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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ299.王弟は詰め寄り、


「何してんだスタッフ連中は!!」

「調教済みじゃないならもっと厳重に拘束しておけ!!」


会場フロアから出てすぐ、決して広くないロビーに今は大勢が密集していた。

本来、時間もずらして来場するように調整していたロビーは来賓達が全員寛げるような範囲はない。もともと窓もない地下だ。

流れ弾を恐れ会場を飛び出したのは殆どが一階のテーブル席だが、それでも互いに肩をぶつかることは避けられない狭さだった。侵入も逃亡も妨げる分厚い扉を閉じ、安全が確保されるまで安易に顔を出すこともしない。銃声が鳴り止むか、スタッフからの安全確保の知らせを待ち続ける。

そして狭く立ち話を余儀なくされる来賓から渦巻くのは不安と焦燥、そして全てを上回る不満だった。


奴隷が暴れるまでは、むしろ良かった。今までも舞台に上げられた商品が最後の最後に暴れ藻掻き必死に抵抗した事例は珍しくない。

その無駄な足掻きを嘲笑し、最後には床に押さえつけられ鎖に繋がれ仕置きされるのをショーとして眺める。猛獣の見世物のように、悲鳴も怒声も聞きながら自分達は安全圏で高見の見物をすることはむしろ期待されていた余興にも近かった。

しかし、まさかたった一人の奴隷相手に手こずるどころか銃まで出す状況など前代未聞だった。結局怒声も悲鳴も客である自分達が上げる始末になっている。

当然、さっさと終わらせろと悪態吐き、中にはもう帰っても良いんだぞと息巻く者もいる。彼らはあくまで〝客〟であり、義務でここにいるわけではない。必死にスタッフも丁寧な物腰で対応し怒りを静めようとするが、それでも


「何度言えばわかる。ただちに買い取った商品の引き取りをさせろ」


俺様は帰る、と。受付の一番近くに立っていたスタッフに低めた声が放たれた。

安全な二階席の殆どが臨場感溢れる高みの見物をしている中、そこから降りてきた上客にスタッフも返事を濁した。戦闘員ではない、指示役側である男はちらちらと手の空いている味方を呼ぼうとするが、大柄のスタッフは会場の収集に出ているため数も限られている。会場で不祥事が起これば、どう宥めても気を悪くして途中退場する客などいる方が当然だ。この状況もなんらおかしいものではない。

しかし、よりにもよって一番帰ると言われて困る客が最悪のタイミングで来てしまった。

オークションの規定としては、ここで罰金も含めて支払いさえすれば途中退場も問題ない。だが、スタッフは汗ばんだ額を拭う暇も惜しみながら猫撫で声で機嫌を伺う。

現オークションで、最高額商品全てを総浚いにした〝ダリオ〟と護衛に呼ばれる大富豪を。


「もう暫くだけお待ちいただけませんでしょうか。あと十分、いえ五分もすればオークションも再開されます。まだ前半も終えておりません。目玉商品は多く残っておりますし、判断もそれからで遅くないかと」

「こんなつまらんオークションに俺様が待ってやる筋合いがない。さっさと全て取ってこい。奴隷も、商品も全てだ。それともここで金も払わず帰って欲しいか?」

ジャラン、と。大富豪客であるセドリックの威勢に合わせ護衛である騎士も運んでいた鞄を少しだけ開いて見せる。

大勢の客を魅了した黄金の輝きに、思わずスタッフもゴクリッと野太い喉を鳴らした。今にも自分が手を伸ばして奪いたくなる黄金だ。しかしそれもあっという間に騎士は再び鞄を閉じた。


目の前の利益。客をこのまま逃がしてもまたオークションの仕切り直しは不可能ではない、しかし目の前の男以上に高額を出してくれる客もいないことは実証されている。損失は計り知れない。

しかし……と、それでもやはり商品を取りに行こうともせず、上客を会場に押し止めようとする男にセドリックは本気で目が険しくなった。まるで自分では決断できないかのように振る舞うスタッフだが、セドリックは彼が雇っただろう男達へ偉そうに指示を飛ばしていた姿を忘れていない。だからこそセドリックも選んで目の前の男を捕まえ、さっさと支払いをと促しているのだから。


「意外と難航しているようですね……」

そうね、と。ステイルの呟きにプライドも彼の腕を掴んだまま潜ませた声で言葉を返した。待避した来賓達に紛れつつ、受付で交渉するセドリックを物陰で様子を伺う。


計画通りハリソンが暴れ出してから、自然な流れで観客に紛れ席を立ったステイル達を気にかける者などどこにもいない。

ここまでは全て計画通りだが、予想外のところで時間を浪費していることにステイルも表情には出さないまま仮面を指先で叩き、押さえた。セドリックの大金を見せつけたのがこんなところで影響するとはと思う。既にヴァルにも合図を送った今、ここでのんびりしていられる状況ではない。

ハリソンが会場と主催者側の注意を引きつけ、その間にヴァル達が控えにされている檻から奴隷達を全員救出する。そして競りに出された後の奴隷をセドリックと自分が全員回収する。

