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【アニメ2期!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ325.来襲侍女は焦る。


『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッあ゛あ゛……』


苦しげな呻き声と、……焼ける音。

胸を押さえ悶えるように転がり回る青白い身体を見下ろしている男は、醜い笑みで涎を口の端から零していた。

ニマァとした笑いは、目下で苦しむ人間を見る目じゃない。まるで虫を踏み潰す前の子どもだ。

手に握る焼きゴテを、傍にいる人間に手渡しながらもその目は苦しむ少女へと真っ直ぐに向けられていた。……少女?


痛い、痛いとその言葉を作る余裕もないように呻き転がる彼女は、ただ一音を零すだけでも喉が限界のようだった。

薄暗い空間は窓一つなく、小さな明かりだけが彼女を照らす。冷たいとひと目でわかる石畳とそこに反響する声は、地下だからだろうか。

飾り立てられた衣装に酷く皺を作り、乱しながらぎゅっと目を瞑っている。転がったまま背中をぐっと丸めて歯を食い縛っても、耐えきれるものなんかじゃない。目尻から止めどなく涙をこぼす彼女に、男は「あまり騒ぐな」と押しつけがましい言葉をなだらかに掛けた。

胸元の火傷にのたうち回る彼女の細い顎を強引に片手で掴み無理矢理声を塞ぐ。……いや、違う。彼女は



〝彼〟だ。



『大事な喉を痛めるな。その喉にどれだけの額を払ってやったと思っている?』

痛みに止めどなく涙を流し続ける彼女に、彼に、下卑た笑みを向ける。

顎を掴む利き手と反対の手で、今度は衣装を乱暴に引っ張った。弱い布が男の分厚い手で簡単に破かれる。焼かれた痛みでそれどころじゃない本人は目を見開く余裕もない。ただ破かれ、肌ける上肢に声を漏らすのは破いた男の方だった。

「なっ?!」と声を漏らし、極限まで目を見開く。

途端に化物でも見たように彼を突き飛ばした。男に無理矢理顔だけを起こされていた彼は、肩ごと強く後頭部を床に打つ。短く呻いたけれど、まだ痛みでそれ以上は出てこない。「あ゛あ゛あ゛ぐ……」と漏らすまま、また横たわる身体を丸め出した。


『ッ男だと?!どういうことだ?!まさか替え玉をこの私にっ……!?』


違う、違う、違う。

彼が歌っていた。私もちゃんと見て、聞いた。あの歌声は間違いなく彼の歌声だ。

それなのに、痛みに喉をガラつかせる彼は証明できない。答えるどころか、きっと男の怒鳴り声も耳に届いていないだろう。わなわなと手を震わせる男が、従者に渡した鉄ゴテを乱暴に奪い振り上げ──



─ 待って、違う



ガツン、と。鐘を鳴らすような音が放たれる。

たった一振りで彼の頭から血が舞った。「ア゛ッ」と途中で詰まった音と共にそこで呻きも止まった。


─こんなの、ゲームではなかった。こんな過去はない。だって、彼はサーカスで


『このッ!!私を!!騙すなどッ!!主催者め!!あのッ塵が!!有り金根刮ぎ!!払わせて!おきながら!!!』

ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、ガン、と。何度も何度も砕く音が木霊する。……やめて。こんな、もう、彼は。

血が床や離れた壁にまで飛び散った。それでも顔色を真っ赤にした男に叩き続けられ、とうとう血以外のものまで床に溢れ出す。もうピクリとも動かなくなった彼を、男の殴打だけが何度も揺らす。次第に顔の原型までおかしくなっていく。

血に染まって顔も見えないのか、……もう顔がなくなっているのかもわからない。違う、彼はここで死ぬ筈じゃないのにどうして、ゲームでは、ゲームではこんな…………






……ゲーム、じゃない?







