表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2382/2390

Ⅲ307.副隊長は迅速に行動する。


「特別な客のみが知る避難経路があるのです」


そう、常連の一人である男は、潜めた声でセドリックに告げた。

二階席、それは来賓として格上に当てられた者に案内される席だ。高額落札経験者や高額商品提供者に高額資産者。主催者や幹部の関係者、そして長年の常連客。そんな中で、特に優遇される選ばれた客だけが知る経路は、幹部以外のスタッフも知り得ない極秘経路だ。

少なくとも常連の一人であったその男の客が知る限り、今まで実際に使われたことは一度もない最後の最後の緊急時用避難経路だった。


いくら厳重に警備を重ね、地上に気付かれないように地下深く強固な地下設備を建てようとも、もしもの事態はある。そういった時に、知る者だけでも生きて逃げられるように隠された通路だ。

オークション主催者が特別な客にのみ披露する闇オークション会場の案内で、様々な設備の一つして自慢される。来賓にとっては最後の命綱となる秘密の通路を、忘れている者などいなかった。

立場は各々あれど、それなりの資産や立場を維持してきた者達ばかりなのだから。


「この上に、ミスミ王国の正規オークション会場があるのはご存じでしょうか?そこに直接繋り、地上に出られます」

当然今の時間帯では、無人ではない。会場内に侵入すれば、何も知らないミスミオークション関係者にも見つかってしまう恐れもあるが今は贅沢も言ってられない。オークション会場といっても出口は客の護衛や会場の警備達が配置される場所からも避けられている。

地上に出ればこちらのものだと。そう断言する男には、勝算もあった。

まず、貴族である自分はミスミオークションには招かれてはいなくとも、上手く紛れ込める自信がある。仮面を外して表の顔でそれらしい理由をつけて堂々と会場を出て行けば良い。どうせオークション会場周辺にも大勢の貴族や観光客による人混みができあがっているのだから、紛れるのは難しくない。


ミスミのオークション会場。その言葉を聞いた瞬間、セドリックの全身の毛が逆立った。

今、そのオークション会場に大勢の首脳来賓がこぞっている。さらにはフリージア王国ではステイルの代理に誰が出席しているかも思えば、冷静でいられるわけがない。


「既に会場の幹部は何人か上がっていることでしょう。彼らは客に紛れられるわけがありませんから、今上がればきっと会場も混乱状態です」

ミスミオークションは各国の王侯貴族が招かれる為に厳重な警備で守られる中で、武器も全員が受付で没収されている。それに対し、闇オークション関係者は武器の所有も許されてここにいる。武器を持たない参加者と、武器を持つ自分達では護衛の実力を抜いてもその差は歴然だ。


王侯貴族が多い来賓と違い、幹部達は純然たる人身売買などの裏家業だ。警備が厳しい囲いの中で、身を潜める以外で最も確実に生きて会場を逃れる方法は武器を掲げ人質を取ることでる。

人数が多ければオークション会場の占拠、そして少人数であれば王侯貴族の人質を取れば良い。オークションの高額競売品よりも、遙かに〝価値がある〟人間を人質にすれば、たとえあの有名な化け物王国騎士団であろうとも簡単には追ってもこれない。切り傷一つでも与えてしまえばそれだけで国際問題になる。

「貴方も宜しければご一緒に」と、そう語る男の言葉をセドリックが聞いていられたのはそこまでだった。胸ぐらを掴み上げ、騎士に確保させたセドリックは二階席からハリソンに呼びかける。

プライド達から聞かされた闇オークション会場配備の中で、最も身近でそして動ける人間に助力を求めた。


「地上のオークション会場に流れております!!!」


誰が、何者が、どういった経緯でと。その全てを取り払い、最重要事項だけを優先し集約したセドリックの咆吼はハリソンに最優先事項として正しく伝わった。

突然響かされた叫び声に、ハリソンだけでなく一階の警備スタッフや二階席の上客達も誰もが注視する。遠目には見えないセドリックの姿でも、ミスミのオークション会場にどう流れるのかと、緊急経路を知らない者は目を丸くする。