競売に出された後や直前の奴隷が、最初の檻と同じ場所に戻されるかもわからない。二段構えでの確保をする為にも、競売前と後で救出役は分ける必要があった。今も奴隷がいる場所へスタッフの誰か一人でも向かわないかと目を光らせていたステイル達だが、セドリックの相手をするスタッフは奴隷を連れてこようとする素振りすら見せない。

ヴァル達の檻に全員閉じ込められているならば一番楽だが、そうでなければ競り落とした奴隷達は安全が確保されない。ここで騎士団が突入すれば、最初に口封じをされるのは事情を知る奴隷だ。


「奴隷だけでも連れてこい。この銃撃戦で死んでいないか確認したい」

「そっ、れは……今、お買い上げていただいた奴隷を取りに行くには少々危険です。銃撃戦が落ち着くまではせめて」

「ならば直前に俺様が落札した奴隷はどこにいる?危険だと言うならば檻に戻せたわけでもないだろう。まさかおめおめと死なせたわけではあるまいな?」

「しかしあの銃撃で動かせない状態です!他の奴隷達は全員檻に戻しておりますので、安全は間違いありません。ご安心ください」

「安全ならば取りにも行けるだろう。さっさと」



「せめて、奴隷の保管についてもう少し詳細に説明されないと納得もできないと思いますよ」



ハッ、と掛けられた声に息を飲んだのはセドリックの方だった。

間違いようがないその声に振り返れば、ステイルが仮面越しににこやかな笑みで歩み寄っていた。

ステイル王子、と言いたい口を意識的にセドリックは結び飲み込む。今はあくまで自分はステイルとは居合わせただけの無関係同士だ。だからこそ、ここで会話に入られるのはセドリックにも想定外だった。


急に会話に入られたスタッフも、一度は見覚えがないと眉を上げたが、すぐに何者か理解する。目の前の上客に続き、商品を多数落札した商人だ。しかも元々の招待客を通報した要注意人物だともスタッフ同士で共有されている。

また面倒な相手が出たとは思うが、ここで話題が逸れてくれればとそこに一縷の望みをかけ今はどちらの表情も浮かべず見返した。


突然申し訳ありません、会話が聞こえたものでと、あくまで他人として歩み寄るステイルにアランとエリックも一定距離を保ちながら続く。

本来ならば背後に続きたいが、実際はステイルの周囲にプライドと複数の護衛もついている分不自然に思われない程度に回りを確保する。客同士が肩をぶつけるような状況で、何もない筈の場所にうっかり肩をぶつけられてはたまらない。ステイルだけでなく、透明になっているプライド達にも何者も近づけないように注意を払う。

背後を近衛騎士達に任せ、ステイルは自分一人に注意を向けさせるべく口を動かす。


「今の御説明ではあまりにも不足が多過ぎたので。せめて、競売前の奴隷をどのように保管し、どの順でどの程度の人数で競売会場に運び、そして落札後はすぐに檻に戻しているのか。会場との位置関係も不明なのですから、もっと詳細に説明いただけないと安心も納得もできませんよ」

「説明しろ」

少なくとも僕はしません、と。にこやかな笑みでステイルが言い切る前に、セドリックもすぐその意図を理解した。

一瞬だけ目を見開き、スタッフへとまた振り返れば黄金の髪が大きく広がった。


膠着状態を作ってしまった自分を見かねてステイルが助け船を出してくれた。ならばここでするべきことは、オークション関係者にとって一番強い立場をとれる自分が変わって後押しすることがと判断する。

何故ここでお前まで入ってくるのかと過っていたスタッフも、これには大きく背中を反らしながらも頷いた。奴隷を引き渡すことは避けたいが、会話が引き延ばせるならばなんでも良い。


承知致しましたと舌を回す男は、頭に入っている通りに奴隷の運び入れを説明する。

ここからさらに地下にある保管部屋に奴隷は全員保管。競売の順番に合わせ、奴隷も品もまとめて舞台傍に運んで出番を待たせている。奴隷も品も運んできた分全ての出番が終わるまでは舞台裏の部屋に保管し、そしてまとめてまた同じ地下の保管場所に運び戻す。

そう説明を聞きながら、透明になっているプライドはやや引き攣った顔で封鎖された先に顔を向けた。まさかとは思うが、今の銃撃戦で本当に直前直後の奴隷は巻き添えを受けていないか不安になる。うっかりハリソンに間違えて始末されていなければ良いがと考える。

意図してハリソンが危害を加えるとは思わないが、自分以外全員敵の最中だ。


プライドの心配を読み取ったように、アーサーは口パクのままグッと拳を握って必死にプライドへ頷き、訴えた。大丈夫です!!と、ハリソンの弁護とフォローをしているのだろうと、表情でプライドも理解する。

そんなやりとりをされてるのも見えないステイルは、手に入った内部の仕組みに一人思考を回す。それならば少なくとも大半の奴隷はヴァル達の元にいる。残る危険性があるのは、ハリソンが乱闘するまで舞台裏の近くにいる奴隷達のみ。商品リストの順番と人数から考えて、ざっとまだ二巡か三巡目だろうと考える。

「今舞台裏側にいる奴隷は?」とセドリックが強い口調で尋ねたが、そこまではわからないと男は首を横に振った。


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