表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2356/2364

Ⅲ291.来襲侍女は待つ。


「やはり席は離れましたね」


そうステイルが独り言のように呟いたのは、席に案内されてからだった。

容易に声を出せないけれど、聞いていると示すべく掴んでいる彼の腕をそっと強く握ることで返事する。

闇オークション会場。地下へ続く通路へ通されて、受付を介して案内を受けた地下の会場は一見普通のオークション会場のようにも見えた。通路までは古びた匂いや汚れた壁やむき出しの地面が目立つ道だったけれど、かんぬきのついた両開きの扉が開かれた先は、ロビーも会場も貴族や王族がいてもおかしくないような豪奢な装飾が散りばめられていた。

想像以上に広々とした空間で、コンサート会場のように二階建て構造の席だから地下ということを忘れてしまいそうになる。私はまだ行ったことがないけれど、もしかすると地上のオークション会場を模しているのかもしれない。

ただ、明らかに闇オークションらしい要素が既に一つ。受付で商品リストと一緒に渡された仮面だ。会場では全員が義務付けられるらしく、仮面舞踏会と同じ鼻から上半分だけ隠す仮面だ。

そのせいで、自由に見回すことはできてもすれ違う相手をパッと見で知り合いかどうかも判断できない。


私達……というよりもステイル達が案内されたのは、一階の後方端席だ。

舞台であれば一番安い席だろう。それに対しステイルが見上げた先へ視線を上げれば、上階の高級席にセドリックらしき影が見えた。私達の時に、件の奴隷収容所の所長の枠はセドリック達になったと明言していたし、飛び込みか、キャンセルが空いた特別席かとの違いだろう。……まぁ、半ば脅して参加した私達へのささやかな嫌がらせの可能性も充分ある。

こちらを見上げた私達にセドリックの方が上方からだから気づいてはいそうだけれど、敢えてこちらに顔を向けない。護衛している騎士達も同様だ。私達はあくまで〝無関係〟のていだから当然だ。


「一組分席も用意されていて幸いでした」

まるで腹話術手前のように最低限口を動かさないようにして声を潜めるステイルは、案内された席で丸テーブルを挟んだ椅子をぐっと自分の方へ引っ張り近づけた。私が腕を掴んだまま座れるようにだろう。

セドリック達の上客用の席は二階のボックス席、そして私達はテーブル席だ。オークションといえば、一階は真正面に向けて寛げる椅子がずらりと並んでいるイメージだったけれど、こちらはどこも丸テーブルに椅子が二個並んでいる。オークションというよりもディナーショーのような印象だった。お酒だけでなく、料理も用意されるのかもしれない。……だからといって、気分の良いものにはならないけれど。

一体何を見世物にするつもりかは嫌でも想像できる。


今回、私たちは二組に分かれて侵入することになった。

セドリックと護衛に我が国の騎士三名、続いたのがステイルと護衛の騎士にエリック副隊長とアラン隊長、そして私……と、アーサーとカラム隊長に温度感知の騎士と透明化の騎士となかなかの大所帯だ。他の客にはステイルとアラン隊長、エリック副隊長しか見えていないのだろうけれども、実際はさらに私を含めて五名の侵入者が同行している。

受付でも特に特殊能力者がいるかどうかすら聞かれなかったけれど、もし聞かれても嘘を吐く方向での完全侵入行為だ。温度感知は昨日と同じ騎士のロドニーに、そして透明の特殊能力は、……とても申し訳ないことに母上の近衛騎士であるローランドにまたご協力していただくことが決まった。もともとは透明の特殊能力者であれば、選別も騎士団長に任せる筈だったのだけれど……。


『私の近衛騎士を付けましょう。私の意思そのものと思い、決して無茶をしてはなりませんよ』

母上から、打診が入った。もう、女王の意思なのだから打診というよりも命令だ。

お陰で今、母上の近衛騎士であるローランドが私達の姿を消しつつ護衛も担ってくれている。つまりは母上の近衛騎士だから何か無茶したり約束破ったらすぐにバレますよというお目付け役だ。

