Side D-1
とある森の、とある家。
甘い香りが漂うそこは、子供の笑顔で満ち溢れていました。
晴れたその日
庭で遊ぶ子供たちは、視界を覆うように手で顔を塞いだ少年以外、各々が木の陰や門の外側、建物の裏手へ隠れていました。
「もういいかーい」
「まーだだよ」
笑い声が響くなか、この家の院長先生は子供達のいる庭のベンチで届いた郵便物を確認しています。
白い封筒に軍の印がされたそれを手に取り、中を確認すると
「……!」
「もーいいよー!」
一瞬の静けさ、
初老を迎える院長先生は、鬼の子供が走り出したその庭先で静かに涙を流していました。
***
母は、とても美しい黒髪だった。
父は、いつもその黒髪を撫でていた。
私も、母と同じ黒髪が自慢だった。
父に撫でられたから丁寧に伸ばしていた。
だから……
新しい母が、この黒髪を切り落とした意味が分からなかったの。
***
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
妹は、新しい母と同じ美しいブロンドを持っていた。
真っ白な肌と深い青色の瞳がとても映えている。
とても素直で可愛い私の妹。
父は私も妹も同じように可愛がってくれていたけれど、その影で新しい母は私を嫌っていた。
切り落とされた黒髪と、父を愛する新しい母を見ているとそれが母の面影を持った私に対する嫉妬から来ているのだと分かった。
父が亡くなった後は、より酷い扱いを受けた。思い出したくもない記憶ばかり。
そんな新しい母も、はやり病で亡くなったとき、妹が泣いている横で私はただぼんやりと空を見上げていた。
涙なんて出なかった。
それは、私の子供の頃の記憶。




