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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ281.嘘吐き男は状況を把握する。


「……えーー…………で、俺様にどうしろって話?」


流石話が早い。

そう思いながらプライドは、改めてライアーを見る。頭を掻きながら姿勢を低くする彼の自然体に、流石は元裏稼業と思う。

ライアーを待つ間に、なるべくこちらの状況や立場がバレないように配慮したが、それでもライアーが来てくれるかプライドは一人不安に駆られていた。下手すればレイも一緒に来たのではないかとまで考えた。

しかし、結果としてアランとエリックそしてライアーの三人だけがステイルに瞬間移動されてきた。ライアーが本当に仕事を受けてくれたことも、レイがライアーを送り出してくれたことも両方にプライドは一人胸を撫でおろした。


しかも、恐らくは初めてであろう特殊能力による瞬間移動の後もライアーはたいして驚いていないように見える。

視界が突然切り替わった違和感からか足元が一瞬フラついたようには見えるが、あとは大声を出すでもなく落ち着いたものだ。部屋の中に屈強な騎士達がいるにも関わらず、へらりと笑って見せる様子は流石裏稼業としての場数が違うとまで思う。

「失礼しました」と、ライアーからの投げかけに静かな声で社交的な笑みをステイルが代表として浮かべれば、それを見たプライドもぴしりと改めて侍女として姿勢を伸ばした。


「改めまして、この度は話を引き受けていただきありがとうございました。……ライアー殿、でよろしかったでしょうか」

「ハァ、まぁ好きにどうぞ。……で?まさかアンタが雇い主さんとかだったり」

実際はライアーという名前も自称だが、既に知られている名前がそれならそのままで良いかと適当にライアーは結論付ける。

そんなことよりも、家柄の良さそうな立ち振る舞いと丁寧すぎる口調で話しかけてくる青年に絶対こいつはまず信頼しないと決めた。愛想を良くしている人間ほど、その分軽薄に思えて仕方がない。自分が良い見本だ。


出方を見る為にわざと雑な態度を見せてから、そのあとの問いは本音も混じった。

優雅に礼をする姿勢はそれなりの身分や教養がある人間なのだろうと想像つくが、自分達をわざわざ迎えにきた張本人だった分良くても二番手だと思っていた。どう見ても目の前の男が一番手になるような大物には見えない。自分の目に映る不健康な顔つきが、自信満々に笑んでいるのを見れば気味悪さまで感じてしまう。


ライアーからの投げかけに、ステイルは肯定も否定も返さない。口を閉じたままにっこりとした笑みで返した。敢えての無言と笑顔で返す相手に、ライアーもまた二度聞くような真似はしない。話したくない、という返事だけに余計に胡散臭さが強まった。


「依頼内容はいくらかご存じかと思いますが、一応僕の口から改めて詳細を含めて説明させていただいてよろしいでしょうか」

「あ~……ぜひぜひ。報酬の方もがっぽりよろしくお願いします」

本音を言えば、仕事内容よりも報酬よりも〝ライアー〟である自分のことをどこまで把握しているのか尋ねたくなったライアーだが、思いとどまった。尋ねれば逆に弱味を晒すことになる。

自分の身の回りのことを知られたくない意図に、目の前の男が気づかないと思うほど楽観的ではない。雇い主が何者かすらも教えたがらない男だ。そもそも、ここまで綺麗な礼儀を見せるくせに自分から名乗ろうとしない時点で、ライアーは、それだけ秘密主義かやばい人間だと思う。


アランとエリックとのやり取りを思い返せば、少なくとも騎士よりも目上の人間。しかし、アランとエリックの立場が本隊騎士か騎士隊長か副隊長かもライアーは思い出せない。もともと関わりたくない上に、一生最後の縁にしたいから覚えようとも思わない。唯一騎士で記憶に留めている相手は、ネルの兄である副団長だけだ。


ステイルにより作戦の説明と自分の役目や脱出の手順について聞きながら、何度もライアーはアランを盗み見た。

今の自分の状況と説明する青年をどう見ているか推し量ろうと思った。しかし、常にエリックと同じような半笑いで見ているだけだ。そこには緊張や疚しい空気は感じない。

自分が依頼人相手に失礼な態度をとってみても注意するどころか怒るような兆しもなかった。

レイの家でも見せたままのアランとエリックの様子を確認しては、そこで少し安堵する。ライアーが今比較的信頼しているのはアランでもエリックでも騎士でもなくあくまで〝ジャンヌの関係者〟だ。


「……以上です。基本的には現場の判断にお任せします。最優先事項だけ守って頂ければ、あとは貴方方のお好きなように」

がた???と、ステイルからの説明をざっくり頭にいれた後のライアーは最優先事項よりもそちらに首を目をぱちくりさせる。

それもこれから説明しますと言わんばかりに笑みで返したステイルは、そこでライアーの鼬色の瞳と目を合わす。

「法に反する真似は当然禁止ですが」と最低限以下の条件を突き付けながら、やはり彼に正体は気づかれていないことに安堵する。優秀な従者の特殊能力がまさかこんなところでも役に立つとは当時思わなかった。

