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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ287.義弟は潜ませる。


「どうも」


その短い挨拶に、見張りの男達は揃って眉間に皺を寄せた。

つい先ほど時間通りの予約客を案内したばかりだ。本来ならば客同士で顔を合わせることがないよう、そして人数規模で目立つことがないように入場時間の間隔を開けていたにも関わらずの訪問者だ。時間を守らない客は珍しくもないが、だからといって面倒でないわけではない。客商売ではなくあくまで裏稼業である彼らに愛想というものは必要ない。


なんだ?と招かれざる客であることも鑑み、睨みを聞かせ武器をいつでも構えられるように張りつめる。

今度こそ騎士か、それとも衛兵か思考を巡らせる。自分達に笑いかけてきた男は、護衛であろう二名の男と一目でわかる奴隷を引き連れている。

突然申し訳ありません、と全く悪びれた表情もせずに笑いかけてくる男は首をわずかに傾げながら手で自分達が守る扉を示す。


「こちらが噂のオークション会場で間違いありませんね。……公式、ではない方の」

最後に声を低めた青年に、男達は睨みをさらに尖らせた。

まだ認めるわけにもいかず「何の話だ」としらばっくれる。しかし明らかに確信めいている男を前に、それが通じないことも男達はわかっていた。「ご冗談を」となだらかな声で返す青年は、改めて自己紹介を始める。


異国で人身売買を営んでいる。今回はもともと奴隷の売買ついでにミスミ王国の公式オークションにも赴いた。

闇オークションの噂を聞き、ぜひ参加したいと思って裏通りを捜索していた。先ほど部下が自分達と同類だろう業者が裏通りに入っていくのに気付き、追跡しここを見つけた。是非自分達も奴隷オークションに参加させて欲しい。

そう、すらすらと語る青年に男達は終始眉を寄せ続けた。つまりは誰からの紹介というわけでもない、飛び入りをさせろという意味だ。

闇オークションという形式と、客と自分達の安全のために信用できない相手は基本断るのが決まりである。いくら無法者であろうとも、むしろだからこそ内側だけの規則だけは強固であらなければならない。そもそも闇オークションの存在自体が秘匿厳守であるにも関わらず、噂を垂れ流したのは誰かと思えば「所長から自慢され羨ましくて」と、まるで心でも読んだような間合いで笑い交じりに零された。


所長、という言葉に嫌な予感がしながら見張りが尋ねれば、昨日騎士団に捕らえられた奴隷収容所の所長だ。

以前から商売相手として懇意にしていたが、つい先週闇オークションへの出席を仄めかされたと。そう語られれば、見張りの男は疑うよりも先に所長への殺意で歯切りした。

三十分ほど前の男といい、この青年といい、あの所長はどこまで口が軽いのだと〝そう〟思い込む。……つい三十分前までは所長に紹介される筈だったと自称する男にどれほど騎士によるなりすましを警戒したかも忘れ、あの所長の不備を疑わない。これほど口の軽い男ならば、騎士団に捕まったのも当然とすら思い込む。

一度疑い、最終的に瓦解された想像はいとも容易く延長された。両方が〝真実〟として彼らに受け入れられる。


「ご存じですか?あの所長、昨日捕まったそうですよ。しかもあのフリージアの騎士団に。……本当に馬鹿な男です。人の取り扱う商品にケチをつけるからああなる」

にっこりと、黒い笑みを浮かべて笑う青年に、見張りの男達はぞっと無意識に肩をこわばらせた。

裏稼業の中で会話の悪意や皮肉は多い。そして、今の含みは目の前の青年こそが騎士団に密告した張本人かのように敏感に聞き取れた。当人同士の諍いで、その報復に騎士団へわざと取り締まらせるように仕向けたと。そう考えれば、名簿を持った見張りはゴクリと太い喉を鳴らした。


無言で返す見張りの男へ、さらに青年はわざと仄めかす。

部下がフリージアの王族の宿は調べていた、情報こそ全てだ。奴隷がなかなかの役者だった、簡単に騎士達は騙された、と。

酒飲み話のように笑いながら語る青年に、男達は揃って一歩後ずさる。所長が口が軽かっただけではないのだと、自分達の思考で辿り着いたものをそのまま真実だと思い込む。二段構えの仕掛けに気付けるわけがない。


「ちょうど席も余ってお困りでしょう?僕らが埋めてあげます」

「……遅かったな。ついさっき埋まったところだ。ちゃんと間抜けの埋め合わせの出品まで用意してくれた」

「埋め合わせというならばこちらも用意していますよ。むしろ出品の方が目的です」

そう言って、後方を手で示せば護衛達も見えやすいように道を開けた。護衛の一人が繋がれた男の鎖を軽く引いて見せる。


実際は、席は決して全て埋まっているわけではない。奴隷収容所所長の席が埋まっただけで、昨日の騒ぎのせいで手を引いた小物の分の出品枠も席も空いている。少しでも賑やかしを増やしたいのも事実だ。しかも、今こうして出品となる奴隷を一人提供してくれることもありがたい。

