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【アニメ2期!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ306.王弟は気付く。

数十分前。


「流石ハリソン殿、見事なものです」


闇オークション全体が混沌とする最中、未だ優雅に足を組んでいたセドリックは傍に控える騎士二名にだけ聞こえる声で呟いた。

奴隷オークションの会場、その二階席。一階にいたテーブル席の客は全員待避したが、二階席にはまだ大半が残っていた。ハリソンと闇オークションの警備やスタッフ、裏家業達が会場の舞台へ次々と踊り出ては無力化される光景に劣勢を感じ取り二階席でもロビーへ待避する客もいたが、セドリックは逆にロビーから戻ってきていた。

ステイル達からの補助を受け、無事プライド達を奴隷被害者達の囚われている場所に案内させることができた時点でセドリックの役目は半ば終わったようなものだ。暫くは受付の前で止まり、スタッフ通路から次々と沸いてきた男達に「まだ来ないのか」「この場で全て取り消しても良いのだぞ」「さっきの客ならば他の来賓に呼ばれていった」と捕まえては、嘘で誤魔化し時間を稼いだ。

上客として判断されたセドリックを相手に、上司から無理矢理ロビーに出された下っ端達が簡単に振り払うことなどできるわけがない。下手に機嫌を損ねて帰られてしまえば、そのまま責任も賠償まで自分にのし掛かる。


暫くは足止めに徹し、そしていつまで経っても自分へ奴隷どころか落札商品が一つも届けられないところでセドリックは満足した。

つまりはステイル達が無事に奴隷被害者を保護し、潜入中のヴァル達も順調だということだ。さらには引き留めたスタッフ達を呼び戻す様子も見られず、これほど慌ただしい中でスタッフ通路から何者も出てこなくなればもう自分の役目は終わったと判断した。

本来であれば、奴隷達を連れてそのまま戦場から一足早く待避する予定だったセドリックだが、全員プライド達に確保されたならば受付で待つ必要もない。「もう良い」「俺様は席で待つ」とスタッフを手放し、会場へと戻った。騎士団にも自分の潜入は把握されている為、もし会場にいても掃討される心配はない。何より、未だに銃撃音を響かせる会場で一人戦っているハリソンのことが心配にもなった。

自分がプライドの近衛騎士であるハリソンに手助けできるような戦力になるとまでは思わないが、傍に護衛として騎士も付いている以上、やはりもしもの場合に控えておくべきだと考えた。


そして今、二階席からはハリソンの姿は見えない。

片側の舞台袖から銃撃を放ち返しては、背後から襲ってくる敵も返り討ちにしているハリソンの生存確認は舞台から聞こえる銃撃音と殴打音。そして舞台裏からだけではなく、舞台袖や一階席側から舞台に乗り上げて奇襲を狙う男達が銃撃を受けて倒れていく姿だけだった。

少なくともハリソンが劣勢になれば、この銃撃も殴打音も聞こえるわけがない。闇オークション側が認識している敵は、暴れ出した奴隷一人だけなのだから。


「流石は完全個人主義を翳し、自由戦闘に特化している隊の副隊長殿。これほどの多勢に、全く劣勢の気配もない……」

今度は声には出さず、口の中だけで呟いた。

ハリソンが八番隊の元隊長であることも、あの聖騎士の元上官であることも、防衛戦での活躍も知っているセドリックだが、会場に倒れ伏す死体の数を見下ろせばこれを一人でやったという事実が信じられない。

一度は自分も手合わせを交わしたが、それどころではない。防衛戦でも国境を一人で守り抜いたという話の再現を見ているような気分になった。


突入予定時間まで残り十分を切った。そう頭の中で数えれば、このまま文字通りの高みの見物でも良さそうだとセドリックは考える。

闇オークション関係者が次々と倒れ伏していく姿に報復心が満たされるわけでも快感を覚えることもないが、だからといって同情心も沸かない。自分は彼らのような人間のせいで国ごと戦場に巻き込まれたこともある。今はただ奴隷被害者の保護と、プライド達の成功を願うばかりである。