…………




……




「ッ突入!!奴隷被害者の確保を第一優先とする!」


そう放たれた通った声にハッと目が覚める。

ずっと目を開いていた筈なのに、何故か今覚めたような感覚に駆けていた足が止まりそうになる。地面を蹴る力が弱くなった途端に支えるように肩へと腕を回された。遅れそうになった私に「大丈夫ですか?!」と叫ぶアーサーに、反射的に一言返しながらもまだ状況がわからなくなったままだ。

バンと大きく開かれた扉の先で、武器を構える男達を騎士達が軽々と無力化していく。今は実力も、そして数もこちらが圧倒している中で彼らに勝利は決してない。……嗚呼そうだ。

もう一度、今度は意思を込めて駆ける足に力を込めながら現状を思い出す。今、私達は何の為に屋敷に突入しているのか。「この先に!」と温度感知の騎士が屋敷の奥を指差す先へと急ぎながら口の中を飲み込んだ。

まだ屋敷に残っている男達も、先行するアラン隊長とハリソン副隊長が戦闘するまでもなく一撃で叩き伏してくれる。


闇オークション会場から連れ出されたミシェルを救出する為に。


レオナルドを見送った後、私達はすぐに突入した騎士にミシェルを連れ去った客の消息を尋ねた。

闇オークション中にも関わらず唯一出てきた男と、荷箱を抱えた護衛達を見逃す騎士達ではなかった。しかも温度感知の目では最低でも一人分に相当する〝人間大の温度体〟の中身を確認された。

通信兵の特殊能力による視点を受けた騎士を追跡に回し、足取りを随時共有していたお陰ですぐに逃げる先も掴むことができた。私達が知った時にはまだ移動中で、国外に逃げるつもりなのかどうかもわからなかったけれど、男が向かった先はミスミ王国の郊外だった。

追跡している騎士の視点を捉える騎士に案内され、数名の騎士と近衛騎士全員を連れてこの屋敷に辿り着いた。


追跡の騎士とも合流でき、私達は総出の突入を決めた。……ステイルとその護衛に騎士を五名だけ置いて。

移動中は座標を掴めなかったせいで私達も騎士の馬を借りて追うしかできなかったけれど、そうでなくてもステイルを頼るのは難しかった。レオナルドとの戦闘のせいで疲弊し倒れたステイルにこれ以上頼むわけにはいかない。

馬で移動中も、アーサーの背中にぐったりとよりかかっていたステイルは激しく揺らされても全く目を覚まさなかった。私のお目付け役を任されていたステイルだけど、騎士団に預けてこようかとも考えた。けど、アーサーが「可能な限りは連れてきましょう」と私が行くならステイルもと屋敷の前まで意識のない彼を連れてきてくれた。

ただ、流石に屋敷の中へ突入までも気を失っている彼を連れ回せない。騎士達にお願いし、ステイルと一緒に屋敷から離れた安全な場所で待機してもらうことにした。ステイルなら目を覚まして回復していたらすぐ私の元にも来れる。

母上達からの命令には違えて少し離れてしまうけれど、この状態のステイルを連れ歩く方がお互い危険だと、全員の判断だ。


母上の近衛騎士であるローランド、温度感知の騎士、そしてアーサーを始めとする近衛騎士達に守られながら、大勢の騎士達と共に屋敷へ乗り込んだ。馬車の前に控えていた護衛をアラン隊長が、扉の前に立っていた見張りをハリソン副隊長が一瞬での掃討だった。

見張りを倒してすぐ、扉が内側から閉じられているのを確認したハリソン副隊長が外に回り込んで窓を割って内側から開けてくれた。

その音を聞きつけて、私達が突入した時には屋敷内に散らばっていた少ない護衛達も挙って集まってきたけれど、先頭を走るアラン隊長とハリソン副隊長そしてエリック副隊長の援護の活躍で大した騒ぎにならなかった。このまま逃げられることなくミシェルを確保できればと、……思ったところだったのだけれど。



さっきのは、何?