どういうことかと席から腰を上げた客や、逃げ道の可能性にセドリック達を問いただそうと足を動かした客も二階にはいたが、その誰よりも一階舞台袖に潜んでいたハリソンが速かった。足下に転がる銃剣二本とさらに高速の足で駆け出すついでにまた死体の手から二本拾い奪い、一階から階段も伝わずに高速の足による跳躍だけでセドリックの声のした方向へと駆けつけた。


一瞬で突如姿を現したハリソンに、セドリックの姿を視界に捉えていた客も悲鳴を上げて逃げ出した。一度舞台の上で最大級の注目を浴びた奴隷に今度は自分達が殺されると、なるべく遠退こうと背中を向けて走り出す。「二階に上がってきたぞ!!」と喚く客達の動揺も気に掛けないまま、ハリソンはセドリックの前で一度片膝を突いて頭を下げた。

足下には自分のものではない血がべったり付着した銃を四本置き、まずは王族であるセドリックに敬意を示す。今は騎士の団服でもなく、戦場というほどの緊急状況でもないと判断する為余計に敬意は払う。しかし〝セドリック・シルバ・ローウェル〟の本名以外の呼び名を忘れ、今は本名も明かせない状況にそこは諦めた。自分もまた、要件だけを告げることにする。


「詳しくお伺い致します」

短い風圧だけを起こして突然姿を現したハリソンに、セドリックはわずかに背中を反らす。おぉ、と思わず素の声が漏れてしまう。

ハリソンの実力は知っていたつもりだが、それでも今のほんの一瞬でどこまでの距離を移動してきたのかと思う。今まで一人で健闘中だったにも関わらず、息の一つも乱さず片膝つくハリソンに、つい怯んだ。鎖がジャラッと床を鳴らす。

突然現れた凶暴な奴隷と上客との関係性に、騎士に拘束された男も開いた口が塞がらない。上がっていた血圧が急降下し顔色を悪くするままに、状況を理解するだけでも時間がかかった。


セドリックが怯んでいる間に、護衛の騎士が説明をしようとしたがその声でセドリックもすぐに我に返った。真っ直ぐと自分を見上げてくるハリソンに慌てて口を動かす。

この男がと、捉えた上客を指し示しながら聞き出した内容の要点だけをすかさず絞る。この先に隠し通路があり、既に幹部スタッフや二階席の客の一部はミスミのオークション会場に上がっている。既に混戦や占拠の可能性も考えられると告げるセドリックに、ハリソンは「承知致しました」とゆっくりとした動作で立ち上がった。同時に床に一度置いた銃剣を片手のひらでは足りず脇に抱えるようにして持ち、さらには護衛の騎士から拘束していた客の男を奪うようにして掴み受け取った。男の胸ぐらを掴み、持ち上げる。そして


「案内しなければ眼球を抉る」


銃口を突きつけるまでもない鮮やかに殺意で輝く紫色の眼光を開くハリソンに、男も自分の状況に思考を巡らせきる余裕もなかった。あと少しだったのにと思いつつ、自分が通る筈だった通路の角を震えた指で指し示す。

方向だけ確認すると、ハリソンはセドリックに一礼だけ済ませてから行動へと移す。

武器四本とそして男の胸ぐらを掴み上げたまま早足で進むその背中にセドリックは続こうとしたが、護衛の騎士に止められた。ハリソンの行動は予想できたが、そこに王族であるセドリックまで付いていく必要はない。むしろ目に毒だろうとすら思う。


その場で待つことを決めたセドリックへ一度も振り返ることもなく、セドリック達も姿が見えなくなる角へとハリソンが曲がったところで一人女性の客がギクリと肩を震わせ肌を蒼白させた。

ハリソンに胸ぐらを掴まれた男はギラリとその女性を睨んだが、ハリソンは狭い通路の行く手を阻む女性が単純に邪魔になる。上等なドレスを翻しながら振り返り言い訳をしようと愛想笑いを浮かべる女性の腕を掴もうと思ったが、両手が武器と男で埋まっていた。

