表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2329/2329

Ⅲ277.来襲侍女は苛立ち、


ああもう腹立たしい。


「姉君、大丈夫ですか?……プライド?」

むううううううぅぅと、自分でも鼻の穴が膨らんでいるのがわかる。口だってへの字だし、眉間にも力が入って仕方がない。母上に報告と許可を得て廊下に出た途端にこれだ。

私を心配して呼びかけてくれるステイルが、こそっと耳元で囁いてくれたところで慌てて表情筋全部を持ち直した。母上達の前で気を張っていた分、退室したところでうっかり顔に出てしまった。

「大丈夫」と言いながら両手で自分の頬を挟みぐりぐりとマッサージするようにほぐし押さえつける。城だったらせめて自室までは我慢できたと思うのだけれど、今は自室でのんびりなんてできない時だから余計我慢できなかった。この後はセドリックとレオンが待ってくれているという食堂だ。


無事レオナルドの救出とオスカーの保護を成功させた私達は、母上達の宿へ遅い帰宅を果たすことができた。

流石に奴隷収容所に派遣されていた騎士の一部はまだ出動中だったりと忙しく働いていたけれど、それでも夜遅い時間の帰還になったことは違いない。騎士達が報告してすぐ母上達からも直接会う許可をもらい、部屋に訪問し報告した。……までは良かったのだけれども。


「ごめんなさい……。……闇オークションだなんて。なんか、いろいろあったせいか、余計に腹立たしく思えてきちゃって」

「無理もありません。あの兄弟に関わるとろくな目に遭わないと俺は思っています」

確かにね、と。ステイルからの含みについちょっと笑ってしまう。頭を片手で押さえながらもお陰で少しだけ肩の力が抜けた。途端にステイルがちょっと笑ってくれたから、多分私の顔がそれだけ疲れているか不機嫌だったのだろうなと思う。

エルド……エルヴィンとホーマーに関わって以来の苛々じゃないかと自分でも思う。いやセドリックの初対面時期以来かも。今回は多分あの二人が悪いわけではないし、計画犯はレオナルドだけれどエルドに関わるとろくなことにならないとは八つ当たり半分にちょっぴり思う。オスカーをボッコボコにしたのもエルドだもの。


食堂に行く前に一度着替えましょうと、廊下で待ってくれていた専属侍女のマリーとロッテに私も笑みで一言返す。これから遅い夕食も込みだし、水浴びまではいかずとも汚れた格好ではいられない。

宿に戻ってからとうとうネイトのゴーグルは完全に外していて、ステイルなんてさっそくいつもの黒縁眼鏡だけれども、着替えも必要だ。アラン隊長達も無傷とはいえレオナルドとの戦闘もあった後だし、食堂の前に身嗜みを整えたい部分もあるかもしれない。……お昼と同様、母上達の御前にも構わず付き添ってくれたヴァルは絶対服装なんてどうでも良いだろうけれども。


着替えの為に寝室の方へ移動した私は、身嗜みを整えながらもやっぱり思考は回り続けたままだ。

帰りが遅くなったことを謝罪しつつ理由も含めて闇オークションについて報告した結果、母上とそしてヴェスト叔父様は…………すっっっごい怒ってた。

あれは間違いなく、絶対に。いつもは素になるどころか、表情も滅多に崩さない母上が近衛騎士のブライス隊長とケネス隊長の前ですごい覇気で、うっすら青筋も立てていたような気がする。口だけは優雅さをを守ったまま目が笑っていないから、普通に険しい表情をしていたヴェスト叔父様よりもはるかに怖くって私もその時だけは自分の怒りも忘れたほどだった。

ヴェスト叔父様と母上二人合わせてのあのお怒りはもう威厳というよりも殺意だった。

当然だ、我が国にとって〝人身売買〟と〝闇オークション〟は地雷だと私も思う。フリージア王国の民がほぼ確実に巻き込まれている存在だ。


今よりも治安が悪い昔なんて「特殊能力者を仕入れたら奴隷オークションを開催できる」なんて不愉快この上ない事実が有名だったくらいだ。しかも奴隷国ではない、我が国で。

ラジヤ帝国に我が国の民を奴隷として売買することを禁じたのは最近だけど、我が国内でも奴隷売買する組織や市場が今と比較にならない規模であった時代もある。……というか、わりと数年前までは城下でも常に問題の一つとして提言されていたくらいの頻発っぷりだった。ジルベール宰相が一度一斉清掃で根絶してくれてからは激減したけれど。


