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この猫、いりません?

ーーコネコネ。コネコネ。


ニャー!(粘土ばっか弄ってないで話聞きなさいよ!)


 灰色猫のパシュティがガリガリと壁を引っ掻いて言ってくる。


 やっと粘土トラウマを克服して入って来れるようになったパシュティは暇なのか粘土で作った物を弄くって遊んでいる。


ニャー。(私の為に何か作りなさいよ)


 いっぱい作ったよね? 象にキリンにカバ。全部元の世界の動物ですけど。……仕方がない。


 茶色いミカン箱にパシュティを入れて、白い紙に『拾わないで下さい』と日本語で書いて箱に立て掛ける。


ニャ?(何なの?)


「そこには『美しすぎる猫、パシュティ』と書いてあるんだ」


ニャ?(そうなの?)


 どことなく嬉しそうだ。


「そこに座っていないとわからなくなるから座っててね」


 よし、これで邪魔されない。コネコネを続けますか。


「ペケ君、どうかな? ……パシュティ、どうした」


ニャ。(いいでしょ)


 ふんぞり返る様に胸をはるパシュティ。それを見ずにその前にある『拾わないで下さい』と書かれた紙をみるアルさん。


「これは……勇者学で見た暗号?」


 そんな真面目に見ないで! パシュティおちょくる為に書いたものなんだから。


「アルさん、何か用事で来たんでしょ?」

「ああ、そうだった」


 アルさんが捏ねて赤くなった粘土を取り上げる。


「これなら普通の魔法は発動できるね」


 おおー! それじゃ今からちゃんと魔法を教えてもらえるので?


「それじゃ、次は……」


 粘土を手の内で捏ね始めるアルさん。それは手のひらから出るくらいだったのに手の中に収まっていく。


「はい、完成」


 広げられた手のひらに、濃い赤色をした球があった。なんですか?それは?


「粘土は魔力を込める量を増やすと小さくなるんだ。これができれば……《火よ》」


 アルさんの指先に小さな火が灯る。


「普通はこうだけど、魔力を込めると」


 指先の火が天井近くまで伸びた。温度も上がっている顔が熱い!


「このくらい出来ないとこの辺の魔物には魔法は効かないから」


 俺は口をあんぐりあけて今のを見ていた。あれ何のチート? 《火よ》ってだけで火炎放射器みたいに火が出たよ?


「ペケ君は今からこれができるように粘土に魔力を意識して込めてね。さっきの粘土位になったら合格だよ。それと勉強も頑張ってね」


 そう言って出ていこうとするアルさんは思い出したように戻ってきてミカン箱に立て掛けてある紙を取り上げる。


ニャー。(『美しすぎるパシュティ女王様』って書かれた私の紙)


 あれ? 微妙に違うような……。


「ペケ君、これ調べさせてもらうよ」


 紙を持って行ってしまった。パシュティもそれを追いかけて出ていった。……静かになったけど、何か寂しい。


 まあ、いいや。コネコネしてれば気がまぎれるだろう。


 後で、アルさんが勇者の文献から捨て猫の真似事をして自分の猫に引っ掻かれたという記述を見つけて来た。それに書かれた文面が全く同じだった。勇者、お前って奴は……。


 ちなみに、ミカン箱と紙はパシュティに引き裂かれゴミ箱行き。俺は……言わなくてもわかるだろ?




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