貧弱な女性を相手に銃を構えるほどではないと判断し、手すりのあるバルコニーへと蹴り飛ばす。体重の軽い女性は悲鳴を上げながら手すりを超え、そのまま一階へと頭から落ちていった。


連れだったその女性を恨んでいた男の方が呆気を取られてしまう中、ハリソンはさらに通路の先へと早足で進む。

さらにまた先を行ったところに護衛をつれた参加者男性がいたが、それも邪魔になる。自分に気付いた瞬間に振り返り銃を構えてくる男の護衛達に、ハリソンは胸ぐらを掴んでいた男を一度投げつけた。ドスンと人間一人がぶつかってくる衝撃に護衛達がハリソンへの照準を失った瞬間に、銃剣三本を床に落とし残りの一本を握り大きく振りかぶりながら距離を詰める。

騎士の腕力で銃という名の鈍器で脳天を割られ、護衛二人は引き金を引く暇もなく絶命した。


残った客と、護衛の男達の上にぶつかったまま震える男を見比べたハリソンは、比較丈夫そうな方を選ぶ。

護衛達の主人だった方の男を、今度は銃身で横向きに殴り飛ばした。女性のように手すりから落ちるほどの飛距離は出なかったが、頭を的確に狙われた為そのまま力なく倒れつきた。投げ飛ばした方の男の胸ぐらを再び掴み直し、残りの銃剣を持ち直す。


男をひきずる形でハリソンは先へと行く。死体を避けることなく踏みつけながら進めば、とうとう通路の行き止まりに素足のままの爪先が当たった。

これをどうする、と尋ねるより先にひとまず壁を蹴ってみれば、意外なほど簡単に回転扉となっていた壁がくるりと動いた。直前に入った人間が後始末をおろそかにした証拠だ。普段はスタッフが一名は立たされてもいるそこは、今は見張りもいなければ仕掛けも解かれた後だった。

仕掛け扉の中へと入れば、そこには人間二人並ぶのががやっとの範囲に、無骨な梯子一つだけだった。胸ぐらを掴んでいた手を男の後頭部へと掴み直し、ハリソンは強制的に梯子へと顔を向けさせる。


「他には?」

「こっこれだけです。ここから上がれるというだけでっこれ以上は何も知りません……!」

「そうか」

グシャリッと、次の瞬間頭を掴んだ手のまま男の顔面を囲う壁へと叩きつけた。

顔面を真正面から打ち付けられ、手を離されたところで男はそのままずるずると壁に顔を擦りつけながら潰れるようにして卒倒した。必要な情報を得た以上、もうハリソンにとっては荷物でしかない。


捨てた男には一瞥もくれず、梯子の前へと立ったハリソンは銃剣を四本ともまた手放した。

梯子を登るには長物は邪魔すぎる。手を置き、しかし足を掛けず天井を仰いだ。見れば予想通り出口は見えなかった。地上まで高さがあるせいもあるが、それ以前に先客が邪魔だった。目視できるだけで二人は梯子の先で今も地上を目指し登っている最中だ。これでは自分が上がったところで、途中で詰まるだけだと結論づけた。

開けた空間であればやりようはもっとあったが、あまりにも狭すぎる。場合によっては梯子から落とした相手に自分まで巻き込まれて落とされると判断するハリソンは、そこで銃剣を一本拾う。照準もきちんとは合わせず、梯子の先に銃口を向けるだけの動作で引き金を引いた。パンパンパァンッ!!と、一本くらいは使い捨てで良いかと考え、限界まで撃ち鳴らした。


うわっ?!グァッ!!と、直後には呻き声と共に鮮血が落ちた。

狭い空間の、逃げ場もない梯子の上で銃を撃たれれば当たらない方が難しい。やめろと、怒号も上げられたがハリソンは耳から耳へと聞き流す。

銃弾に撃ち抜かれ、男が一人梯子から落ちればその下で上っていた男も巻き込まれまとめて落ちてきた。狭い通路に阻まれ梯子から落下し頭を砕く男達は、ハリソンがとどめを刺すまでもなかった。