もし闇オークションに相応しい商品であるならば、ぜひねじ込みたい。今年の闇オークションが盛り上がらなければ資金が集まらない。資金が集まらなければ、来年の闇オークションも開催できない。裏でも表でも、大規模な催しの運営事情は変わらない。

一人でも多く、一つでも多く枠を、空白を埋めたい。……しかし、こうなる結果を招いたであろう告げ口男を彼らは〝私情〟として入れたくなかった。

口の軽い重いではない、今自分達が煮え湯を飲まされている原因に扉をくぐらせるどころかこの場で締め上げてやりたいくらいの衝動に駆られた。


断る。招待者と紹介者だけだ、テメェらのせいでこっちがどれだけ迷惑かかったと思ってる、殺される前に尻尾を巻いて消えろ、と。拒絶の言葉を一回放てば後も尽きない。口にすればするほどに火が回る。

絶対に思い通りにしてやるものかと利益よりも私怨で首を振る。声を抑えなければいけない状況にも関わらず、怒鳴りになりかけたことに見張りの男達はぶつけるように地を踏みつけ発散した。

しかしそんな彼らの努力も、青年はいとも簡単に靴先で蹴りつける。


「宜しいのですか?参加させてくださらないのなら、今度は皆さんがフリージアの騎士団に知られるかもしれませんよ」


ア゛ァ゛?!と、直後には彼らにとって今日一番の怒号が重なった。

自分をここで追い払うなら同じ手段で騎士団を仕向けると。そう言いたいのだと当然理解する。そう思うように仕向けたのは青年本人だ。

フリージア王国が昨日隣国で目撃されていた以上、今日はこのミスミ王国のオークションに招待されているなど誰でもわかる。つまり、自分達の天敵が今この国にいるのだと思えば単なる脅しではなく嫌なほど現実味も帯びてくる。


ふざけんな!と唾を飛ばせ叫び、男達ももう黙ってはいられない。

追い返すだけでは足りないと、この場で殺すか、捕まえて上の人間に突き出すか、それともいっそ商品にしてやろうかとその三択しか頭になくなる。青年の護衛はたったの二人、自分達も同じ数なら負けはしないと殺気立つ。目の前にいる少年の首根っこを掴んでやろうと、一人が手を伸ばした瞬間。


ガチャリ、と。男の手が到達するよりも先に、側頭部に銃口が突き付けられる方が先だった。


固い感触をこめかみに突き付けられたことよりも、裏稼業であれば誰もが身を固くするその引き金の音に反応し見張りはピシリと固まった。

直前までの勢いが嘘のように、指先一つ動かせなくなる。安易に振り向いただけで殺られると、血走った目で横を見る。つい先ほどまで青年の背後に控えていた筈の一人が、いつの間にか配置を変えていた。

青年と見張りの間に割って入るように気配を消し移動していた護衛が、雇い主の胸ぐらなど許すわけもなかった。

男が動きを止めた時点で、引き金も引かれることはない。だがぎょろりと動かせた眼球と、栗色の眼孔とが合った瞬間、弾丸の代わりと言わんばかりに銃身そのもので横面を殴り飛ばされた。

グアッ?!と、胸ぐらをつかもうとした男の方が逆に悲鳴を上げ地面に背中を打つ。更にそれが合図のように、名簿を持っていた男もまた悲鳴を上げた。今度はもう一人の護衛により自分の方が胸ぐらを捕まれ、そのまま片腕で軽々と持ち上げられた。

つま先まで地面から浮く恐怖に、名簿を落とし足をバタつかす。


「僕も揉め事は避けたいんです。ただ闇オークションに参加して皆さんの利益を増やすお手伝いがしたいだけなんです。仲良くしましょう?」

にっこりと笑う青年に、今度は見張りの男達のどちらも一声も返せない。発すれば今度は殺されると本気で思う。

今も銃口を自分の額に向けて突き付ける護衛と、掴み上げたまま一向に下ろしてくれない護衛を前に妙な真似一つ許されない。

既に銃を出された時点で、見張りの二人から戦意は消えていた。銃など高額な武器を彼らは持ち合わせない。安物の旧型銃であれば扉の向こうにいる仲間が所持しているが、表に立っている自分達が持っていれば目立ってしまう。服の中に隠せるような高級武器を、下っ端の彼らが持ち合わせられるわけもなかった。あとは自分達の騒ぎに仲間が飛び出してくれるか、狙撃してくれるのを願うしかない。


だが、仲間からは全く助けようとするそぶりすら見られなかった。

見張りの怒号が聞こえた時点で覗き穴から様子は伺ったが、だからといってすぐに助けに入るわけがない。銃で狙撃するのはあくまで自分達の身が危険になると判断するまで。銃声など響かせれば、今町中に張られている衛兵やミスミオークションの来賓が連れる護衛達にまで気取られる。一番騒ぎを起こしてもバレないこの日は、同時に騒ぎを知られれば一番大事になる日でもある。

