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再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。  作者: 新城かいり
魔族の街

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第77話


「あ、ごめん、ちょっとだけ待ってて。一応クレマに声掛けてくる」


 カネラ王子はそう言って先ほどの建物の方へと駆けて行った。


「……本当に信じて良いのでしょうか」


 その後ろ姿を見つめながら訝しげに言ったのはローサだ。

 エルとは一度手を離したみたいだ。


「大丈夫、だと思う」


 そう、思いたいだけなのかもしれないけれど。

 先ほどエルから魔族たちとの共謀を疑われたときの反応は嘘には見えなかった。


「あの方が魔族だというのは、コハル様は御存知だったのですか?」

「う、うん」


 隠していた手前、気まずく思いながら頷く。


「私も知ったのはついこの間だけど、彼、自分が魔族だっていうことを気にしてるみたいだったから……」

「コハル様は優しすぎます」


 溜息交じりに言われて慌てて弁解する。


「私も完全に信じてるわけじゃ」

「さっきの彼の言葉に偽りはないと思うよ」


 エルが穏やかに言う。


「彼が本当に魔族と共謀して魔王復活を目論んでいるのなら、もっと良い方法はいくらでもあったと思うし。例えば、コハルを殺してしまうとか」


 笑顔でさらっと怖いことを言わないで欲しい。

 お蔭でメリーからまた強く抱きしめられて「ぐぇ」とか可笑しな声が漏れてしまった。


「まぁ、用心するに越したことはないけどね」


 そう続けたエルの視線を辿ると、カネラ王子が丁度建物から出てきたところだった。

 彼は私たちの元まで走ってくると息を切らせながら言った。


「クレマが、改めてお礼がしたいから必ず戻ってきてくださいって。見送りたいって言われたけど、断った」


 そこで彼は一度大きく深呼吸をし目を閉じたかと思うと、バサっという羽音とともに魔族の姿へと変身した。


「この姿、あんまり見られたくないから」


 ローサとメリーが初めて見るその姿に息を呑んだのがわかった。

 魔物と同じ禍々しい翼。冷たく硬質そうな肌。そして鮮血を思わせる真紅の瞳。魔物の血を引いているのだと一目見てわかる姿だ。

 瞬間、あの夜の冷たい感触を思い出してしまって慌てて振り払う。今はそれどころではない。


「それと、一応ラクダたちの世話をお願いしてきた」


 カネラ王子が水辺の方を振り返り言った。

 水辺では私たちを乗せてきてくれたラクダたちが休んでいて、それを聞いて安心する。

 すぐに戻れたらいいけれど、どうなるかわからない。


「それじゃあ、いこうか」


 エルの声に頷き、私たちは一斉に空へと跳んだ。






 日がほぼ真上になり、灼熱の中を飛ぶことおそらく15分程。


「見えてきた。あれが魔族の街」


 私たちの前を飛ぶカネラ王子が前方を指差した。

 少し前から足元に広がるのは砂の大地ではなく、石と岩だらけの赤茶けた大地に変わっていた。

 カネラ王子の指差した先にはごつごつとした岩山がいくつも聳えていて、きっとあのどこかに『竜の洞』と呼ばれる洞穴があるのだろう。


 念の為、今私達はエルの魔法で姿を消している。

 魔族たちに見つかったら余計な争いに発展してしまうかもしれない。

 今はリューを、『竜の洞』を見つけることが最優先だ。


「どこにあるんだろう、竜の洞」

「洞ってことは、穴が開いてるってことですよね?」

「うん、多分……」


 メリーの問いに答えながら辺りを見回す。

 しかし見渡す限り赤茶色の岩山ばかりで、もう少し低く飛ばないと洞穴を見つけるのは難しいかもしれない。そう思ったときだ。


「あっちの方から、なんか呼ばれてるような気がする?」


 なぜか疑問形で、カネラ王子が右の方角を指差した。


「呼ばれてる?」

「そんなような気がするだけだけど」


 酷く曖昧な言い方に困って私はすぐ横を飛ぶエルに声をかける。


「エルは何かわかる?」

「確かに、何か嫌な感じはするかな」


 こちらもかなり曖昧だけれど、手掛かりは何もないのだ。行ってみるしかない。

 少し高度を下げ、相変わらず様々な形の岩山が連なるその方向へと進んでいくと。


「魔族たちです」

「え?」


 ローサの緊張した声が聞こえて、私達は彼女が指差した先に視線を落とした。

 確かに岩山の間に小さく人々の姿が見える。

 よくよく見るとその周辺の岩山にはたくさんの横穴が開いていて、そこがどうやら魔族たちの住居になっているようだった。


「魔族たちの集落だね」


 エルがなんだか興味深そうに言い、メリーが私のすぐ耳元で泣きそうな声を上げた。


「あんなふうにいっぱい穴が開いていたら、竜の洞があってもわからないのです」

「確かに……」


 竜の洞というくらいだからもっと大きな洞穴を想像していたけれど、あのどれかという可能性もゼロではない。

 どうしようと考えていると。


「俺が訊いてこようか」


 そう言ったのはカネラ王子だ。


「同族の俺になら、もしかしたら教えてくれるかも」

「でも、」


 確かに同じ魔族かもしれないけれど、あんな襲撃事件があった後だ。王子である彼がいきなり飛び込むのは流石に危険過ぎる。しかし。


「急いだ方がいいでしょ。とりあえず姿消したまま様子見て来るよ」


 言うなり彼はその集落に向かって降り始めてしまった。

 と思ったらぴたと止まってエルの方を見上げた。


「合図したらこの魔法解いてください」

「了解」


 そして再び下降を始めたカネラ王子を見ながら、エルが何やら楽しそうに言った。


「僕たちもついて行こう。姿は消したままね」




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