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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ297.来襲侍女は見守り、


『フリージア王国の人間です。……とはいっても、残念ながら特殊能力は持たないハズレでしたが。処分するには勿体ないので、これを機会に換金させてください』


そう、ステイルが出店した〝商品〟は、正直にフリージア王国の人間と伝えたにも関わらずオークション内での価値が低い。

本来の奴隷市場であれば、違法性を除けばむしろ人気は高い商品だ。しかし下級、中級、上級、特上の中で所詮は中級でしかない商品は、上級か特上の値する商品しか期待されない今回の大規模な闇オークションでは程度の低い扱いである。

そして〝だからこそ〟ステイル達はそう設定づけた。代わりの目玉商品としてセドリックからチャイネンシス王国の宝石を借りてまで、あくまでハリソンには付加価値を仕込まなかった。


さらには穴埋めをしたセドリックとは別口で、敢えて遅れて訪れた。自分達こそが穴埋めだと偉そうに名乗り上げ、ありがたみが薄れた時を見計らう。

彼らが騎士団の関係者と疑う気も同時に薄れるように、騎士団へ告げ口したのも自分達だと示し参加を引き合いに強請る。ただねじ込んだというだけではなく、自分達に不利益をもたらした脅迫相手に当然心象は悪い。リストに商品をねじ込むにしても、開催側は宝石を自分達へ最大限利益にもなるようにリストの順も工夫する。しかし、もともと値上がりも期待できない商品など、わざわざ売れるように配慮してやるわけもない。むしろ、不人気な順に置いて旨味など与えない。

オークションは前半と後半に分かれている中、注目されやすいのは両部とも最初と最後、そして飽きさせない為の中盤。人気のない、消化試合を終わらせるのはまだ客の体力も資金も有り余っている前半だ。そして今、ステイルとジルベールの策通り彼らの送り込んだ〝商品〟は、前半中盤戦目玉商品である〝歌鳥〟を紹介し終えてからまもなく、舞台に上げられた。


「今は取り扱いも稀少なフリージア王国の人間!特殊能力は〝未だ〟確認されておりませんが、今後の躾によっては開花も期待できます!」

ただの奴隷、ラジヤでは取り扱い不可能とされた稀少商品といくら進行役が良く言おうとも前に乗り出す者はいない。

黒の長髪に、フリージアでは珍しい紫の眼光もわざわざほじくりコレクションするほどのものでもない。比較的高身長と、奴隷には定番の薄くボロの布地を身にまとう身体から見える四肢は鍛えられていた。俯くことはなく真正面の舞台を睨むその顔つきにが及第点程度には整っていなくもない。奴隷特有の死んだような表情に愛想は皆無だが、そんなのこの場の参加者全員が見慣れたものだ。

奴隷の目利きは、それなりに肉体労働や死地に突入させるくらいの捨て駒にはできるかと考える。しかし、彼らが判断できるのはあくまでそれまでだ。


ケルメシアナサーカス団の公演でも表舞台に決して立たず、フリージア王国の式典にも護衛として参列をするようになったのも最近からであるハリソンはフィリップから直接姿を弄られてはいない。その必要がなかった。アランやカラムであれば、オークションの舞台でまじまじと見られることを鑑みて今回だけでも姿を変えさせる案も出た。しかしハリソンは別である。

口を結び続け、舞台の上でハリソンは悠然と周囲を見渡す。進行役の説明など最初から耳に通していない。紫色の眼光を薄く光らせながら、今は合図を待った。潜入の為の奴隷らしいみすぼらしい格好と、鎖を引きずる手足と首輪。そんな姿をこの舞台に潜んでいる王族の目に晒されることも、大勢に嘲笑と好奇の目を向けられることもハリソンにはどうでも良いことだ。商品にされる側であれば誰もが目を逸らしたい現実を前に、むしろ目を凝らす。


「では、先ほど本オークション最高額が出た記念すべき日ということですし、……ここは最低額にも挑戦してみましょうか?」

進行役の皮肉をまじえた冗談に、ハハハと嘲笑が複数漏れる。

単純に彼らにとっての安物商品への嘲りだけでもない。こんな商品を出した出品者への皮肉と悪意の意思がしっかりとステイル達にも伝わった。今のところ商品をいくつも競り落としている商会に位置付いてはいるが、所詮買い取っているのはすべて高額商品に値しない品ばかりだ。

敢えて出品者の名前ではなく番号を伝えた進行役だが、その時はまだわからなかったハリソンも、その嘲笑の視線を追えばやっと探していた人物達のテーブルを視認できた。表情も変えなければ視界の中にとどめるだけで敢えて目を直接向けないハリソンだが、遠目に彼を見つけたアーサーは無事ハリソンがこちらに気付いたようだと判断する。本当に僅かだが、ふっと彼の肩から力が抜けたのがわかった。

アーサーの姿は見えずとも、彼のものであろう息の音を拾ったステイルはにっこりとした社交的な笑顔を維持したまま口を動かす。


「聞きましたか?彼が安物扱いだそうですよ。ハハッ、たいした目利き揃いですね」

アランとエリックに向けて言っているように聞こえながら、この発言はこの場の全員に向けているのだとプライドも理解する。笑顔で語る彼からははっきりと黒い気配を感じられ、若干怖い。

主催側から悪意や嘲笑を受けていることには気にならないステイルだが、それでも低価格から始まった冗談のような競売にステイルもステイルで嘲りが止まらない。今までの競売開始額からは考えられない、下級層の子どもが物乞い代わりに売る花と同じ値段だった。桁からして違うその数字からのスタートは会場全体の悪ふざけも感じられた。