まず、一つと。先に人差し指一本を立たせて見せながら印象付けるように今までよりも喉を張る。


「フリージアの民か関係なく奴隷被害者を、可能ならば全員の救出。反撃や正当防衛以外必要以上の残虐行為は控えること。そして最後の一つ、……そこにいるヴァルに協力し、極力指示にも従ってください」

最後三本目の指を伸ばし示しながら、反対の手で初めてステイルは壁際の男へと視線を誘導した。

隷属の契約とプライドの命令を受けたヴァルであれば、指示も大きくは間違うことはないだろうと考える。


ヴァル?とその名前も知らないライアーは僅かに眉を上げながら視線を移す。見れば、部屋を最初に見回した時にも視界に引っかかった男が気だるそうに荷袋とともに壁に寄りかかっていた。

他の面々のように佇んでいるわけでも、そして椅子かけるわけでもなく床へ直接腰を下ろしていることとそして足の崩し方で、ライアーは一番親近感が沸いた。さらにはステイルに呼ばれ視線を上げた顔は、ライアー以上に態度が悪い。「あ゛ー?」と一音を溢しながら不快いっぱいに睨みつけてくる男に、反してライアーはほっと息を吐けた。

呼ばれたからといって視線はくれても、挨拶どころか立ち上がろうとするそぶりもないヴァルにライアーの方がへらりと笑いかけ手を振った。


「あいつは~、どういう立場で?」

「貴方と同じ雇われている人間です。元裏稼業ですが、僕らとも関係は長いですね。特殊能力者なのでいろいろと貴方も頼ってください」

うわーやっぱり。と、ライアーは心の中で唱え、今度は本心から口が笑う。

見掛けはむしろ平凡なくらいの人相の男だが、体つきや何より面構えに酷く覚えがある。自分の記憶では見慣れたままの裏稼業の人間だ。

いくら人相が悪人だろうと聖人君主だろうと平凡であろうと、辿ってきた人生で全く生き方も中身も変わっていくことはライアー自身よく知っている。裏稼業だからといって顔の良し悪しはなく、ただただ性根がそのまま人相に出るだけだと思う。

それを隠すことが上手い人間よりはずっとわかりやすく、読みやすい分ライアーにとっては歓迎できる。


今もライアーへ手を振り返すこそはなく、むしろチッ!!と舌打ちをヴァルは鳴らす。

眼光をさらに鋭くする彼にライアーはヘラヘラの笑みのまま自分から歩み寄る。裏稼業と組まされる、と思うと捨て駒にでもされるのではないかと考えたが、自分と違い雇い主と今回が初めての仕事ではない相手であればまずは取り入るに限る。「お~古参サマ」と腰を下ろしたままのヴァルへ背中を丸め、覗き込む。


「どうもどうも。よろしく頼むぜ兄弟」

「テメェと兄弟になった覚えはねぇ」

なれなれしく握手を求めてきた手を、甲で弾くように視界から除ける。

ケッと吐き捨てるヴァルは、このやり取りも二度目だと記憶の隅で思う。しかし、別段珍しくもないやり取りに、返しが似たことも気にしない。


そしてライアーも、手を弾かれたところで自分の中では充分挨拶が成立した。

裏稼業にいた間はよくされた返事にも、別段違和感は覚えない。それよりももその低い声の方に少しだけ既視感を覚えた。もしかすればどこか裏稼業で会ったことがあるのかと少し思いつつ、今度はヴァルの隣にどっかりと腰を下ろす。

「いや~嬉しいぜ!」と表面的な好感を高らかに、パシパシとヴァルの肩をたたく。

友好的ではないヴァルだが、ライアーにとってはここで胸ぐら掴まれることもなければ殴られるなど力関係や立場を誇示してくることがない相手であれば、もう充分気楽な態度でいけると判断できた。

この時点で攻撃してくるような気配があればもっと態度を改めるが、これは力押しでいけると思う。


「来た瞬間みんなお行儀良さそうで俺様超浮いてるからもう緊張で繊細な心臓がバックバクだったぜ。裏稼業上がりねぇ~俺様も大昔下っ端だったが本当に使い走りでヘコヘコでよ~いやアンタは良い上司になりそうで俺様感激だぜ。頼れる男っていうの?もう風格違うぜ。なんでも指示しろよ俺様なんでもやっちゃうぜ??」

「どうだヴァル?ご所望通りの男だ」

「うざってぇ……」

その言葉が、うんざりとした深いため息とともにヴァルから放たれる。

手を払ったにもかかわらず、今度は隣に座られるのも嫌だが、今も馴れ馴れしく話しかけられるのも触られるのも全てがヴァルには不快だった。耳の横で喚かれることも、肩をバシバシ叩かれることもケメトやセフェクには頻繁にされることだが、今の相手にはただただ煩わしさしかない。

しかし、こういう相手はいくら自分が言葉や態度に示しても寧ろ楽しいと言わんばかりにしつこく絡んでくる類だとヴァルもまた裏稼業の経験から知っている。少なくとも自分にとっては友好的なふりをした嫌がらせだ。