つまりは、見張りの二人が殺されるまでは何もしないと。その意思は否が応でも本人達に伝わった。彼らもまた、見捨てる側の気持ちがわかる人間だ。


「ッわかった……わかった!特別に参加させてやる……!!」

そして、自分達の命が最優先の人間でもある。

このまま殺されてたまるかと、銃を突き付けられた方の男が抑えた声を聞こえるように放てば、つま先の浮いた男もコクコクと必死に頷いた。彼らの望ましい応答に、青年もにっこりと笑顔で返した。「そうですか」と言葉とともに手で合図を示せば、見張りの二人も銃を下ろされ、手も離された。


やっと地面に降りることができ尻もちをついた男が荒れた息のまま四つ這いで名簿を拾う。もともとの出席者から空白部分を確かめる。

参加させてやると口では言っても、自分達はそんなことを当日言えるような立場ではない。主催者も招待客全員を把握しているわけではないのだから、自分達が帳尻を合わせるしかない。あとは順番だと、目玉商品であれば主催者にも喜ばれると願いを込めて青年を鋭い目で見上げる。

それでその商品は?と尋ねれば、青年の手の動きだけで鎖に繋がれた奴隷は三歩前に出た。


「フリージア王国の人間です。……とはいっても、残念ながら特殊能力は持たないハズレでしたが。処分するには勿体ないので、これを機会に換金させてください」

せっかく騎士団を搔い潜って手に入れたのに残念でした。と、そう告げる青年に見張りの二人も同じように落胆する。

確かにフリージア人であればそれなりの額がつく。しかし、特殊能力者ではないのならば、等級でいえば中級止まりだ。規制されるまで普通の奴隷オークションで喜んで取り扱われていたが、今回の高級オークションでは下の下に値する。せめてそこは建前でも特殊能力者と言い張って泥をかぶってくれと思うが、それを口に出すわけいにはいかない。

しかし、今は法で禁じられた商品だからこそ処分に困っているということも納得できた。堂々と捨て値で売ることもできず、売る相手さえ選べば普通の奴隷よりも額がつく商品だ。

目に見えて表情筋の力が抜けている見張り達に、青年もわかっていたと言わんばかりに肩を竦める。ここまでも当然想定内だ。「勿論これだけではありません」と、自ら服の中から小袋を取り出した。縛っていた紐を解き、彼らにも見えるように口を開いて中身を見せる。

地面に転がった状態からやっと膝をついて起き上がった彼らは低い姿勢でそれを覗き込み、途端に目を見開いた。


「閉ざされていた国、ハナズオ連合王国の宝石です。正規の経路ではないだけなので、鑑定して頂いて結構です。こちらも別口で出展させていただきます」

いかがです?と尋ねた声に、男達は青年と目を合わせる前に勢いよく頷いた。

ハナズオ連合王国。彼らも噂にだけは聞く黄金と鉱石の国だ。夢のように採掘されているという金も宝石も品質とともに受容が高く、ごく一部の権力者でも滅多に手に入らない。

正規ではないということは盗品かと流れるようにあたりをつけた男達は、慌ただしく立ち上がる。規模の大きなオークションには鑑定士も当然ついている。今から鑑定士に見せれば出展には充分間に合うと、一気に思考の螺子が回る。

中級奴隷を売る枠など、宝石の為にならば安いものだ。今回のオークションでもハナズオの金細工が一点出店されたが、それもささやかな大きさである。それに比べ、こちらは正規経路でも手に入れられないような大粒だった。正規オークションに出されても良い逸品だ。

別口と言われれば、それぞれを適切な順番にと名簿に書き足した。走り書きで紹介状をしたため、初対面からは考えられないような丁寧な動作で青年に手渡した。宝石を見た瞬間から、憎き厄介客から上客を見る目に切り替わる。


どうぞどうぞと、扉を乱暴にノックしつつ青年に向けた言葉は丁寧にまた新たな参加者が決定する。

無事、揉め事も収まり話がついた様子の外に、扉の向こうの見張りも素直に開場し受け入れた。むしろ、自分達も銃を向けられては堪らないと最初から何事も知らないような顔でにこやかに彼らを招き入れる。

どうもありがとうございます、それでは、と。挨拶をかわし、見張り達の手で開かれた扉を青年たちはゆっくりゆっくり優雅な足取りで進んでいく。

護衛の一人が扉を開く役を自ら代わり、〝本当の最後の一人まで〟通ったことを確かめてからゆっくりと扉を閉じた。

「夢のようです。こんな大きなオークションに参列できるなんて光栄です」



─ 馬鹿が。



そう、胸の内で青年は吐き捨てた。

護衛の男二人と、奴隷一人。更には〝透明化した〟プライドと騎士四名を引き連れステイル・ロイヤル・アイビーは張り付けた笑顔で地下へ堂々と進んでいった。


再び、役者は揃う。

色鮮やかなサーカスから闇底のオークションへと、舞台は変わっていった。

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― 新着の感想 ―
めちゃくちゃいい!鮮やかな手口!テンション上がりますねー!!
ドキドキ止まらない——!!!!!かっこよすぎる!
ステイル流石!!ヴァル達も、プライド様達も悪い人以外皆んな怪我には気をつけてください!
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