この後の流れも、セドリックは全て詳細に把握していた。

ハリソンが一人で闇オークション関係者を引き付け、その間にヴァル達とプライド達が双方の奴隷被害者を救出し、そして騎士団が突入して参加者スタッフ全員を捕らえる。もうその時はすぐだと思えば、あっけないものだった。


二階席でも、駆けつけるスタッフの流れが減ってきていることに不安の声を上げる客は増えてきた。

戦闘音に紛れながら「どういうことだ」「なんで死なない」「まずいんじゃないの」と言い合う声を耳が拾ってしまえば、セドリックは息を吐きながら頬杖をついた。気付くのが遅い、愚かなと、悪態を胸の内にとどめながらも、きっと二階席の人間ほど自分だけは大丈夫だと思い込んでいる人種だろうと思う。

奴隷がオークションに出されていても笑っていられるような人間の精神構造などその程度だと、蔑視の眼差しを声の方向へと向けたその時だった。


ドッッガァアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!


突然の断続的な衝撃と騒音。

二階席にもとうとう悲鳴が上がり混乱が起きる中、伏せながらも騎士達に頭上を含む四方を固く守られるセドリックも目を見開いた。騎士団の突入が早まったのかとも思ったが、それにしてはあまりに被害が大きすぎる。

騎士達が雪崩れ込み捕らえる手筈だったというのに、二階席にいる自分達にまで届く衝撃を鳴らしては客に逃げろと叫んでいるようなものだ。


舞台から聞こえる銃声も一気に減り、パンパンと繰り返される一種のみの銃声は恐らくハリソン一人のものだろうと、セドリックを守る騎士達は理解する。

何度も繰り返される音は、ロビーから扉一枚隔てただけのセドリック達二階席には破壊音以外の情報も伝わった。この場にそぐわない男の笑い声と「スタッフを呼べ!」「出口は他にないのか!」と観客の騒ぎ声まで耳に届いてきた。

ロビーに逃げていた客が二階席に戻ってくる。一階の会場と違い、二階はまだ安全かもしれないという意識も強い。中には一階席の客が混乱に乗じて本来立ち入りを禁じられる特別席である二階に避難してきた。そしてまだ戦闘音の聞こえる舞台へと柵を掴み、前のめりに怒鳴る。

衝撃と振動がまだ続く中、それでも二階席からの怒号は舞台まで届いた。


「おいスタッフ!!!!!商品が逃げ出してるぞ!!さっさと始末しろ!!」

「違う侵入者だ!!早く処理しろ!!」

侵入者?とセドリックは騎士達に守られながら眉をひそません。

騎士であれば複数人、それに服装で騎士だということもわかる。だが今の言い方ではたった一人の侵入者ということになる。一体何者かと思考を巡らせたがそれ以上はまだわからない。

ロビーから逃げてきた客の声に、二階警備と舞台にいるスタッフだけではなく客達もぎょっと目を剥いた。ただでさえ奴隷の暴動で中断しているのに、さらに面倒ごとに「なんだと?!」と言葉を乱してしまうスタッフもいた。

バタバタと舞台からハリソンの相手よりは楽だろうとスタッフがロビーへと走り出し、そこで舞台袖から後頭部を撃ち抜かれた。乱入者が誰であれ、会場の外にはプライド達がいるというのにむやみに流すわけにはいかないとハリソンは判断した。


二階席のスタッフまで上客達から「早くしろ!」「行け!!」とこの場を守ることよりも、問題解決へと命令される。上客達は全員自分の為の信頼できる護衛を連れている分、今は問題解決の方が優先だった。

二階席にいたスタッフは計画上ハリソンも撃ち殺すわけにはいかず、目では捉えたが新しい銃を高速の足で拾い戻ってくるだけに済ませた。昨夜聞かされた策には、騎士団突入の前に別動の乱入は聞いていない。ならば他にも闇オークションを壊しにきた人間か、それとも援軍かとまでは考えるがそれ以上はやめた。今の自分の役目ではない。