そして、騎士の目も多い城下から離れた地域ではこっそりそういった違法に捕まえた我が国の民を奴隷として競りにかけていた事例もある。奴隷を容認していな我が国で〝闇オークション〟と呼ばれる忌むべき商売だ。

盗品や死体、そして奴隷を競売にかけて裏稼業達で取引するオークションは規模が多い分、主催側も執り行うことが難しいけれどその分利益もその比じゃないからいくら潰しても根絶は難しいと子どもの頃に教師から習った。たとえば特殊能力者がオークションに掛けられたら、奴隷市場で売る相場の十倍の値はするらしい。だから騎士に見つかる危険を鑑みても利益を考えて行う人身売買が後を絶えなかったと。…………そ、れでもジルベール宰相の掃討作戦が行われてからはめっきり聞かなくなったのに!!!


もう、本当に、久々に聞いた単語だから余計に私も母上もヴェスト叔父様も腹立たしかったのだと思う。我が国では聞かなくて済んだ単語をラジヤで聞くなんて。いや行われるのはお隣のミスミ王国ですけれども!!!!!!


「ミスミ王国で。しかも僕らのオークション会場の真下で。…………それはフリージア王国としても捨て置けないだろうね」

「信じられん。ミスミ王国は奴隷の売買は禁じられている。何故このラジヤの支配下ではなく、中立を主張したいミスミ王国で行う必要がある?」

着替えを終え、食堂で待っていてくれたレオンとセドリックに合流した。二人とも既に夕食は終えていたけれど、私とステイルの夕食に付き合う形でテーブルの向かいで話を聞いてくれた。

食事中である私とステイルの代わりに、自分から手を挙げてくれたカラム隊長が事情を説明してくれた。夕食の代わりに軽食とワインが目の前に置かれたレオンとセドリックだけど、二人とも聞き終わるまでまったく手についてなかった。お酒の肴にするには不快かつ消化不良を起こす内容だから仕方がない。

料理は美味しいけれど、なかなか味を頭が拾えたなかったのはステイルもきっと同じだろう。私より一足先に食事を終えたその口で最初の発言から声が低かった。商品の搬入に王侯貴族が行き交っても不自然に思われない、大きな催しに紛れ込むことでバレにくくする利点があるとステイルからもセドリックへ並べ立てた上で、「あくまで可能性だが」と黒い気配まで溢れ出していく。


「ミスミ王国の立場、もしくはその中立を崩したい可能性もある。それに貧困街の情報では〝奴隷オークション〟ではなく〝闇オークション〟だ。このラジヤの地であろうとも違法となる物品が取引されるのならば、奴隷容認国か否かすら関係ない。大事なのは〝開催者と参加者の安全〟だ。参加者全員が裏稼業だけではない、表向きの立場もある人間である場合もある」

たとえば、と言いかけたステイルはそこで不自然に口を閉じ、苦し気な表情で首を振った。

口には出さないでくれたステイルだけど、きっとこの場の全員が言おうとした言葉をわかっている。昨日、私がティペットが目撃したばかりだ。…………ラジヤ帝国の皇太子、なんてその存在を過らせない人はいない。きっと母上とヴェスト叔父様も報告を聞いた時点で想定している。

せっかくステイルが気を遣って言葉にしないでくれたのに、勝手に自分で思い返せばぞわりと肩が震えた。食器を鳴らしてしまいそうになり、歯を食い縛ってなんとか事なきを得た。

まだ最後の一口残っているのに、一度置いてグラスに逃げる。ああ本当に、本当に私はこういう時駄目だ。一口飲みこんだ後も、テーブルの下で自分の両手首を握って呼吸を意識的に整える。途端に向かいの席に座っていたレオンから「大丈夫かい」と声をかけられた。

一言返してなんとか笑っても、やっぱりまだちょっと指先が震える。


「ごめんなさいレオン。アネモネ王国にとっても大事な催しを前にこんなこと……」

「君が謝ることじゃないさ。憤りを感じるのは僕らと同じだろう?君らにとっても大事な催しでもあった筈だ」


本日2話更新分、次の更新は5日の予定です。

5日も祝日ですが、アニメ放送の宣伝も兼ねます。

その場合、5日の次の更新は8日予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