ついさっき、頭に過ったものを思い返すと眉が寄る。あまりに肩透かしなくらい敵戦力があっという間に尽きてしまったせいで少し呆けてしまったのだろうか。急にゲームのミシェルを思い出すなんて。

いやでも、あんな場面ゲームでミシェルは語られなかった気がするのだけれど。なんか、以前にもこうしてゲームの展開みたいでそうじゃない記憶が浮かんだことがあった気がする。なんだっただろうか。

なんだか肌触りの悪い胸騒ぎが酷い。走っている所為だけの息の荒さだけじゃない気がする。

だって、ゲームの筈がない。バッドエンドでもあんな死に方じゃないし、過去回想で攻略対象者が死ぬなんて、有り得なければ私の記憶でもない。嫌な予感というよりも、なんだかあれは


「!地下です!!地下に数人の存在を確認できます!!」


地下??

温度感知の騎士の言葉に思わず顔ごと振り返る。先行してくれるアラン隊長とハリソン副隊長、エリック副隊長と違いローランドの特殊能力で透明化したまま移動する私達と同じく温度感知の騎士も声を発さないと仲間の騎士達にも伝わらない。

カラム隊長が「地下室か」と傍で呟く中、じわじわと今度こそ明確な嫌な予感が足にまとわりつく。ふらつきそうな私をアーサーが支え「肩貸しますか?!」と叫んでくれるし、もしかして顔色にも出てしまっているのかもしれない。

呼吸が気付けば浅くなって、大して走ってないのにもう苦しい。胸をぎゅっと掴んでも直らなくて、目がどこへ焦点を合わせればいいのかもわからなくなる。本当に足が縺れて、アーサーが強制的に私の腕を自分の肩に回させた。

ジャンヌ!と呼びかけられながら、汗が服を内側から濡らしてくる感覚が気持ち悪い。ああああそうだ、これはやっぱりと認めた途端に寒くなる。今、頭に浮かんだものはゲームの記憶なんかじゃない。それよりももっと最悪な


「ッッ……!!おっ……音を!!なんでも良いのでとにかく大きな音を立ててください!!!爆弾でも構いません!!!!」

早く!!と、思考を回しながら私は声を張る。「予知」と最優先される言葉を言えないことが余計に急き立てられる。

私の声に、傍にいるアーサー達だけでなく先行するアラン隊長達も振り向いてくれた。眉が上がったまま「音?」と返す彼らに、私自身もあまりに途方もない要求だとわかってる。アラン隊長がすかさず壁を破片が飛び散るほど蹴ってくれたり、ハリソン副隊長も天井の大きな照明を落としてくれたけれどこれで地下にまで届くかわからない。でもさっきのが予知だったならとにかく現状を変えないと!!!


予知した光景では誰も物音に気付く様子はなかった。ここまで護衛達があっけなさ過ぎて、地下まで騒ぎが届いていなかったんだとすれば!

銃弾を叩き落とす時みたいな寸前の予知と違う、勝手に頭に流れ込んで視えたアレはきっと少しは間がある筈だ。今、まだ地下に辿り付かなくてもこちらに相手の意識を向けることさえできれば!!

アラン隊長とハリソン副隊長に触発されるように他の騎士達も銃を鳴らしたり家具を引っくり返したりと物音を立ててくれるけれど、流石に爆弾を持っている人はいない。

今回はオークションへの突入がメインで、むしろ相手に逃げる間を与えないように直前まで潜む任務だったのだから!!ステイルがいてくれたら騎士団の武器庫から持ってきて貰えるのに!!

