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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ274.来襲侍女は聞く。


……流石過ぎる……!!


「お疲れ様です……」

そう、プライドはわかっていた筈なのに心の内で叫ぶ。

チートな特殊能力を持つ攻略対象者を相手に、三人がかりでとはいえ無傷で完全勝利を収めた騎士達に畏怖まで覚えてしまう。それほどまでに、圧倒的過ぎた。

少なくとも体感で判断すれば十分も掛かっていなかった。ハリソンが飛び出してから、レオナルドが騎士三名により戦闘不能を陥らされるまで目で追うばかりで終わってしまったのだから。

結果として廃墟が一つ、屋根の一部を損傷もう一つが屋根を丸ごと潰したが、レオナルドの翼には傷一つない。ハリソンが剣を出した時に青ざめたプライドも、まさかその後にカラムの容赦ない三連打で更に血の気が引くことになるとは思いもしなかった。

そして、結果をわかっていたプライドよりも更に顔を蒼白させ言葉も失い騒然としたのは、貧困街の住民達だ。決着が着いて尚、誰一人目の前の現象に言葉が出ない。


騎士達に拘束され抱えられてきた男は、見間違いようがなく自分達の首領レオナルドだ。

彼の強さは全員が知っている。騎士三名との戦いを見ても、レオナルドが弱かったとは思わない。ただただそれ以上に騎士達が強すぎた。化け物、と首領に対しては決して使わない言葉を三人の騎士へ浮かんで消えない。今も平然としているどころか笑みまで浮かべる余裕さで「お待たせいたしました」と言う始末だ。

廃墟はどうでも良い。もともと移り住んだばかりの土地で、自分達の居住範囲は土埃を被った程度で被害はない。しかし、そんなことよりも自分達にとって唯一の守護神とも言えるレオナルドが敗北したことに動揺が隠せない。首領の敗北姿自体、目にしたことがなかった。

たとえ奴隷狩り集団に襲われようとも一人で全員返り討ちにするのが自分達の首領だ。それをたった三人の男相手に敗北したことに今も瞼を無くし疑う。

そんな住民達の困惑を理解した上で、ステイルは一歩前に出る。


「お疲れ様でした。皆さんお怪我はありませんか」

「ああ全然ないです!……けどこっちの方が、ちょっと……。ハリソンがやらかしまして……」

あはは……と、さっきまではさっぱりとした笑顔だったアランの顔が途中で苦く、笑い声が枯れていく。

視線の先ではカラムに抱きかかえられたレオナルドがぐったりと力なく気を失っていた。戦闘をずっと見守っていたプライド達も、アランが言わんとしていることはわかる。レオナルドの元々負傷していた箇所に向けての一撃には、プライドとステイルだけでなくアーサーとエリックも思わず顔を引き攣らせた。あれは痛いでは済まないと、全員の総意だった。

戦闘としては正しいが、命のやり取りをしない場では騎士としてなかなか躊躇う筈の戦闘方法である。

意識を奪うまで強打したのはカラム・ボルドーだと、ハリソンは頭には浮かんだが口を閉じたまま目を逸らす。自分の攻撃が最も後に響くであろうことはハリソンもわかっている。


「これから一度診ようとは思います。が、…………いつ目を覚ますかは………」

推測しかねます、と。カラムの方が申し訳なさそうにそこで眉を垂らす。アランも横で頭を掻いた。

敢えてレオナルドを昏倒させたカラムだが、それだけであれば少し横にすれば目を覚ます筈だった。レオナルドの強固な翼が背面から彼を守ってくれることも折り込み済みで背面は強めに、そして翼で覆おう時間も与えなかった前面は折れている箇所も含まれていた為特に加減した。しかし、気を失っただけではなく折れていた骨をさらに突かれた状態を思えば、レオナルドがいつ目覚めるかはわからない。

