののしてやろうか?」
バーコードは信じられないものを見るように目を見開いている。
「バカな……荒事専門もいたんだぞ」
「そんな事、どうでもいいんだよ! で? その猫の目がどうしたって?」
「冒険者風情が知る必要はない!」
「そうかい」
俺は風脚で一瞬で間合いを詰め、鳩尾に拳をめり込ませる。バーコードの体が硬直した瞬間手の中のルビーを奪い取る。
「この猫がね……」
床に叩きつけられ、その上蹴りつけられたルビーは酷く傷ついている。それを胸元に抱えてバーコードから見えないように治療魔法をかける。長い時間かけ続けなければ回複しないかもしれない。
「か、返せ!」
「金くれよ。そうすりゃ渡してやるよ」
「金は下で……」
「持ってこい!」
バーコードは忌々しげに俺を睨み付けると俺の横を抜けて出ていった。素直に金を取りに行ったはずもないし、
ニャ。
ルビーが目を開いた。バーコードと話している間もずっと治療魔法をかけていたが、気がつくのが早いな。
「ナ?(大丈夫か?)」
ニャ。(キツい。痛い)
「ナ―。(少し待っててくれ。楽にしてやるから)」
ニャ?(何を?)
「アアァァァッ! あのくそガキィィィッ!」
俺達が後にした部屋で大声が上がった。そうなるよな。頭を踏み潰され、ペチャンコになったルビーを見れば。
ニャ。(悪趣味)
ルビーがまだキツそうなのにそう言う。
俺はバーコードが戻って来る前に用意していた、クレイの一部と部屋に散乱していた子猫の抜け毛で作ったルビーの1分の1モデルを頭だけ踏み潰して置いてきた。これで諦めることを願おう。
そして俺は抱えたルビーとルビーにどうしてもとせがまれて持ってきたBL 設定ノートを見る。
これ、イランやろ!
どこからともわいて出るBL 信者。それが主人公を怯えさせます。……他に何かありましたっけ?