舞台を含む会場一階のスタッフを引き付け足止めすることにハリソンは従事し、振動と衝撃音も構わずに射撃を続けた。


「ダリオ様、まだ身体を起こさないでください。第二波の恐れがあります」

護衛を続ける騎士にセドリックも従い、身体を低い位置のまま騎士達の隙間から周囲を伺う。

少なくともその侵入者は二階席どころか会場にまで及んでくる気配はない。それならば目的は競売にかけられた奴隷でもないのかと考える。奴隷が引っ込められたことを知る自分達と違い、新たな侵入者であればロビーよりも会場や保管庫にこそ用がある筈だ。


プライド達は無事なのかと、セドリックはそれだけに喉を鳴らした。

予定外の大きな騒ぎが起きればその分人の流れも策も変わっていく。予定外の人員スタッフや護衛を連れた客達がプライド達のどこかに流れてしまえば、それがどう作用するかわからない。

何か情報をと、セドリックは客達の会話に耳を澄ませ、目を配る。客同士が区切られている為、席に座っている客の姿も見えないが、今は椅子に掛ける余裕もなく後方で立ち話をしている人間も多い。騒然とする中で、一つでも彼らの会話から情報を探す。

「もう帰る」「出口が壊された」「生き埋めじゃないか」「他に出口がないのか」「提供した商品は帰ってこないのか」と目と耳両方で拾う情報に、つまりは良くも悪くも全員が閉じ込めたらしいと理解する。しかし、それ自体はステイルやヴァルの特殊能力さえあれば解決できるだろうと考えるセドリックは比較的冷静でいられた。それよりも騎士団すらも突入が出来なくなる方が問題になる。

今、会場の外はどういう状況なのかと、振動がやっと止んだまま一定時間が経過したところで姿勢を上げた。

席から起立し大きく見回せば、二階席の人口は地震が起きた時よりも増えていた。そして、……妙な動きに気付く。


「あの者達は、……どこへ向かうのでしょうか」

声を抑えつつ、セドリックは視線を固定したまま騎士に問いかける。

セドリックの視線を追う騎士達もすぐに何者を指しているかはわかった。二階席にいる客達の多くが挙って護衛と共に移動をしていた。騎士達の目にもスタッフが避難誘導をしているようには見えない。中にはいつの間にか空席になっている場所もある。

座っていられず後方に立っているだけかとも騎士は考えたが、絶対的な記憶を持つセドリックは自分がここに案内されるまでに着席していた客がもうどこにもいないとはっきりわかった。

人口は増えたが、それもロビーから戻ってきた客か一階席だった客だ。さらには今も二階席の上客ばかりが一方向へと移動を始めている。スタッフの誘導であれば納得できたが、スタッフの影がないから余計に疑問が大きい。無駄口も叩かず無言で、こそこそと逃げているようにも見える。

彼らがどこに逃げ場があるのかと顔を強張らせた。出口は封鎖されたのであれば、単なる退席とも考えにくい。しかも、消えた客もそして今移動を始めようとしている客も全員が、自分がロビーから戻ってきた時まで席に居座り続けていた人間ばかりだとセドリックは記憶の中で照合する。


「追いましょう」

声を潜ませ、強い意志で告げるセドリックの指示に騎士達も従った。

仮面を付けた上にオークション中も仕切られ顔を合わせることも少なかった上客達の増減までは認識できなかった騎士達だが、それでも今移動を始めている上客がどこに向かっているかは気にかかった。今も、ロビーへと通じる扉にではなく、端へ端へと向かって歩いている。スタッフに案内されただけで会場の構造までは把握していないセドリック達だが、少なくとも会場内の二階席の端は行き止まりの筈だと考える。

