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森の中に住む者といえば……

 ……ゴリゴリゴリゴリ。


 細長く中央が凹んでいる器に木の実と乾燥させた毒々しい葉っぱを入れ、石でできた取手のある車輪のような物で磨り潰している。


 ……ゴリゴリゴリゴリ。


 充分に磨り潰され混ざりあった所で、薄い紙をしいた器にひっくり返す。それを見ながら、


「アルさん?」

「なんだい?」

「これ、パン作るのにどう使うの?」

「あっはっは! そんなの使うわけないだろ?」


 はぁっ!? その言葉に振り返ると、パンが入った篭を持ってテーブルに置く姿が見えた。


「だって、『パン作るからこれ磨り潰して』って言ったよね?」

「うん。『パン作るから(暇潰しに)これ(薬の原料だから)磨り潰して』って言ったよ」


 分かるか! そんなの!


ニャ。(人と話すのがひさしぶりだからって……)


 パシュティさんため息ついてない? 俺、おちょくられたの?


「ほら、焼きたてのパン。お腹すいただろ?」


 いい臭いのするパンにヨダレがでる。いただきます。


 両手に一つずつ持って交互に食べる。その様子を呆れた顔で一人と一匹が見ていた。パンはやらないからな!


「そんなに焦って食べなくてもいいよ。ああ、飲み物も」


 木のコップに入れられた水を一気で飲む。


「にげぇぇぇぇ!」


 口の中にあったパンのうまさが袋叩きにあって苦味に消えていった。パンよお前の事は忘れない。


「何て物飲ますんだ! 口の中が……ぺっぺっ」

「さっき君が磨り潰してくれた薬を混ぜたんだ。苦いけど疲労回復がついてるから」

「だからといって説明もなしに飲ませんな!」

「それと後、眠くなるから」


 それどころじゃないから。水を、普通の水をちょうだい。……目の前が霞んで、それより……水。



(ФωФ)



 ペケと言った少年を抱えあげると急遽作った小さなベッドに寝かせる。前に垂れている赤と緑のマフラーを弄り、少年の寝顔を見る。


「よくこの森の中でここを見つけられたもんだよね?」


ニャー。


 少年の枕元に寝転がる灰色猫のパシュティに話しかける。


「それによっぽど疲れていたんだろうね。ひっくり返るように寝ちゃって」


ニャー。ニャー!


 パシュティが否定の鳴き声をあげる。ハイハイ。わかってますよ。飲ませた物の中に睡眠作用のある薬も入れたんだから。


「んー、ニャ」


 猫みたいな声をあげてペケ君が寝返りをうつ。その時にパシュティを捕まえると腹にグリグリと頭を押し付ける。


ニャ。ニャー!


 懸命にその頭を四肢で押して離れようとするが、逃げられずに情けない声で鳴いた。


「あっはっは。今夜は一緒に寝るといいよ」


 恨みがましい鳴き声が聞こえるが無視して自分のベッドに向かった。


 朝になると、


「これ、俺の腕です」

「……これは鳥の骨かな?」


 目の前に出された骨を見てそう呟いた。


「まだまだこんなに細いです。食っても美味しくないですよ。食べるつもりなら太ら……」

「私を何だと思ってんの? 食べないからね!」

「目が悪いんでしょ? 触って確認するんだよね?」

「何と勘違いしてるのか判らないけど、食べないからね!」

「ヘンデルとグレー」

「食べないからね!」


 ペケ君を説得するのに半日つぶれた。

お話に目の悪い魔女に骨を触らせって、『太ってないよー』ってあった気がします。


違ってたらご免なさい。

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