表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2331/2331

Ⅲ278.来襲侍女は戸惑い、


「夜分遅くに失礼します。ジルベール、姉君がお呼びだ。来れるか?」


それは、唐突な来訪だった。屋敷にその足で戻ってから愛する妻と娘と寛いでいた時に、ノックもなく現れたのだから。

もう慣れた瞬間移動とはいえ、背後を取られたジルベールは瞬時に振り返った。さらには聞き覚えのある声に一度は視線を上げるだけだったマリアとステラも、その姿を見れば思わず目を見張った。声はステイルだというのに、姿は変えられた彼は今別人だ。慌ててステラを抱きしめ庇うマリアンヌと「ステイルさんじゃないの?」と母親の腕の中で尋ねるステラだが、しかしジルベールにはしっかりと今のステイルもまた見覚えがあった。


大丈夫だ、と妻と娘に告げながら向き直ったジルベールは全く別の部分で焦燥する。

突然呼び出されたことではない。昨日と、そして今日。どちらにしてもここでステイルに呼び出しを受けるなど不穏しか覚えない。しかし、プライドが自分を呼んでいると聞けば選択肢など決まっている。

一拍遅れ、自分の姿がと思い出したステイルもジルベールではなくマリアンヌ達に視線を向けて笑顔を作る。「突然申し訳ありません」と苦笑ぎみに笑いながら、深々と礼儀にそった礼をする。


「ご安心ください。僕です、ステイルです。少々事情がありまして、母上達から許可を得て訪れました。申し訳ありませんが、ジルベールを今夜お借りできますか?」

「ステイル様、一体何事でしょうか。もちろん、私にできることであればお伺い致しましょう。まさか、プライド様の身に何か……?!」

「安心しろ、御無事だ。ただし、大変お怒りであらせられる。姉君だけではない、母上とヴェスト叔父様にティアラ。父上もきっと同様だろう」

なっ……?!とジルベールは息を飲む。続けてステイルから「もちろん俺もだが」と付け加えられれば、城を後にしてから一体何があったのかと考える。城の上層部ではあるが、城には住まず城下に屋敷を構えているジルベールには城の騒ぎも伝わりにくい。


マリアンヌ達に向けた笑顔から、再びジルベールに向けて無表情に近くなるステイルは眼鏡の黒淵に指を添えながら敢えて平坦な声を選ぶ。

ジルベールから了承を得た今、このまま有無も言わさず連れていくことも可能だが、お腹に子どもがいるマリアンヌと幼いステラを前にそれはやめておきたい。まずはしっかりと彼女達にも了承を得てから連れて行かなければ、姿が別人の自分にジルベールが連れていかれたと錯覚されかねない。

一体何がと尋ねるジルベールに、今度はステイルも少し悩む。適格な一言は浮かぶが、それをジルベールには良くてもマリアンヌとステラには聞かせたくない。

仕方なく指先を曲げてジルベールを呼ぶと、そのまま指の動きの動作だけで耳を傾けさせた。自分に歩み寄り、耳打ちと受け取り顔ごと傾けたジルベールにステイルはそこで決めていた言葉を囁いた。


途端にジルベールの切れ長な目が限界まで見開かれ、そして一瞬だけ鋭く研ぎ澄まされるのをステイルだけでなくマリアンヌも見逃さない。

妻と娘の手前、殺気は隠し眼差しを戻したジルベールはもう全てとは言わずとも大方の状況だけは理解した。プライドは無事であり、そして今自分がどうして呼ばれたかも理解すればもう焦ることはない。

「承知致しました」と、ステイルから一歩離れ深々と腰を折り礼をする。その動作を見たステラも、そこでやっと姿は違うその青年が「ステイルさん」の変装だと子ども心に思うようになる。常に物腰の柔らかい父親だが、その父親が特に礼儀を示す相手の一人だ。

くるりと自分達に振り返る父親は、ステラの目にはもう焦燥を感じられないいつもの落ち着いた笑顔だった。「大丈夫だ」とまた一言自分達を安心させてくれてから、足音も立てず歩み寄り母親ゆずりの髪の頭を撫でてくれる。


「すまないね、マリア、ステラ。急な仕事のようだ。プライド様に会ってくるよ」

「気を付けてね、ジル。……ステラ、父様お仕事だからおやすみなさいしましょう?」

「とーさまお休みなさい。ステイルさん?今度はいつものお顔で来てね」

プライドという言葉にマリアンヌも夫を送り出すことには迷いがない。ステイルやプライドの呼び出し事体は今回が初めてではない。どうやらステイルも本物のようだと、その様子からも察せればほっと息を吐けた。