こういうことがあるから事前に打ち合わせが必要だというのにと思うカラムだが、それを今更ハリソンに言う気はとっくの昔に潰えている。もともと個人判断の八番隊だ。

意識を奪うことが彼を止める必須条件と判断したからとはいえ、やはり二回打ち付けた時点で止めておくべきだっただろうかと静かに省みる。しかし、カラムにはどう考えても彼が説得に応じるようには思えなかった。

無傷での快勝を収めたにも関わらず、申し訳なさそうにもする騎士達にステイルは「問題ありません」と眼鏡、を直そうとしてゴーグルの淵に指先で触れてから摘まみずらし、位置を直した。


「レオナルドは我々の手の中なのですから、彼に詳細を聞いたであろう幹部達から聞いて判断すれば良いだけの話です。…………ですよね?」

エルド、と。任務を無事果たしてくれた騎士達に向けた声とは異なる、低めた探るような声でステイルは別方向へと振り返る。

首領が奪われたにも関わらず声を上げるどころか口がぽっかりと開いたまま一歩も動けない住民達の中、敵意に満ちた眼差しで自分達を睨みつけてくる二名だ。エルドと弟のホーマーだけはこの結果もプライド達と同様に勝負が始まる前から予想できていた。

アネモネ王国の元王子である彼らは、騎士団の驚異を嫌でも知っている。だからこそエルドに至っては戦闘を始める前にレオナルドを一度は止めようとした。


投げかけられた言葉に返事をせず、歯噛みし睨み付けるエルドは拳を握る。幹部も住民達も全員が自分を注視している中で容易な発言はできない。周囲の目と、そして恐らくは貧困街の誰よりも今の状況くらいは理解できているのだろうエルドに、ステイルはにこりと笑う。社交的にも見えるその黒い笑みに、プライドは小さく肩が跳ねた。

手の先でカラムに抱えられるレオナルドを示しながら、彼が決断をしやすいようにステイルは言葉を選択する。


「お話頂けないのであれば、残念ですが彼はこのまま現行犯として騎士達が連れて行かざるを得ません。檻の中でも話はできますから」

脅迫。その言葉がプライドだけでなく騎士達全員の頭に過ぎる。完全に人質を取った側の揺さぶりに、アーサーは思わず喉から太い音を鳴らした。

すかさずエルドから「それならこっちも」と提示しようとしたが、「残念。もう連れ帰りました」と言い切る前に返される。自信たっぷりに断言するステイルに、エルドも顎に力が入った。

毒の主犯である少年が今この場にいないからと考えたが、既に回収された後だったと知る。レオナルドを連れて訪れた時よりも騎士の人数が一名減っていたこともエルドは気付かなかった。もともと訪れた時にも人数を覚えていない。


「どちらにせよ、このまま僕らか彼を捕縛すれば全面戦争も不可能です。一先ずは首領テントで平和的にいきましょう」

今度はこちらが人質で揺さぶる番だと、ステイルは静かに眼差しを鋭く笑う。もともとはオスカーをこんな時間になるまで引き渡さなかった彼らの落ち度である。

レオナルドを連れ帰った時に素直に返していれば、こんな計画を知られずに済んだ。判断が遅く、往生際が悪い。絶対に自分だけが損をしたくないという考えだけだからそうなるんだと、元王子である彼に言い放ってやりたいのをステイルは理性で止めた。今、彼の過去は関係ない。もう王子ですらないのだから。


ステイルからの提示に「クソッ」と呟くように吐き捨てたエルドは、そこで風を切る。首領テントの方へ向き直ったところで、視界に入る住民達へ向け「どけ!!」と声を荒げた。

