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再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。  作者: 新城かいり
覚悟

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第31話


「300歳!? エルが!?」

「ああ、確かそのくらいだと聞いている」


 寝る前にリューからエルの実年齢を聞いて、私は大きな衝撃を受けていた。


(あのエルが、300歳……)


 見た目は今の私とそう変わらなそうなのに。

 リューが寝返りを打ち仰向けになって続ける。


「奴ら妖精は千年生きるとも言われているからな」

「千年!?」


 またしても素っ頓狂な声が出てしまった。


(あー……でも、それだけ長く生きているなら、あの雰囲気も納得かも……)


 笑顔でひらひらと手を振るエルを頭に浮かべながらそう思った。

 あの全部見透かしたような、どこか達観したようなところも300歳だというなら頷ける。


「そっか……だからリューのことも『竜帝くん』なんて呼び方してたんですね」


 ふと思い出して言うと、リューの天井を見つめる目が剣呑なものになった。


「奴は父上のことも『竜帝くん』呼ばわりだった」

「え」

「妖精王だがなんだか知らんが、なんて失礼な奴だと幼心に思ったものだ」


 お父さんを馬鹿にされたようで腹を立てているリュー皇子が容易く想像出来てしまって苦笑する。


「エルから見たら、私たちは皆子供なのかもしれないですね」

「……だがコハル、奴には気をつけろ」


 真面目な顔で言われて小さく息を吐く。


「まだそんなこと……エルとはホント何もありませんて」

「だが、特別だとか言われていただろう」


(あれはリューの反応を面白がっていただけだと思う……)


 でもこれ以上ややこしくしたくないので言わないでおく。

 と、思い出したようにリューが身体をこちらに向けた。


「そういえば、結局ふたりでどこへ行っていたんだ」


 やっぱりまだ少し不機嫌そうに訊かれて、私は正直に答えることにした。

 もう隠す必要もないだろう。


「竜の都に行ってました」

「都に?」

「私が都に行ってみたいと言っていたのを聞いて、連れていってくれたんです」


 するとリューは驚いたようで。


「都に行ってみたかったのか?」

「はい。都の今の様子が気になって。その……やっぱり竜帝妃になるのならこの国のことを色々知っておきたいと思ったんです」

「コハル……」

「あ、そうだ。都の人たちがリューのことを話してました」

「俺のことを?」


 リューが目を瞬いて、私はふふと笑う。


「リューへの感謝と、あと陛下には幸せになって欲しいって。リュー、皆に愛されてますね」

「――そ、そうか。不満でないなら良かった」


 照れてしまったのか、彼は再び天井を見上げた。


「そのときに私の話も出て……皆が私を歓迎してくれてるんだってわかりました」

「? 前にそう言ったろう」

「そうなんですが、やっぱり自信がなくて。なので、今日都に行けて良かったです。――あ、でも心配を掛けてしまって本当にすみませんでした」


 すると、彼は少し間を開けて言った。


「今度、ふたりで都に行ってみるか」

「え?」


 見るとリューはなんだか悪そうな笑みを浮かべていて。


「お忍びデートというやつだ」

「!? で、でも、私はともかくリューはすぐにバレちゃうんじゃ……」


 そう言いながら、“お忍びデート”というワードにドキドキした。


「実は都へは秘かに何度か足を運んでいてな」

「えっ」

「軽い変装で案外バレないものだぞ。……だが、ふたり一緒となると最大の難関はセレストだな」

「あー……」


 確かに、セレストさんに内緒でふたり一緒に出かけるのは結構難しい気がした。


「だがあいつも完璧ではない。いつか隙をついて城を抜け出そう」

「はい」


 私は笑って頷く。


(リューとお忍びデートかぁ)


 あの賑やかな街中を変装したリューと一緒に回ったらきっとハラハラするだろうけれど、それ以上にめちゃくちゃ楽しそうだ。


「都だけでなく、これからコハルと色々な場所に行ってみたいな……」

「そうですね。これから色んな場所に連れて行ってください、リュー」

「……」


 返事がなくてふと見れば、リューはすでに寝息を立てていた。

 今日は色々あり過ぎて私も疲れたけれど、彼もきっと同じくらい疲れたのだろう。

 静かに起き上がってその身体に毛布を掛け直す。

 7年前の少年を彷彿とさせる寝顔を見下ろして、笑みがこぼれた。


「おやすみなさい、リュー」


 小さく呟いて再びその隣に横になると、すぐに睡魔がやってきた。


 今日は本当に色々あったけれど、私の中で決定的に変わったことがある。

 それは、「覚悟」だ。



 私はこの日漸く、この異世界で竜帝妃として生きていく覚悟を決めたのだった。



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