屋敷の奥まで一気に踏み込んじゃっているから戻るのにも時間が少なからずかかる。音を鳴らせるような特殊能力者も今この場にはいない。いっそ合図を鳴らすしかないかとステイルを呼ぶことも考えたその時。



「ッ全員耳を塞げ!!!」



カラム隊長の発声が響いた。

カラム隊長の具体的な指示に、私の抽象的な命令とは比べものにならない迅速さで騎士達全員が耳を両手で塞いだ。私の耳をアーサーが両手で塞いでくれたところで、彼が両手を自分の耳に使えるようにと私も一拍遅れて自分で耳を塞ぐ。

アーサーの足が止まるのと一緒に私も立ち止まれば、アーサーも私の背中から覆いかぶさり自分の耳を塞いだ。両手が使えない分全身で守ってくれる。温度感知の騎士とローランドも、他の騎士達が私の姿を見えない分しっかり押し合うようにくっついて護衛を固める中、カラム隊長一人が服の中からマッチ箱を取りだす。

葉巻を吸わないカラム隊長にしては珍しいと思ったのも束の間に、箱の中身はマッチ三本分くらいの太さをした筒だった。それでも摘まんでマッチのように箱の側面でジュワリと火を付けた。

もしかして爆弾を持ってきてくれていたのかと、耳を塞ぐ手に力を込めたけれど違った。爆弾を取り出す様子はなく、火を付けた物体そのものを誰もいない侵攻先へと向けて放り投げる。怪力の特殊能力を使ったのか、先頭を行くアラン隊長とハリソン副隊長の頭上も越えて廊下の遥か突き当たりへと




パアァァァァァァァァンッッ!!!!と、塞いだ手の平ごしにも響く破裂音が空間全てを揺らした。




きつく押さえていた筈なのにビリビリと肌が痛いと錯覚するほど奥歯を噛み締めても響く振動に、両手を離していたらどうなっていただろうと過る。少なくとも大砲より大きな音だった。

あまりの爆音に一度目を瞑ったけれど、すぐに見開いた先は何も壊れていなかった。黒焦げになっているのは、遠目で微かに見えるマッチ棒もどきだけだ。爆発というよりも風船に近い音だったけれど、比べものにならないほど大きな破裂音だった。

一体何を投げたのだろうと顔ごとカラム隊長に向ければ、彼も投げた直後に塞いだらしく両耳に手を当てていた。私の視線にすぐ気付いて、もう安全だと言わんばかりに両手を下ろしたところで前髪を軽く指で払う。


「〝彼〟の発明です。あくまで音で驚かせるだけで実害はありません」

ネイト。

彼と伏せられても、カラム隊長から発明と聞けば間違いようがなく一人の天才発明家少年が頭に浮かんだ。ネイトから色々発明を貰ったのは知っていたけれど、まさかここで出てくるなんて。

カラム隊長に視線を注ぐ目が、自分でも瞼がなくなっているのがわかる。武器は作らない主義の彼の発明だから本当にドッキリイタズラ目的だろうけれど、耳の側で鳴らしたら相手を卒倒させるくらいできたのではないかと頭に過ぎる。本当にこういう発明、分別がある大人のカラム隊長が持っておいてくれて良かった!


まだいくつかありますと、一度しまったマッチ箱を見せてくれるカラム隊長に是非お願いしますと即答する。

騎士達にもなるべく破壊音や騒ぎを起こしてもらうようにお願いする。一人でも多く騒ぎを起こして異変を地下まで届かせたい。どこまで間に合うかはわからないけれど、私達の駆けつけるのが間に合わないのならその分時間稼ぎが必要だ。

騎士達による騒ぎと音を立てる為の破壊活動と、カラム隊長による連続の破裂音攻撃。


それを繰り返しながら私達は更に屋敷の奥へと駆け込んだ。


Ⅲ20-2

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― 新着の感想 ―
前回が無双に入りそうっ…?!って感じで、今回お預けなのずるいですよ……作者様…
プライドの予知か、はたまたティアラの神託か… 今まで主要キャラにゲーム情報を送ってたのがティアラなら今回もその可能性はあるし、前話との繋がりを考えると予知よりも神託っぽいと思えた
プライドの予知能力、本格的に覚醒してきた?
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