Side D-2
「姉さん、今度紹介したい人がいるの」
冬の終わりが近づいてきた頃、
妹のクラリスからそんなことを言われた。
「カルロ義兄さんも一緒に家でお食事会なんてどうかしら?」
「そう……彼に空いている日を確認してみるわね」
クラリスは嬉しそうに頷き、ブロンドの髪を整える。
"紹介したい人"との約束があるのだと言っていた。
自分の妹ながら、クラリスは容姿も品性もとても良いと思う。
同じ父の血を受け継いでいても、母が違うだけで印象は違う、母がクラリスに惜しみない愛情をそそいだのも分かる、彼女は異国の人形のような愛らしさを持っているのだから。
「いってらっしゃい」
「今日は遅くなると思うから、先に休んでいてね」
「私のことは気にしないで、楽しんでらっしゃいな」
「ふふ、いってきます」
少し恥ずかしそうに微笑むと、クラリスは家を出て行った。
ふと脇に飾られた鏡に映る自分と、目が合う。
無造作に切られた黒髪は顔の輪郭あたりで毛先を散らしている。
そして手入れもされていない肌、ほんのりと灰色の瞳。
あまりに対照的すぎる私とクラリス。
大切な妹で、私のあこがれるものを持っていて、そしてとても憎らしい子。
次の冬を迎える頃には、クラリスはその彼と結婚して家を出ていた。
私にも主人のカルロとの間に娘が生まれた。
私によく似た黒髪を持って生まれ、目の色は父やカルロと同じ青色をしていた。
白い肌と青い目は幼いころから羨ましいと見ていたクラリスを思い出すことが時折あった。
それでも私は、娘のイリアをとても大切に育てていた。
誕生日にはクラリス夫婦も呼んで、ケーキを一緒に作ることもあった。
「イリア、四歳の誕生日おめでとう。この絵本はねイリアのママも私もとっても大好きな絵本なの」
「ありがとう、クラリスおばさん」
「この絵本に出てくるお菓子の家を探して、イリアのママは森へ冒険に行った事もあるんだって」
「よくそんな話覚えてるわね、私自身が忘れていたわ」
「だって、姉さんが泥だらけになって泣いて帰ってきたんだもの、忘れられないわ」
暖かくて、穏やかな時間だった。
クラリスからもらった絵本をイリアは何度も何度も読んでいた。
軍に勤めるクラリスの夫レックスに文字を教えてもらいながら、本がボロボロになるまで読んでいた。
穏やかなその時間を壊したのはなにが原因だったのだろう。




