Side C-9
走り出してしばらくは無言のままだったが、さすがにアレフさんの速度は落ちない。
僕もリクを必死に抱えながら、その後ろを走っていた。
「あのっ、調査隊って、何名いるん、です、かっ!」
走りながらも気になっていたことを聞いてみる。
もしたくさん居るのなら、その分カノンの身の安全が高い気がした。
「んー、オレを入れて3人。さっきまで一緒だったけど途中で村への道を見失って村人らしき人たちを見つけたんだ。二人はそっちに向かっている、その途中で火事が見えたからオレは小屋に居たってわけ」
全く会話のテンポが変わらないのはさすがだ……。
「その、村人たち、と、カノンは、一緒なんですかねっ!?」
「さぁな、とりあえずは村に……って、」
途切れた言葉に顔を上げる。
さっきの小屋以上に明るい、まだ夜明けは遠いはずなのに……
遠目でも分かる、あれは建物の屋根で、そしてそれは燃えている。
「なに……なんで、あっちまで!?」
村の入り口が見えてきた。
村人が走りまわる、何人かは森の中へと走っていた。
柵も家も至るところに火が回って、村全体が燃え上がっていた。
「レックスさん、ケビン!」
アレフさんは入り口の少し先に居る同じ服の二人に声をかける。
炎が回る村に絶句する僕の隣で、三人は会話を交わしていた。
「二人とも無事だったんっすね!オレが行った上の火事は小さな小屋が燃えていたんですが幸い人もいなかったですよ、ていうかこっちのほうがまずいっす!」
カノンが見当たらない……
「アレフも無事ならよかった、で、その子は?」
倒れた屋根から逃げ出す人のなかにも、
「上の火事で遭遇したんですよ、課外講習でキャンプやってる少年兵の1人で、その小屋に居た女の子と知り合いみたいで……」
火を付けて回る男たちの間にも、
「女の子?」
視線は一際火柱を上げる中央に向いた。
考えるより先に足が動く、
「あ、おいライナス!」
火柱の中央から目が離れない、走りすぎたのか足に力も入らず膝をつく。
勘違いであってほしい、現実は違う
あの火の中はきっと別のもの、現実は違う
逃避と現実が頭の中で入り乱れる。
その目の前では、三人が火柱の中心にあった木の消火をする。
水がかけられた黒いものがなんなのかを理解すると足を引きずって近寄る。
「カノン!カノン!!」
黒い髪は焼け、皮膚は爛れている。それでも分かった。
呼びかけても返事はない。
「……っ!?なんで……」
カノンを抱えていた軍人の1人が、大きく目を見開いていた。
「危ない!レックスさん!!」
呼び声に顔を上げたが、焼けて落ちてきた建物がもう目の前にあった。