これで全員かと、もう一度梯子の下から見上げればその瞬間ハリソンは高速の足で梯子から離れた。

パァンッ!!と今度は自分ではない、梯子のさらに上にいる先客に狙撃された。瞬時に避けきり、弾は床に跳弾し死体にぶつかった。

上から下の方が照準も狙いやすいことはハリソンもわかっている。細長く狭く薄暗い空間で、遠く垂直に高い位置にいる相手は銃剣では狙いにくい。先に落ちてきた二人より、遙かに地上に近い位置にいる。

念のため、もう一本銃剣の弾を使い果たすまで撃ち続けてみたが、今度はもう手応えもなく撃ち返されることもなかった。


仕方ない、と。ハリソンは自己完結すると銃剣を分解する時間も惜しみ梯子に足を掛けた。高速の足でも梯子を登れば速度も影響するが、それでも尋常ではない速度に変わりは無い。今度は向こうから銃弾がこないことを秒数を数え確認する。地上に近ければ、迎撃よりも一秒でも速く抜け出ることを選ぶのは当然だ。


高速の特殊能力で、できる限り早く梯子を登る。

薄暗い空間で先にいる人間へ目をこらし続ければ、中盤より先に上り詰めたところで照準を捉えた。汗まみれになってとうとう地上へと繋がる天井の扉に手を掛ける男を見つけ、ハリソンはやはり銃剣を分解してくるべきだったと思う。男が歓喜の笑みで扉をゆっくりと開け始めたところで、なんとかその足に手が届いた。引き摺り下ろすように腕の力だけで引っ張り込み、体重をかけるべく自分の両足を梯子から外した。

鎖の重量も加えた人間一人の体重を急激にかけられ、男は銃を懐から取り出す間もない。ここまで上る為に、一度は抜いた銃もまた手を空けるべく懐にしまった後だ。

両手でなんとか梯子に掴まろうとするのも一秒も保たなかった。

ランプの光もない暗闇で足を掴む奴隷が、文字通り悪魔に見える。

もうしびれかけていた手が梯子を滑り、垂直に落下した。


道連れに落下するハリソンは、目の前で過ぎる梯子を狙いを付けて高速の足で素早く蹴りつける。梯子を的確に狙い、反動で自分一人は狭い壁に背中をぶつけた。

その一秒に満たない時間の間に男一人がハリソンと梯子の隙間へ縫うように落ちていく。

自ら背中をぶつけた衝撃に息を詰めたがその一瞬にまた壁を蹴り返し、再び梯子を掴んだ。ぱしりと、聞き手一本で宙づりになるハリソンの遙か下でドシャンと人間の潰れる音が落下音と共に耳に届いた。


宙吊りから梯子に残りの手足もかけ直し、何事もなかったようにハリソンは普通の速度で梯子を登り直す。

目の前の一人を取り逃がして良い理由にはならなかったとはいえ、既に何人か地上に逃がしていることはわかっている。天井の扉にまでたどり着いたところで男と同じように手を掛けたハリソンは、慎重に地上への扉を開いた。

キィィ……と金具同士の擦れ合う音と共に、分厚い扉が開かれる。薄く光が漏れたが、光よりも遙かに信じられないほどの暴音がハリソンの耳に飛び込んだ。分厚い扉を開けるまでは殆ど聞こえなかった無音からの急激な爆音に、ハリソンは顔を顰めて覗き見る。

オークション会場の足下に繋がっていた地下扉からは、隙間で開けた程度では人間の靴しか見えなかった。しかし、見覚えのあるそれにハリソンは覗くのをやめた。目を見開き、全開まで扉を開きはっきりと顔を出す。視界に全開に広がるそこはオークション会場の裏舞台、そしてハリソンの目でも間違いようがなく





戦場だった。





ハリソンが扉を再び閉じるまでニ分。そしてプライド達と合流を果たしたのは三分後のことだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