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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ285.男達は待ち、


「……ったく、やってられねぇぜ」


そう、吐き捨てるように呟く男は、当たり散らしたい欲求に堪え朝からそこに立っていた。

早朝から大通りには人が行き交うが、彼らの立っている場所には同業者しか立っていない。大通りの方角から聞こえる賑わいや足音が増えてくるのを耳で拾いつつ、煩わしさはあっても羨ましいとは思わない。たった数メートル距離の差だが、自分達と世界がぱっきりと分かれている。

祭りの始まりに胸を浮き立たせて騒ぐことが仕事のような馬鹿と違い、自分達はなるべく静かにそして目立たないように〝祭り〟を終わらせなければならない。もしせっかくの大きな祭りにケチがつくような行動を起こせば、酒にありつくまでもなく始末される。

だからこそ今も、国の祭り会場から遠く離れた〝出入口〟から鼠一匹も許せず感覚を研ぎ澄ます。

仕方ねぇだろと、名簿を脇に挟む男は見張りの男にやはり独り言のような抑えた声だった。目は合わせずに言葉を返す。

参加者がそれぞれ時間をずらして現れる為、基本的には暇なまま雑談もし放題の彼らだが決して楽な仕事ではない。報酬が良い分、責任も重い。

参加者にしか知らされない、会場から距離は離れながらも地下で繋がった建物は、関係者以外に気づかれるわけにはいかない。

ただ棒立ちではなく気配を消し、その上で目も離さず客に間違いも無礼も許されない。


「参加者や商品の数が変わるなんざよくあることだ。昨日で殆ど搬入も終わったんだから問題ねぇ」

「フリージア騎士団のせいだ。ラジヤにまで来て首突っ込んできやがって……」

どうせなら祭りと関係ない日にしてくれりゃあと、苛立ちが収まらない男は愚痴が止まらない。

今日の祭典。ミスミ王国におけるオークション、その裏側で密かに執り行われてきた闇オークションは裏で生きてきた彼らにとってはこの上なく効率の良い稼ぎだ。

腕に覚えのある裏稼業が表に出せない品を出品し、そして金持ち達が嬉々として値段を吊り上げ悦に浸る。この日だけはどんな立場の人間でも溶け込める。


この催しの為だけにめぼしい商品を探し、ため込んでいる組織もいる。

中立を謳うミスミ王国に集まる王侯貴族富裕層を鼻で笑いながら、自分達もまた同じ時に同じ快楽を味わえる。紹介でしか参加どころか、その催しの存在を知ることもできない希少なオークションでは一回の間違いも許されない。それなのに今回、初めてケチが付きかねない事件が起きた。国境を少し超えた先にある属州国に現れた、大国の騎士団だ。


フリージア王国騎士団。その強さは裏の世界で化け物と称されるほど噂が付きまとい、標的にされ根絶やしにされた裏稼業は数知れない。

そのフリージア王国の騎士団が昨日、すぐ目と鼻の先で大検挙を行っていた。しかもその実、捕まったのは今回のオークション参加者だ。常連ではなく近年の参加者だったこともあり、幸いにも検挙されたことを知られてもオークション関係者だと知るものは少ない。


しかし、お陰で予定した出店数が減ってしまっただけでなく開催前に「ミスミ王国にフリージア王国の騎士団が現れる」という噂が瞬く間のうちに広がってしまった。

お陰で捕まった奴隷収容所関係者だけでなく、フリージア王国の影を知った途端不参加を申し出た常連もいた。搬入日だった昨日も、一度搬入した商品をやっぱり返してくれと詰め寄ってくる辞退者も出た。

自分達にとっては待ちに待った楽しみの催しに、開催前からケチがついたことに腹が立って仕方がない。参加者や出品が減るということは、それだけ大きく自分達の利益が減るということになるのだから。


「大口の客まで逃げちまったらどうしてくれんだ……」

「あるだろうな。まぁ。フリージア王国の馬車が隣に来てるって情報が回った時点で、今年は当日不参加が例年より増えるのも織り込み済みだ。今年は大口出品も減ったしな」

裏稼業同士の催しの為互いに牽制し合い、当日不参加者は少ない。しかし裏に流れるような小物ほど用心深くもある。

国の権力者や腕に自信の立つ護衛がいる者は自分だけは安全圏と思ってきてくれるが、守りもない興味本位の参加者ほど集まる数も多ければ逃げることも多い。

ただでさえ例年の大口客が昨日も合わせて三件も競売出展を見送ってる。買い付け客として参加してくれるだけでも良い方だ。


脇に挟んでいた名簿を手に取る男はパラパラと参加者と出品表を確認する。

参加者の名前も所属もない。招待状の顧客番号と出品の有無と内容のみのリストだ。一部を除き殆どが秘密保持の為闇オークション側も顧客の正体すら知り得ない。招待状を辿ればわかる家もあるが、殆どが経由地を重ねて足がつかないように徹底されている。