今日までの捜索でも同じような理由で同行してくれたローランドだけれど、今回ばかりはちょっと申し訳なくなる。だって、本当ならノーマン達と同じく今日こそまさに女王付き近衛騎士のデビューみたいなものだったのに、それを彼だけは私達に付いて欠席することになってしまったのだから。……いや、もう地下で闇オークションが行われているという時点で華々しいデビューどころではないのは変わらないかもしれない。

ローランド本人が「陛下に頂いた命、とても光栄に思います」と言ってくれたのがせめてもの救いだ。

実際、ローランドが優秀な騎士なのは私達も最初から知っているし、今回のラジヤでの調査中も協力してくれたから安心できた。今も、彼のお陰で私達五人は誰に気付かれることもなく潜入できている。


ローランド、透明化の特殊能力者は自分が触れているものの延長戦上であれば透明化することもできる。

だから私もアーサーもカラム隊長もロドニーも、今はローランドに繋がった縄に身体の一部を結んでの集団移動だ。長さに余裕は持たせているとはいえ、気持ち的には多頭犬の散歩のような気持ちになってしまう。もちろん、私達が犬側だ。

ステイルに私が触れていても、ローランドが一緒に透明化する意思がなければ一緒に透明化することはない。これはローランドの特殊能力が優秀なお陰もあるらしい。流石に他の透明の特殊能力者でも、立っているだけで床を透明にするようなことはないけれど。

お陰で無言でもちゃんとステイルも私達が付いてきていることを確認しながら歩ける。私からは一緒に透明化しているアーサー達も、もちろんステイル達も見えるけれど、向こうからは私達は見えない。


ステイルに触れたままでも座れるように隣に移動してくれた椅子に、私もお言葉に甘えて座らせてもらう。

アラン隊長とエリック副隊長はあくまで護衛役だし、一緒に座っていなくても不自然には思われない。一瞬、座ったら椅子まで透明にならないかしらとローランドに目を合わせたけれど、指で丸を作って頷かれた。

後方端席は客としては肝心のステージが見えにくいけれど、私達の目的にはむしろ都合が良い。既に着席や談笑している客も多く、全体を見まわしやすい位置だ。

それに端なら、一方向だけ注意すれば話し声も聞かれる心配は他の席よりも少ないし、縄の長ささえ届けば壁際に安心して並んでいられる。


「装飾品から見ても、やはりかなり財力を持った者が多いようです」

「側近も、従者というより護衛目的の体格が多いですね」

「武器は取り上げられませんでしたし、恐らくこの場にいる全員が武器や戦闘になることも前提とした者達なのでしょう」

私達にも聞こえるように、ステイルがくるりと見回しながら護衛役の二人に話しかける。いつもの癖で眼鏡の黒縁を押さえようとして仮面に指先がぶつかっていた。

今、ステイルに言葉を返したアラン隊長もエリック副隊長も仮面着用だから、私達の目にはちょっと不思議な光景だ。仮面舞踏会ならステイルの仮面姿も初めてではないけれど、護衛も仮面というのは本当に闇オークションらしい秘密主義だと思う。


今回私達は、サーカスに参加しなかったエリック副隊長と貴族の知り合いもいなければ聖騎士という注目の心配もないアラン隊長に表向きの護衛役をお願いしたけれど、これなら他の面々でも滅多にバレなかったかもしれない。顔半分とはいえ、やっぱり派手な仮面の印象のせいで、知り合いくらいの相手じゃないとわからない。

たとえば、セドリックなら仮面をつけていても一目でわかったけれど、今までフリージアの式典で挨拶したことがある王侯貴族が仮面をつけていても仮面付きでは気づけないだろう。恐らくこの場にはそれなりの権力者や、そして名のある裏稼業も参加しているのだろう。

武器は私達も携帯している。姿を見せるアラン隊長とエリック副隊長はフリージアに繋がるような特殊能力者用の枷とかは置いてきたけれど、他の普段使いしてる武器は持参したまま取り上げられることはなかった。透明化した私もステイルもしっかりと扱える武器を備えてる。