一階に降りるには、一度扉の外へ出てから、階段でロビーに降りるしかない。

周囲の客に気付かれないように、早足で追うセドリックはぐっと眉間に力を込める。スタッフらしき人間はいない、それどころか警備のスタッフも全員が客に押され出払った後だ。スタッフの指示でもなく、一体どこにいく気だと今もこの場で声を張りたい気持ちを堪えて進む。

しっかりとその去ろうとする背中が手の届く距離まで追いついてから、セドリックは彼らへ呼びかけた。


「失礼。一体どこへ向かうつもりだろうか」

波風立たせないように第一声が言葉を整えたが、その後はやはり敬う相手ではない意識で中途半端な口調になる。服装は王侯貴族や上級層の人間だが、その中身は薄汚い闇オークション関係者だ。

セドリックの声にびくりと肩を激しく上下させた客は、勢いよく振り返る。護衛三人とそして男女の二人だったが、男の方は懐から護衛と同じ銃を握っていた。しかし相手が大量落札者の男だとわかれば、少し警戒も薄れる。今日招かれた誰もが知る上客だ。

しかし、同時に今回が初参加であることも常連の一人である男は知っていた。


上手く言い訳を最初は考えたが、今の状況ではどれも使えない。

振り返った時は相手が誰であろうとも殺そうかと思ったが、貴族である自分が舌を巻くほどの富豪を相手に考えを変えた。今も、セドリックの仮面の顔ではなく、護衛が抱えている金貨の詰まった鞄に目がいった。ここで恩を売れば、今後見返りも期待できる。

ええまぁ、実はと愛想笑いを浮かべながら連れの女性と並び、潜めた声で話し出す。他に聞き耳を立てている人間がいないかと、ちらちら周囲に気を配りながらも声量に細心の注意を払う男の話にセドリックは




呼吸が、止まった。




「案内しろッ……!!」

直後、目を限界まで開き、愛想笑いの男の胸ぐらを掴み自分の顔まで引き寄せた。

低めた声で歯を剥き、そこで一度傍にいる騎士へ突き飛ばし確保させた。傍にいた護衛達が主人を守ろうと銃を出したが、もう一人の騎士が剣で切り伏せた。既に殲滅命令がある以上、ハリソンと同じく騎士達も躊躇いはない。

銃を最初に構えた男の腹を斬りつけ、もう一人の首へ肘を打ち込み、そして最後の一人が銃を構えきる前に騎士の方が眉間に銃を突きつけた、動きを奪ってから、今度は剣を貫通させ絶命させる。

上客の男も騎士に確保され動けない中、女性の方は口を覆った後にそのまま向かっていた方向へ一人で走り出した。男の方も引き留めたかったが、今この場で大声を上げる方がまずいと歯を食いしばる。

何故今押さえられているのかはわからないが、まずはこの場を誰にも気付かれずに後にすることを最優先に考える。自分を置いて逃げた女もこの場の全員、結局は向かう先は同じだと






「───ッッハリソン殿!!!!!」






唐突に、会場内に今までない声が張り上げられた。

男を突き飛ばしたセドリックが、護衛を無力化させた騎士を背後に連れたまま二階席の最前手摺りまで駆け込んだ。店頭防止の柵を掴み、少しでも声が届けと限界まで身を乗り出す。

ステイル達がどこにいるかもわからない以上、今セドリックが最も頼るべきは彼だった。

二階席から発せられた響く声と名指しに、ハリソンも舞台袖に身を隠しながらも身をぴくりと揺らした。計画にない呼び出しに、身動ぎ一つせず聴覚を研ぎ澄ます。引き金を引く手すら今は止めた。

セドリック・シルバ・ローウェル王弟殿下と、姿は変わっても覚えのあるその声に、王族からの正式な命令だと認識した。呼び出しにこの場で駆けつけろという意味なのかも過ったが、それも続く言葉で抹消された。








()()()オークション会場に流れております!!!」








上です、と。限界まで声を張り上げたセドリックの咆吼に、ハリソンは最優先任務を切り替えた。


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