冒険者になるのはテンプレでしょう!
「おはようございます! 今日も良い天気ですね」
「……今日は何時雨が降ってもおかしくない天気だが?」
「お天道様が出てるのに!?」
「頭指差してんじゃねぇぇぇ!」
いいわー、この薬屋のオッサン。昨日から思ってたけど、ハゲネタにここまで全力でつっこんでくれる人は珍しいわ。お手手合わせて拝んであげよう。
「モーコン・シメツ、モーコン・シメツ!」
「なんじゃい、そのへんてこな呪文は?」
「髪の毛が増えるおまじないです。これを唱えた方の7割が髪の毛が増えた(気がした)そうです」
「……本当か?」
「信じるものは救われるのです」
去り際にオッサンを見ると一心不乱に祈っている。その頭を箒のフルスイングで一喝するオバサン。確かに入り口でそんなんやられた迷惑ですよね。
「ああ、そうだった。冒険者組合の場所聞くの忘れた」
異世界に来たんだテンプレ行っとこう! そう思って出たんだが場所知らんのよね。ちょっとそこのお姉さん、道教えて。
「ここか」
魔の森に近い壁に建てられた3階建の煉瓦造りの建物。入り口は開放されてその横に門番のような人が立っている。
中は吹き抜けになっていて、1階が受付嬢がいるカウンター。2階が騒がしくて、美味そうな匂いがするから食堂件酒場だろう。3階は見えんからわからん。でも、階段の所に見張り役がいるから偉い人がいるんだろう。
受付嬢のいるカウンターへ。
「受付のお姉さん、冒険者登録は出来る?」
カウンターにしがみついて聞いてみる。子供には高いのよ。
「冒険者登録は出来るけど、危ないわよ」
「大丈夫! 逃げるのうまいから」
そう言うと、クスリと笑った。
「普通、『僕、強いから』とか言うと思うんだけど?」
強かろうが弱かろうが生き残った者が勝ち組では? だから、どんな時でも逃げ切るのが良いのでは?
「この紙に名前と得意な武器を書いてなければ空欄でね」
名前だけ書こう。ペケ……と。
「後はこのカードに魔力を流して」
白色のカードに魔力を流す。見るといつの間にかカードに自分の名前が書いてある。
「このカードは依頼を受けて成功していくと色が変わるの。白、青、黄、緑、赤、紺、黒と変わっていってそれがランク代わりになるから。でも、黄色以上になるならギルドでの試験があって、それに合格しないとカードに細工して色が変わらないようにするの」
面白いカードだなー。色が変わるのか。
「依頼に失敗した場合には依頼料の半額を払って貰うからね。身の丈にあった依頼をやるように」
下手に高額依頼を受けないように対策してあるのか。難しいだろうし受けないけど。
「それじゃ、簡単な依頼を受けてみる? 町中のーー」
「えっ? 受けませよ」
「……はい?」
テンプレの冒険者登録したかっただけだし、それじゃ、受付のお姉さんさようなら。
登録だけで終わらせる! これが猫のクオリティ。