「まぁ全て確保すれば良いだけです。仮面も薄暗さも関係ありませんから」

ペリッと、私達にも見える角度で商品リストを開きながら呟くステイルからほんのり黒い覇気が溢れた。

聞かれても良いようにやんわりとした言葉で言っているけれど、つまりは「根こそぎ捕まえて吐かせれば良い」ということだろうか。やはりステイルも、仮面付きではピンとくる相手もいなかったらしい。まぁ、誰も知り合いがいない方が良いに越したことはない。


念の為、貴族出身者として顔が広いだろうカラム隊長とローランドにも目を合わせて首をかしげてみたけれど、二人も首を横に振ってしまった。

知り合いがいなかった安堵と、見過ごしているかもしれない落胆で肩を落としながら遅れて私はステイルの開いてくれた商品リストを覗く。私達の商品もねじ込まれているだろうから、実際の順番とはちょっと違うだろうけれど大体は同じだ。少なくとも、セドリックの商品の順番はすぐにわかった。

昨日捕らえた収容所所長の名前がそのまま変更されずに後半の最後から三番目のリストに載っている。セドリックの席から判断しても、商品の順番もそのままあてがわられている可能性は高い。


「商品は落札次第、罰金さえ払えば途中退場で持ち帰りも可能か……」

チッと注意書きを読んだ途端ステイルにしては珍しい舌打ちが直後に零れた。

やっぱり、闇オークションという時点でなかなかステイルも気が立っている。いや、リストの商品の所為もあるだろう。私もなかなか気分が悪くなってきた。

普通はオークションが終わるまでは禁止が普通だけど、ここは普通じゃない。途中退場可能はステイルもジルベール宰相も想定していた範囲だけれど、オークションが終わるまで持ち帰り不可の方が都合は良かった。

普通の競売目的だけではない大規模なオークションだし、まさかすぐに帰るような客は少ないとは思うけれどこちらも万全を図らないといけない。できる限り、誰一人逃がしたくはない。

私達の順番はまだ知らされていないけれど、ある程度推察はできる。少なくともオークションが始まったら進行役から変更と追加の知らせは入るだろう。どの商品がどの客の目に留まるかわからない。客を最後まで逃がしたくないのは彼らも私達も奇しくも同じだ。


商品リストには、やはり奴隷が複数入っていた。

レオナルドらしき商品名以外にも、特殊能力者であろう商品名も記載が三つある。奴隷の他にも盗品であろう宝石や絵画、そして新型の武器に薬と……、……ちょっと待って。見覚えのある国名で王女との内縁権利とかあるのだけれども。ちょっとふざけている。本当に胃もたれするラインナップに気付けば私も眉間に力が入っていた。

一緒に覗き込むアーサーやカラム隊長も表情は険しい。一番後方にいるローランドと、私達よりも周辺の安全を常に確認してくれているロドニーはリストに目を向けていないけれど、きっと幕が上がれば同じような表情になるだろう。

私達の後に、ステイルがリストごと手渡す形でアラン隊長とエリック副隊長に見せれば、二人もすぐに表情が険しくなった。

リストを見終えた後も、不快感が消えないのだろうステイルがいつもの社交界では絶対しない行儀で足を組む。会場に掛けられた大きな時計を見上げれば、殺意を温めていた間にも時間が経っていたらしく開始までもう間もなくだった。それまでにどうかと思った、その時。


「!……来ました」

ぴくり、と眉を唐突に上げたステイルが直後にニヤリと笑んだ。

さっきまでの不機嫌が嘘のように真っ黒な覇気で笑うステイルに、もう何かと尋ねる必要はなかった。

ここにきて私達が待っていた合図なんで今はたった一つだけ。



ティアラからの口笛だ。



私達の開演許可が、ミスミ王国から下ろされた。




…………




「体調は大丈夫ですか父上」


そう、第一王子そして第二王子、第三王子はそれぞれ心配そうに腰を落とした。

目の前には自分達の父親である国王が、顔色を悪くしたまま豪奢な椅子に腰を下ろしている。国王だけではない、今朝まではつやつやとした顔色だった母親までもが今は椅子に掛けたまま真っ青に俯いていた。

