SIde C-6
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「ねぇ、それならリクだけをつれていって?」
無理の無い体勢になるようリクを抱えると、扉の外の様子を伺っていたカノンは振り返った。
「え、でも・・・」
「リクだけなら、森の中で見つけたって言えばいいけど、私がいたらそうもいかないでしょう?……だからお願い。」
カノンにじっと見つめられるとなにも言い返せなくなる。
「わ、わかったよ、治療も必要だから少し遅くなるけど、必ず連れて戻るから」
「うん、待ってるからお願いね。リク、すぐに痛くなくなるからね」
リクの頭を撫でるとカノンは笑顔を向けて扉を開けてくれた。
シーツに隠すようにリクを抱き上げると小屋から出て走りだした。
痛さからかカノンから離れるのを拒むのか腕の中で暴れるリクにひっかかれたが、それを抱き込んでとにかく泉へと向かった。
何度も歩いた小道は夏の湿気のせいか少し滑りやすくなっていたが、泉への森の道を慎重に歩く。
やがて月明りが水面を照らす、草むらから泉へと足を踏み込んだ。
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「えーっと、ここから……あ、あそこです」
「こんなとこがあったのか」
「前に先輩が見つけたってのを聞いて、ライナスと来たんですけど、その時はそこに女の子が居て……」
「お前等は訓練に来ている中でなにしてんだ!」
「す、すみません!でも、でも最初に見ただけであとは一回も来てないです・・・・・・お、俺は」
「あとで別に事情は聞かせてもらう」
落ち込んだトールと辺りを見まわす上官が同時に物音に気づく、
「あ」
草むらから僕は足を踏み込み、
泉のふちで水面を見ていたトールが顔をあげ、
上官がこれ以上ないくらい顔を怒りへ豹変させ、
三人は同時に声を出した。
「ライナス!」
「トール!?」
僕とトールの声が響く。
遅れて上官がこちらへ一歩踏み込んできた。
「おい、ライナスお前今までどこに」
「そ、それより、この猫を助けてください!話はそのあとで……!」
「猫?」
すかさず僕は抱えていたリクを上官に見せる、すぐに状況を察してくれたのか、ひとまず咎めることはなくなり、月明かりの当たる場所へ移動をしてすぐにリクの状態を見てくれた。
「なんでこんな状態に……」
後ろ足はあらぬ方向に曲がり、腹部は血まみれで、目もとは腫れ上がっていた。
「トール、すぐにテントに戻って消毒剤とタオルをもってこい、ライナスはシーツの綺麗な部分を水で濡らすんだ、早く!」
上官の声が響く、バタバタを走り出したトールを横目に指示された通りシーツを千切って濡らしてを繰り返す。
やがて、トールが持ってきた包帯に包まれ、近くにあった木を支えに使いリクは静かに寝息を立てていた。
血まみれになった服や手を洗い、泉で顔を洗うと三人揃って一息をついた。
空はうっすらと明かりが出てきて、そろそろ朝食の時間になるころだった。
トールは泉に足をつっこんで疲れを取りながらうとうとと寝息を立てていた。上官もあくびをかみ殺し、僕を見る。
「あの、僕……この子の飼い主とこの泉で知り合って、それで今日は眠れなくてこのあたりうろうろしてたら、そいつを見つけて……あの、後でどんな罰でも受けます。だから今はこの子の飼い主の元に戻しにいかせてください」
「これ以上の勝手が許されるわけないだろう、行くなら一度テントに戻ってからだ、その猫だってこのまま休ませた方がいいだろう」
「……わかりました」
起こさないようにリクを抱きかかえた僕は上官と、上官に起こされたトールとともにテントへの道を歩き出す。逃げ出そうと考えたけれど、腕の中のリクを見ると今は休ませることを優先しようと思った。
「朝日がまぶしい」
トールは上官からの直接の目覚ましが本日二回目だとぼやいていた。
テントに戻ると、午前の講習が行われていた。
僕とトールは着替えと朝食と休憩を取ることを優先された。
朝食はもう片付けもとっくに終わったせいで、携帯食料の乾き物しか残っていない。
それをお茶で流し込み、枕元に寝ているリクを確認してからテントで横になるとすぐに睡魔が襲ってきた。
「つかれた……」
そう呟いて、いつの間にか眠りに落ちた。