隠し事が上手い夫だが、彼が本気で追い詰められているかどうかは顔を見ればちゃんとわかる。今は大丈夫だと、彼の頬にそっと触れながら確かめた。


夫をよろしくお願いしますとソファーから礼をするマリアンヌと、その腕の中から小さな手をひらひら振るステラにステイルも今だけは心からの笑顔で返した。ステラの言葉にはつい笑ってしまいそうになる。「約束する」と柔らかな声で返せば、パッと輝いた笑顔のステラから「ステイルさんだ!」と母親にも教えるようにはしゃいだ声を上げた。

「では行ってくる」「おやすみ」と、妻と娘の額へ順番に口づけを落としてからゆっくりとした動作でジルベールはステイルの元へと歩み戻る。


「なにか必要な物は?」

「お前の頭だけで良い」


最低限の会話の直後、二人は同時に姿を消した。

二人が消えた場所へ、母親から手を離されたステラがぱたぱたと歩み寄るくるりと回る。

父親との時間が中断されたことは残念だったが、同時にせっかく遊びにきてくれたステイルと遊べなかったことにも小さく唇を尖らせた。



……




「本当にこんな夜遅くにごめんなさい、ジルベール宰相……」


とんでもない、と。にこやかな笑みで返してくれるジルベール宰相に反し私は肩も頭も背中ごと丸まってしまう。

食堂での夕食が終わってから私達は場所を変え、今は客間の一つに集まっていた。ステイルも私から許可を得てティアラと会い、そしてすぐジルベール宰相を瞬間移動して連れてきてくれた。……一応、今回はティアラのこともジルベール宰相とお話することも母上達からも許可を得た分、堂々としたものだ。


ただ、ジルベール宰相もやはりお家に帰った後だったらしく普段着だったのが余計申し訳なくなった。

本人は寝衣ではないからと言ってくれるけれど、もう宰相モードじゃない時にお呼び出し感凄まじい。ステイル曰く「姉君の呼び出しで即答でした」ということで、確かにティアラとの用事も含めてもステイルが帰ってくるのはものすごく早かった。ジルベール宰相が「夜分遅くに失礼いたします」と優雅に挨拶してくれたところで、もう既に切れ長な目が鋭く光っていた時はどっきりしたけれど、こそこそステイルに尋ねればやはり急なお呼び出しの方ではなく事情を聞いてからのお怒りらしい。

マリアとステラもいる前で、必要最低限の用事として「闇オークションを潰したい」と耳打ちしたらがっつりお仕事モードになってくれたと。うん、まぁジルベール宰相がお怒りになるだろうことは想像できたけれども。

一番広めの客間を用意したのに、お陰で今はなかなかの人口密度具合だった。温度感知の特殊能力者である騎士のロドニーは部屋の外から見張ってくれているけれど、それでもヴァルや近衛騎士達にレオンとセドリック、そしてステイルとジルベール宰相と大賑わいだ。


「プライド様のご無事をこの目で確認できたことが幸いなくらいです。今日も危険な目には遭いませんでしたか?ご無理などまさかされてはおられないと思いますが」

「え、ええ。昨日はびっくりさせてしまって、改めてごめんなさい。お陰で今は大丈夫」

「ジルベール宰相、今説明をする。時間がないから手短に理解してくれ」

瞬間移動してきた時の鋭さが嘘のように、眉を垂らして低い姿勢で笑いかけてくれるジルベール宰相にステイルから切り込みが入る。レオンの手前、いつもよりはジルベール宰相への口調が柔らかい方かしら。


ええ勿論、と。私に挨拶をしてすぐステイルへと向き直るジルベール宰相は、再び表情が引き締まっていた。もう聞く前からいくらかは覚悟も想定もしているのだろう。「闇オークション」と聞けば、もう穏やかではない話題であることは間違いないもの。

ステイルのジルベール宰相への説明中、騎士達だけでなくレオンとセドリックも一言も発しなかった。状況をもう一度確認するようにステイルの話に耳を澄ましているのがわかる。猶予がない今、のんびり談笑する暇はない。

近衛騎士達だってずっと私の傍にいてくれるけれど、廊下の向こうでは騎士団長の元、騎士団の慌ただしい足音も遠く聞こえてくる。私達が食堂が出た時にはとっくに騎士団長が騎士達を一か所に集合させていたから、これから作戦会議や各任務指示も入っているのだろう。こういう時、仕方ないとはいえ各隊を指揮する隊長格だけでなく作戦指揮担当の三番隊の騎士隊長のカラム隊長までこちらに付いてもらっていることが申し訳なくなる。