本来、中級どころか下級の奴隷でもそんな額にはならない。しかし、主催側ももともと期待できる利益のない商品と粗悪な客に、これくらいの冗談の種と踏み台に使うのは当然だった。しかし、ステイルの黒い気配の理由はそこではない。……それを、ハリソンを知る全員も理解した上で、苦笑いを隠すのが精一杯だった。


「俺、逆に金もらっても絶ッッ対引き取りたくねぇけど」

「職場の戦力として雇うという意味でしたら……」

「あーそこはな」

「僕はここでオークション最高額を更新してやりたいくらいの気分です」

アランとエリックに続き、ステイルもわざとらしいにこやかな声で会話に乗った。

実際、ここまでの状況によってはそうする選択肢もあったが、オークション開幕からまもなくその選択は消えた。

仮に奴隷を欲しくても、よりにもよってハリソンなんて死んでも欲しくないアランだが、騎士団へ取り返す為であればもちろん払う価値はあるというエリックに「まぁ確かに」とそこは肯定しようとしたところでのステイルの便乗だった。

本当にこの第一王子ならば、プライドの近衛騎士を回収する為ならそれくらいの金額を払ってもどんな手段を使っても取り戻すのだろうとアランもエリックも確信する。自分達騎士程度の給与や報償とは比べものにならない大金を動かせる王族だ。

すでに、プライドを守るという一点においてはアーサーを通してステイルからも信頼を得ているハリソンの価値は計り知れない。


一瞬そこで、あの舞台に立たされることになったのがハリソンではなくアーサーになっていたらステイルはいくらまで出すと宣言しただろうかとアランは過ったが、さすがに口にはしなかった。最高金額以上のこともしそうだと、本気で思う。

値段が冗談のような小さい額のまま上がり続けたことで、ステイル達が思った以上にハリソンの競売は長引いた。プライドも、前世で言えば一円二円ずつの値上がり方に子どもの遊びのようだと思ってしまう。こんなにずっと舞台の上で晒し者にされてしまうことになったハリソンに申し訳なさも覚えてしまうが、同時に鋼の精神を持つハリソンで良かったとも思う。


今回、奴隷のふりをして潜入する騎士を近衛騎士の中からとステイルに提示された際、迷わず挙手をしたのはハリソンだったことを思い出す。危険や、奴隷という立場から一方的な被害に遭う可能性もあるにも関わらず、ハリソンは全くの躊躇もなかった。むしろ自分が一番適任と言わんばかりの迷いなさを今もプライドは強く覚えている。

護衛として、プライドと離れることを選択することには少なからず引っかかったハリソンだが「近衛騎士の中から」とステイルに指定された以上、近衛騎士の役割として判断した。どちらにせよプライドを守る為の行動になることは変わらない。


「では、もういませんか?もう一枚銅貨を足すだけでフリージアの奴隷が手に入るかもしれませんよ?!よろしいですね!」

明るい声の進行役に、わははとまた笑い声が木霊する。

金額の問題ではない、ただ悪ふざけに飽きたものから挙手をしなくなり、自分が格安で奴隷を得ることよりも会場の盛り上がりのまま舞台の上の奴隷を最低価格で落札させたくなった。最後に挙手をしたテーブル席の客も満面の笑顔を浮かべる中、ハリソンはその客を舞台の上から初めて見下ろした。

すでにステイル達を見つけた以上、確認するまでもないがそれでも最後の馬鹿を確認した。口は閉じたまま、自分の認める主人は貴様ではないと胸の内で吐き捨てる。

隙間風が吹いてきたかのように背筋が冷たくなるのは、彼の正体を知るプライド達だけだった。

進行役は十分な時間を取り、値打ちを確定させる。

ハリソンの競売が始まってから、セドリックもそしてステイルも一度もその手を上げはしなかった。彼らがハリソンを落札するのは、撤退する場合のみ。ミスミ王国からの承認を得られず、フリージア王国が正式に騎士団を動かすことができないかまだ判断できない場合は、ステイルもしくは値上がりすればセドリックが落札する手筈だった。

つまりは、落札の手が上がらない現状は、と。ハリソンはその瞬間を心待ちにするように、目を見開き進行役を見る。そして「落札です!」と宣言とともに、軽やかな音が打ち鳴らされた。

カンカンッ!!と落札音と会場の暖かい拍手が沸き起こる中、まずは。



バキリ、と。舞台に立っていたスタッフの鼻を折る音が打ち鳴らされた。



拍手と歓声に紛れ音を拾えなかった者も多い中、しかしその光景は誰もの目に釘刺さった。

商品である奴隷は、両手、両足それぞれが強固な鎖で繋がれている。歩けるように長さに余裕はあろうとも、不自由であることは変わらない。さらには、いつ奴隷が暴れ出しても逃亡を図っても対処できるように、急所でもある首に巻かれた首枷に繋がる鎖をスタッフが終始握っている。体重も腕力もある男が選ばれ飼い犬の散歩のように、奴隷は決して逃げることが叶わない。

そんな中、ハリソンのやったことは単純な動作だった。

自分の首輪に繋がる鎖を掴み、引っ張った。鎖の先を握っている男が不意な力に引っ張られ軽く前のめったところで、それ以上は綱引きをするまでもない。わかりやすく自分の方へと顔を向け、僅かにでも前のめった男の鼻へと前蹴りを、放った。


「バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~」 略して「バドいち」連載中です。


本日更新致しました!!!


第二章まで完結しました。

ncode.syosetu.com/n9682ly/

こちらも是非よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
かっこよすぎます、ハリソンさん!!(*^◯^*)
期待を裏切らない!! ハリソンさん、さすが過ぎます(*´꒳`*)
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