自分達が把握しているだけでも、今日まで七件も不参加者が出ているのは珍しい。

会場は例年通りである分、人口が少なければにぎやかしも減り、競り相手がいなければ高額にも跳ね上がらない。今年は参加してくれても来年には見切りをつけられる可能性がぐっと高くなる。

毎年例年を超える為に、裏稼業だけでなく奴隷狩りの関係者や商人にも声をかけたのがそもそもの間違いだった。まさか属州の中では最大規模の奴隷収容所が昨日の今日で壊滅するなど誰にも想像はできなかった。

今からでも参加者や出品数を増やしたいものだがと思いつつ、男は期待できる売り上げ金額を改めて計算しなおそうとした、その時。


「あぁ、良かった。やっと見つかりました」


その、心からほっとしたような声よりも先に小走りな足音に見張りの二人は気が付いた。

予定の参加者かと思ったが、それにしては時間がずれている。今の時間帯に訪れる予定の参加者は名簿にもういない。なにせ、昨日騎士団に検挙されたのだから。

昨日の今日で解放されるわけもなければ、しかし他の店と勘違いするような場所でもない。ローブに姿を隠した背の高い男の傍には、護衛らしき男達も含めて五人も人間が続いていた。見張りの男達も武器を構え、建物の入り口を背中で隠す。

「誰だ」と短く愛想のない声で返しつつ、時間を間違えたかまさか騎士団かとも予想した。検挙された収容所の所長が減刑欲しさに自分達を売ったということも充分にあり得る。

自分達を売れば、それは当然闇オークション関係者全員からの報復を決定づけることになるが、化け物と呼ばれる騎士団に命乞いしたとなれば納得できた。しかしローブの男達が背後に運ぶ馬車を見れば、別の可能性も想像できた。

見張り二人の前で立ち止まった男は「警戒なさらないでください」と両手のひらを彼らに見せる。安心させるようにローブを頭から取ってみせれば、そこには一目で裏稼業関係者とわかる顔に大きな傷がある男の、にこやかな笑顔があった。


「こちらが件の会場入り口で間違いないでしょうか」

「何者か先に答えろ。何の用だ」

「ハワーズ収容所をご存じでしょうか?」

敵意を鋭く尖らせる見張りに、男が語った収容所の名はさらに彼らの警戒を強めることになった。知っているもなにもない、この時間帯に訪れる筈だった参加者だ。

参加者名簿には名前の記載はないが、検挙された途端に名簿に斜線を引かれることになった番号でもある。

やはり騎士団かと、武器を突き付けようとするが途端に、ローブの男の護衛達が同じように剣を構えた。見張りは表向き立たされている人数は目立たないようにたった二名、たいして相手は剣を抜いた人数だけでも四名だ。しかもその構えと手早さはその辺のゴロツキとは明らかに違うと、裏稼業の深くまで身を浸してきた彼らは肌で理解する。


しかしまるで緊張感を壊すように、ただ一人穏やかに「落ち着いてください」と笑う男は丸腰だった。

見張り二人に驚かせてしまったことを謝罪しつつ、逆に自分を守ろうとした護衛を子どものように軽く諫めてみせた。「彼らは礼儀を知らないもので」と肩を竦めながら、改めて自己紹介をやり直す。

自分はハワーズ奴隷収容所と懇意にしていた奴隷商だと、聞いたことのない名前とともにそう語る男は彼らが疑問を抱くよりも先に心地よい流れで事情を説明し始めた。


今回の闇オークションの商品用に、収容所へ高級奴隷を提供したのも元はと言えば自分の商会だった。

パワーズ奴隷収容所がまともな高級商品を一人しか調達できなかった為、ひそかに自分が提供してやった。それなのにフリージア王国の騎士団に検挙された彼に、自分はもともとの商品元値すら貰えていない。

オークションで売れた額の4割と約束していた為、オークション前に検挙されてしまい自分は大損した。更には闇オークションの紹介料まで前払いし、本来ならば今日闇オークションに同行者として紹介してもらえる筈だった。


「ひどい話でしょう?商人としてどうしても諦められず……。地下への入り口がここであることも合流の為聞いていたので、突然押しかけることが無礼とは存じておりましたが」


そう、感情豊かに語った口で最後は悔し気に唇を噛んで首を横に振った。


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