ターゲット達
翌日。黒崎のアパート。テーブルの上にはノートパソコンと大量の写真が並べられていた。
ミコは思わず息を呑む。
「これ……」
「お前をいじめてた連中だ」
黒崎はコーヒーを飲みながら答えた。
「SNSから顔も生活パターンも全部調べた」
写真は五枚。一人ひとりの名前が書かれている。黒崎は一枚目を手に取った。
「佐藤由奈」
由奈の笑顔の写真だった。学校では人気者で、教師からの評判もいい。だが、その笑顔の裏でミコを笑い続けた張本人だった。
「主犯格だな」
ミコは静かに頷く。
「黒板に『ミコ自殺予想』って書いたのも、この人です」
次の写真。
「山本愛」
茶髪の女子だった。
「スマホ担当です」
「担当?」
「私の写真を勝手に撮って、SNSに載せてました」
三枚目。
「高橋優香」
ショートカットの女子。
「暴力担当です」
「なるほど」
「体育館裏で何度も殴られました」
四枚目。
「藤井翔太」
笑いながらピースしている写真だった。
「優香の彼氏です」
「机に『死ね』って書いたのも、この人です」
黒崎は写真を机へ戻した。そして最後の一枚を手に取る。黒髪の女子だった。制服も髪型もきちんとしている。どこから見ても優等生だった。
「西園寺麗華」
「政治家の娘です」
「政治家?」
「学校にも影響力があります」
黒崎は写真を見つめる。麗華だけは他の四人と少し違った。直接ミコを殴ることはない。机に落書きもしない。だが。いつも教室の一番後ろで笑っていた。誰よりも楽しそうに。
「いじめには参加しなかったのか?」
黒崎が尋ねる。ミコは首を横に振った。
「参加してました」
「でも……」
「自分では絶対に手を汚さないんです」
ミコは写真を見つめたまま呟く。
「『汚れるから嫌』って」
黒崎は何も言わず、ただ楽しそうに、五枚の写真を並べる。
「一人ずつ追い詰める」
黒崎は静かに笑った。
「恐怖は伝染する」
「一人が壊れれば、次も怖くなる」
「二人壊れれば、残りは勝手に怯え始める」
「やれるな、ミコ」
即答はできなかった。ミコは五枚の写真を見つめた。本当に、こんなことをしていいのだろうか。復讐が終わっても、自分は元の自分には戻れないかもしれない。
それでも――。あの日々を忘れたまま笑って生きているあの五人だけは、許せなかった。ミコは小さく息を吸い、ゆっくりと頷く。
「……やります」
黒崎は静かに笑った。
こうして、五人への復讐が始まった。