大丈夫だ、気にするな、と。父親から言われても王子達は納得できるわけもない。せっかく今日は自国にとって最も大事なオークションの開催だというのに、父親と母親の顔は揃って侵略でも受けたかのような色だった。


「父上、本当にフリージア王国とアネモネ王国に我々は挨拶に行かなくて宜しいのですか」

「同感です。せっかくお忙しい兄上まで公務の合間を縫って参加されたというのに」

それどころではない。

そう、国王は息子達に言いたい気持ちをぐっと抑え、飲み込んだ。まさか、フリージア王国により地下での闇オークションの存在が確認されたなど言えるわけもない。しかもその対処をするのも自国の騎士団ではなくフリージア任せだ。

その事実に、国王も王妃も他の来賓への挨拶周りどころではなくなった。自国の恥が露見することが決定づけられた。

代わりに、自分の後を継ぐ第一王子、そして優秀な第二王子第三王子に国王に代わっての挨拶を回るように命じ、国王と王妃は早々に主催者席に戻っていた。ただしアネモネ王国とフリージア王国にはもう挨拶にはいかなくて良いと、念を押したのももう息子達を紹介できるような状況ではなくなったからだ。


「父上……!開演前の挨拶をご指示の要人には行いました。どうか、僕にだけでもフリージア王国へ挨拶の許可を頂けませんでしょうか……!」

「……すまない。オークションが終わった時にでも挨拶させてやろう」

必死に懇願する第三王子に、心から同情しながらやはり国王は首を横に振る。

自分達の代わりにきちんと来賓への挨拶も行った王子達には罪がない。しかし、せめて闇オークションを無事摘発し終えるまでは我慢させるしかない。それが、彼らの為でもある。


国王である父王に対して珍しく前のめる第三王子に、兄達二人も心から不憫に思う。

今日の来賓にティアラ第二王女が来ていると聞いてから、身支度を一度やり直したほどの気合が入っていた弟を二人も知っている。国王と王妃の前、下手に慰めの言葉どころか私語もできない王子達だが、今一番可哀そうなのが第三王子だと思う。自分にとっての女神はラジヤの所為で公務自粛中である第二王子と、既に愛妻がいる第一王子に今そこまでの必死さはない。


そこをどうか、せめてティアラ第二王女に一目……!!ともう一度頼んだが、今度は父親に睨まれ、とうとう肩を落とした。

ミスミ王国にティアラが訪れるなど、いっそ運命だと有頂天になりかけた第三王子は仕方なく自分の席へと座り直す。時計を見れば、いつの間にかもうすぐ開演時間だった。

椅子に掛けた第三王子に、第一王子は溜息を吐いて国王の横の席に腰かけたが、第二王子は肩を叩きに行く。兄弟としての縁はそこまで感覚がないが、共に同じ国の王女に恋慕している男としてささやかながら連帯感があった。自分なんて意中の相手がフリージアでしか会えないんだぞがんばれと慰めることにする。


自国にとって最も華々しい催しを前に、ミスミ王国王族は通夜のように重い空気をまとい幕上げを待った。

暫くすれば少しずつ明かりが消され暗転し、隣の席以外は顔も見えなくなる。開幕が近いのだと視覚で知らせるその合図に、少しずつざわめきは引いていった。


ぴぃぃぃぃぃぃぃ…………


暗闇の中のティアラによる口笛音など、開演前の期待の音かと誰も気にも留めなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
王子たちがプライドやティアラの婚約者候補に選ばれていれば、少なくとも国王はしっているよなぁ、選ばれていない時点で脈なしじゃ?、と思ったけど ティアラの候補には、どちらかが選ばれている可能性があるのか。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