Side D-4
あの日、イリアはすぐに戻ってくると思っていた。
一日経っても、三日経っても戻ってくる気配はなく、帰ってきたカルロも探すと行ったきり戻らなかった。
数日が経って、クラリスへ連絡を取ると捜索願を出し、励まされた。
11歳の娘なら迷うことなど考えられない、なにか事故や事件にあったのではないかと話が膨らんでいた。
クラリスの夫であるレックスが所属する陸軍を通して探してもらったが、近頃そのような話はないと言われた。
時間が経つにつれ、頭の中でなにかを考える事ができないほどに憔悴しきっていた。
「私、ちゃんとイリアを愛せなかったわ」
ぼんやりと空を見上げた私はクラリスにそう呟いていた。
「あの子の髪……私が切り落とされた黒髪をね、綺麗に伸ばしていたの。小さい頃は私も自慢だったのにね」
「姉さん……」
クラリスはなにも言わずに私の髪を撫でて抱きしめてくれた。
「私、短くても姉さんの黒髪好きよ。私はこの色で異色な目で見られることもあったけれど、私にはない力強さが姉さんにぴったりだと思っていたの」
きっと、ただ誰かにそう言ってもらいたかったのだと今になって思う。
溢れた涙がその証拠だった。
「とても似合っているの、私は大好きよ」
新しい母にも愛されたかった。
カルロにだって、愛してもらいたかった。
切り落とされた黒髪は、ただそれだけで「いらない子」という烙印のようになっていた。
自慢の黒髪がコンプレックスに変わり、それを持ったイリアにも同じことをしていた。
どうしようもない後悔が溢れて、
「あ……あ、私、私、あの子にとても酷いことを言ってしまったの、あの子を憎んでいたんじゃない、私は、あの子に、私自身を重ねていたんだわ、どうしよう、ごめんなさい……イリアッ!」
クラリスにしがみついたまま、私は子供のように泣き叫んでいた。
嫉妬と苛立ちは、後悔と焦りに変わっていた。
あの子に会って愛していることを伝えたい、抱きしめてあげたい。
ただそればかりの日々だった。




