着き、
「ッそこぉぉおおお!!無駄口叩いてんじゃねぇえ!!」
ドッキャーンッ!ともう隠すつもりはないと言わんばかりの激しい衝突音と怒声が上がるのは、ノーマンの舞台裏を抜け、とうとう来賓のいる会場客席に着地したところだった。
ノーマンから聞いた通りの人物が一人で敵相手に立ち回っている光景に、ここは一先ず彼に任せ自分達は素通りしようと打ち合わせしたその数秒で攻撃された。
侵入者にではない、侵入者達を下す近衛騎士ブライスにだ。
舞台裏よりも遙かに密集し、風貌も様々な侵入者がいることもノーマンから聞いた騎士達は気配もしっかり消していた。しかしその打合せのほんの一瞬、その一瞬だけを拾われた騎士達はまたもや仲間である騎士に侵入者を投げつけられるという攻撃を受けてしまった。
起動の読みやすい投げつけに、全員それぞれ避けたが、しかし思わず声を上げそうになった。隊長格でもあるブライスからの叱責に、騎士達も必死に気配を消したがそれでも長年の騎士経験者は誤魔化せない。
ブライスは敵に真横から鈍器で頭を殴りつけられながら蚊に刺されたような感覚で無視し、騎士の方向を注視する。姿は見えない、しかし折角一網打尽できる大きさを投げたのに手応えがなかったことで「絶対いる」と確信する。姿が見えない、それでいて小声で何か企みを感じさせた相手が自分に攻撃してこないことで、粗方予想はついた。向こうの返事は強制せずに、しかし自分も言いたいことは言う。
「遅ぇ!!陛下をどんだけお待たせしてんだ!!?どうせまァた騎士団長がお遅れ遊ばせやがったんだろ!!昔から顔に似合わず平和主義の慎重野郎はこれだから」
「ッ隊長!!ブライス隊長!!!自分が!自分が今はおりますので!!!」
ん?と、騎士の必死な訴えに応じ、ブライスは口を閉じた。
飽きずに自分を殴りつけてくる侵入者の武器を片手間で奪い、逆に殴り飛ばす。一撃で無力化した男には見向きもせず、それよりも今の声が自分の二番隊の部下だと気付いた。「カルロスか」と口の中でつぶやきながら、彼が何の特殊能力者かも思い出す。つまりは……と、そこまで理解するのもまた早い。
首をぐったりと斜め後ろに垂らした一秒後、もうなかったかのように次の標的に向かい足を動かした。「さっさと行け」と部下がいるであろう方向に手を振ると、もう無駄口をする気もなくなった。やっと会場外も動き出し、そろそろ労働に終わりが見えたことに安堵する。自分が疲れるだけではない、こんな混沌とした状況を自国の第二王女を始めとする来賓にいる年頃の王女や令嬢に見せてしまっていることすらブライスにとっては腹立たしい。
自分が暴れ出してから、ようやく侵入者の第一優先が自分一人の始末か、もしくは侵入者だとバレないことのどちらかに大きく寄ってきた。人質や逃亡をされるよりも遙かに対応しやすい。
侵入者の頭を割った鈍器を槍のように振り回しながら、今度こそきちんと無駄口吐かずに全員気配を消しきっていることを確認する。隊長という役職が長いせいで自分の部下がいるとつい無意識にも確かめてしまうのは、自分の悪い癖だとブライスは思う。
「ッ待て!!動くな!」
二階席への階段を上がりきったところで、今度は女王付き近衛騎士の一人であるケネスが怒鳴った。
銃を構えれば、その照準は今までになく的確に透明化した彼ら騎士に向けられていた。ケネスの特殊能力を知っている部下達も、ここまで来れば隠そうとはしない。手の合図や人相までは読み取れないケネスに、片膝をつくことで攻撃意思がないことを示す。それから特殊能力を解き、姿を現した。
突然何もないところから姿を現した騎士に、目撃してしまった来賓は思わず口を覆った。しかし見覚えのある騎士達の姿に、ケネスはほっと息を吐く。「我が国の騎士達に間違いありません」と、彼らが偽物ではなく自分の知る騎士達であることを傍に掛ける王族に保証する。
女王の許可を得て、ケネスは改めて彼らに接近を許可する。一度立ち上がり、今までの迅速な駆け足に反し無礼のない丁寧な歩みをする騎士達は女王ローザの前で再び跪いた。「お待たせ致しました」と深々と礼をする彼らに、ローザも当然とばかりに優雅に笑んだ。遠かれ早かれ、彼らが自分の元へ駆けつけることは予知などせずとも確信だった。
ローザの許可の元、ケネスと騎士達とよる情報共有が行われる。ノーマンからの伝言も加え、最初に救援者が状況を説明し終えたところで今度はケネスが応える番になる。侵入者と被害状況、そして今回自分達に武器提供を協力した人物がアネモネ王国の
ドッッガァアアアァアアアアアアアアアアアッッ!!!!
「……レオン第一王子殿下、だ」
そう、言葉を続けたケネスの声は微かに浅く詰まった。
二階席を含む来賓のみならず、駆けつけた騎士達もあまりの規模の爆発音に振り返る。見れば、舞台に繋がる会場内の扉の一つが、隙間から見間違えようのない量の煙を吐いていた。まるで爆撃でもあったようなその量に騎士達は数秒言葉を失う。
「……これから、会場の正面扉を全て解錠致します」
そう、騎士の一人は静かな声で報告した。目の前にいるローザ達王族と、そして〝通信兵が送る映像を通して〟会場内の状況を今も見ている通用口前のロデリック達その双方に。
ローザそしてヴェストも、オレンジ色に光る目を持つ騎士へ許可の意思も込めて頷いてみせた。彼らに向けてだけではない、この先で今も見ているであろう騎士団へ向けての許可だ。
それを受け、フリージア王国騎士団長もまた、護衛代表者への情報共有を決定する。
各国連携による一斉突入と鎮圧掃討が行われるのは、それから僅か五分後のことだった。