騎士団長だってカラム隊長の意見も欲しい筈だ。通信兵はいるし、副団長とも相談したりしてるかもしれない。


少し肩を狭めてしまいながら思うまま背後に立つカラム隊長へ目を向ければ、すぐに視線に気づかれた。

目が合った途端、私が眉が垂れてしまっていたせいか無言のまま察せられたように小さく笑みで返された。「お気になさらず」と言ってくれているのがその優しい笑みでわかる。

さらにカラム隊長の動作に気づいたように、アラン隊長も手を振ってくれて、エリック副隊長も笑んでくれて、なんだか本当にみんなが気を遣ってくれているとわかる。

アーサーがぱちぱちと大きく瞬きしながら「どうしました?」と小声とはいえ言葉で尋ねてくれ、なんだか私もフフッと笑ってしまった。一番隊と八番隊に至っては隊長も副隊長も留守なのに、落ち着いているのがやっぱり騎士団長か部下達を信頼しているのだろうなぁと思う。母上のところにも騎士隊長が二人もずっと付いているし、こういう時信頼できる騎士団長や優秀な騎士達ばかりという事実は心強い。


「──つまりは、ミスミ王国会場地下で行われる闇オークションを国王から正式な許可を得次第殲滅。違法商品とそして奴隷達を我が国の民か関係なく全員確保する為にお考えになられたその策を、私からの意見させていただければ良い。ということでよろしいでしょうか」


…………早い。

ステイルの説明が途中だったにも関わらず、見事に必要事項を理解してくれた。

ステイルにも想定以上に早かったのか、一瞬眉が上がってから次に狭まった。眼鏡の黒縁を指先で押さえながら「その通りだ」と答えた時もちょっと悔しそうだ。

さらさらと文字でも読み上げるようなジルベール宰相は、そこでステイルの策についても確認していく。既に母上達に許可を得たと聞いたからか「では隠蔽の必要はありませんね」と言っちゃうからセドリックが少しびっくりしたようにジルベール宰相とステイルそして私を交互に見比べた。……うん、想像の通りです。

ジルベール宰相には本当に昔から母上達にバレないようにも協力してもらってきたから、今回はそれだけでもジルベール宰相にとって難易度は下がっている方なのだろうかとか考えてしまう。

ジルベール宰相が一つずつ状況に応じての対処法を確認してはステイルが答えていく。ところどころまだステイルも説明していない内容も大前提のようにして話を進めるから、もうなんだか最初からずっといたかのような感覚まで覚えてしまう。いや絶対いまさっき駆けつけてくれたのだけれども!!


「なるほど。それで、その重要な役目を任す一人はやはり……?」

「ああ。まだ本人から了承は得ていないが。今、これからするところだ」

ジルベール宰相の問いに、ステイルも腕を組む。二人が誰のことを話しているかは私も当然わかってしまい、肩が思い切り上下した。

ジルべール宰相達が同時に向けた視線の先に、私も身体ごと正面を向ける。私だけではない、騎士達もレオン達も全員が一か所に視線を集中させれば、向けられた本人も気づいたように視線を上げた。会話に参加せずとも、床に座って足を組んで荷袋を立てかけたまま壁に寄りかかっている一名、ヴァルだ。


母上達への報告でも、食堂でもこの客間でも部屋の隅に無言を通しつつもずっと付き添ってくれていた彼は、ジルベール宰相が現れてからも一言も発しないままだった。

寝てはいなかったけれど、多分話も聞いていなかったのだろう彼は私達の視線が集中したことでやっと「アァ?」と一音をこちらに返した。早くも顔を顰めているから、何を話していたかの想像はついているのだろう。……母上達の前でステイルが提案した時も、あの顔は絶対自分にお鉢が回ってくると気取っていた。

指名はされずとも、なんだかんだ彼もステイルとの付き合いは長い。さらにはステイルの策を聞いてから、レオンとセドリックも予想はできていたように意外でもない表情だった。

「……また面倒ごと押し付けようってか?」

「お前にしては察しが良くて助かる。闇オークションに、捕らえられた被害者がいることは間違いない。ミスミの国王に許可を得てからでは手遅れになる恐れも」




「でぇ?俺様に〝奴隷商品〟として潜入しろってか?」




ふざけんな、と。舌打ちとともに悪態吐いたヴァルは、凶悪は顔つきをさらに歪めてステイルを睨んだ。



「バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~」 略して「バドいち」連載中です。


本日更新致しました!!!


第二章まで完結しました。

ncode.syosetu.com/n9682ly/

こちらも是非よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