一回殴るか半殺しにでもすれば、手のひらを反すように態度も改まるが、今の自分には契約でそれはできない。隷属の契約さえなければ裏稼業時代のように握手を求められた時点で立ち上がり、胸ぐらを掴み恐喝して腹と顔面くらいは殴り蹴りつけている。

しかし今の自分にはそのどれもできない為、結果としてされるがままが一番被害が少ないからの無抵抗でしかなかった。

しかも、今の自分の姿が余計に舐められるのを増長していることも理解する。いっそレイのことで脅してやろうかと舌が浮きかけたが、直後にそれも契約でできないのだと思い出す。

今もバシバシ肩をたたかれ、薄っぺらい誉め言葉と薄っぺらい心情吐露を真横から浴びせられる。

今にも殺しにかかりたそうなほど凶悪な人相がさらに引き攣るヴァルに、ステイルは眼鏡の位置を指先で直し見下ろした。


「わかっていると思うが今回の任務中は彼のことも絶対に守り、共に行動しろ。俺達と合流するまでは視界に捉えられる距離にいて、怪我をさせないように護衛しろ。これは命令だ」

「なに?俺様のこと守ってくれちゃうの先パイ??いや~~~最高。これで俺様超安心だぜ。いや急に人身売買とか聞いてもう俺様小鹿みたいに震えちまってよ、今までの人生平和にヘコヘコ生きてきたもんで暴力とか怖くて怖くてたまんねぇもんで」

王族であるステイルからの命令に重ねさらに調子ずくライアーに、ヴァルは若干やはり騎士の方がマシだったかもしれないと考える。

この馴れ馴れしさは鬱陶しい上に煩わしい。プライド達がライアーを選抜するまでの流れを一部始終見ていたヴァルだが、それでもこの人選は自分への嫌がらせではないかと感じられる。


しかし、緊張が解けたと自白するライアーの言葉も意外に本音だったらしいと顔を背けながらふと気付けばそこで少し腹立たしさが止まった。

ヘラヘラ笑って今度は自分の肩に腕を回してきだしたライアーだが、明るい声に反して冷や汗の湿り気が至近距離だとよくわかる。頭が軽いだけの馬鹿ではなく、今置かれている状況に危機感を覚える程度の賢さはあるのなら、このしつこさも緊張の裏返しがあるかと考える。

てっきり現れてからずっと「わりの良い仕事を得たと勘違いした馬鹿」と思ったが、危ない橋の自覚はどうやらあると思う。


「まぁ仲良くいこうぜ兄弟。サクッと片付けてサクッと帰って上手い酒飲もうぜ?な??あ、それとも女の方?俺様イイ店知ってるんだけどここは前祝いにこれから」

「……おい。コイツ、今どこにいるかわかってやがんのか?」

どこまでも調子の良いだけの中身がないことを言うライアーを聞き流すヴァルだが、彼の不安を煽れそうな点に気付く。

瞬間移動の後にも関わらず、まるでここが自分の住処の近くのように言うライアーにそういえばと思う。ヴァルはもう慣れたものだが、そもそもこんな長距離であることも化け物だと当時の自分も思ったことをよく覚えている。


へ??とヴァルの言葉に一瞬だけヘラヘラ笑いが止まるライアーはそこでやっと視線をステイル達へと向けなおした。

言動や振舞いから一番自分にとって気安い相手に目の照準を合わせてから、あまりにも慣れた景色過ぎて他に目も向けるのをやめていた。自分を視界にいれたがらない態度も、まともな返事もしないことも、表情全てから不快をあらわにする表情も、自分にとってはむしろやりやすい。レイのように一言一言食って掛かってこない分身軽さもあった。


しかし、今の言葉には若干の不安を覚える。

ざわざわと背中に砂を注がれたような感覚に顔が引き攣りかけるのを堪える。そもそも自分に話を持ってきた騎士二名に目を向ければ、アランとエリックは互いに目を合わせてから首を横に振った。

二人も機密事項に関わる内容は最低限の情報しか口にしていない。あくまで危険な依頼ではあることを可能な限り詳細に説明しただけだ。


ステイルもこれは、まだ言っていない。作戦内容を覚えてもらうことを優先して説明し、ヴァルを紹介したところでライアー自らが脱線した。

「失礼しました」と先にまだ情報が少なかったことを謝罪したステイルは、そこで一度窓際に立つ。全開にはできないが、カーテンを小さく開いて見せた。


ここがラジヤ帝国の属州であると説明すれば、そこでジルベールは足音も立てずにライアーへと歩み寄る。

テーブルの上に置いていた書類から、大陸地図を開いて見せた。ライアーに見えるようにフリージア王国を指し、次に今自分達がいる地を指した。学のないライアーも、どんでもない距離であることを理解する。さらにはその地の首都名に、……一度だけヒュッと喉が鳴る。そして仕事を行う場所もまた更に国境を超えた先だ。


ミスミ王国。そして闇オークション。それを聞くだけでライアーは一周回って笑えてきた。


流石はジャンヌちゃん繋がりと、もうとんでもない事案理由全てを彼女の存在全てで片付けた。


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ヴァルがライアーとチームを組むのは面白い
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