数時間前まで首領だった男の怒鳴り声に、茫然自失状態だった住民も蜘蛛の子を散らすように彼の視界から避けていった。そのまま何も言わずズンズンと大股でテントに進み出すエルドに、ステイル達も確認をせずに着いていく。すぐ傍にある首領テントへ辿り付くまでも、横切る度に住民から「レオナルド」「首領」と嘆くような按じる声が聞こえれば、カラムとアランだけでなくプライドも良心がチクチクと痛んだ。一時期は色々話を聞かせてくれた女性や子ども達にどんな目を向けられているか、確かめるのも怖くなり意識的にエルドの背中に視線を固定し続ける。


「…………因みに、その怪我は一体」

「こっちの都合だ女は黙ってろ」

ふと気付いたことを尋ねれば、無視ではなく早口で突き放された。

返事を得たことに両眉を上げるプライドも、それ以上は言及しない。手の甲で血の痕を乱雑に自分で拭うエルドの背中を見つめながら、周囲の幹部と見比べた。ざっと見ただけでも怪我をしていたのはエルドだけ、他の幹部には新しい傷は見当たらない。幹部達もホーマーと同じくエルドの傍に付き従うように並び歩くが、視線はレオナルドにではなくちらちらと盗み見るようにレオナルドの方に向いていた。


首領テントへ足を止めることなく入れば、プライドとステイルの護衛にカラムとアーサー、ロドニー以外がテントの外に控えるが、今回はテントの外から堂々とアラン達も顔を覗かせ様子を伺った。

レオナルドを最初に寝かせていた時と同じ場所をエルドは指で差し示す。早速人質を手放す行為にも近いが、ステイルもプライドも互いに目を合わせステイルがカラムに合図する。もともと本格的な人質にするつもりはない。診断する為にも彼を一度横にする必要もある。ただでさえ重傷者だ。


二人の許可を得て、カラムは慎重にレオナルドを寝かせた。

それに合わせ、彼を隔てた先にエルドも腰を下ろす。床となる絨毯の上に直接足を組む彼に、プライド達も腰を下ろした。もともと包帯と露出が多い彼をカラムが改めて簡単な診察を行う。命に別状はないが、傷が抉れ重傷。明日の昼までは目も覚さないだろうと診断までは包帯の上からも簡単だった。

幹部から差し出された濡れ布を受け取るエルドに、ステイルは黙秘も今回は良しとしない。むしろプライドが発するよりも先に主人役の自分が言わなければならない。


「それで、どういうことでしょうか。こちらも決断まで時間がありませんので、要点からお願いします」

明日には国を出ていく以上、オスカーもレオナルドも確保した今自分達に弱みはないと言わんばかりに胸を張るステイルにエルドも苦々しい表情を浮かべた。

乾いた血でべっとり汚れた顔を拭いながら顔を背けつつも、その目はしっかりとステイル達へ固定される。「首領が言っていたことを話すだけだぞ」と断り、どうぞと冷ややかな眼差しでステイルに先を促された。


「……首領が奇襲。混乱に乗じて逃がした奴隷を俺達幹部を含める一部の人間が誘導し、貧困街で匿う命令だった」

「人身売買と聞きましたが、レオナルドを捕えていた奴隷商なら既に壊滅しています」

当たりをつけたステイルの一言に、エルドだけでなく幹部達もぎょっとなる。レオナルドを連れ帰った時点で何事もなかったわけではないと想像できたが、壊滅と言われれば耳を疑う。たった数時間でフリージアの騎士団がどこまでやったのかと想像では賄えない。

しかし、今は言及するところではない。短く首を振り、エルドは拭い終えた布を背後に投げ捨てる。


「首領がその程度で満足するわけねぇだろ」

「その程度?」

今度はステイルの方が耳を疑い眉を寄せ、プライドも瞬きを繰り返す。

その程度、と呼ぶには違和感がある。少なくともこの地で最大規模の奴隷収容所で、その壊滅だ。だからこそ貧困街もレオナルドを取り戻すことを諦めるしかなかったとエルド自身が語っていたこともプライド達は記憶に新しい。にも関わらず〝その程度〟と銘打たれれば、それ以上何があるのかと疑問も浮かぶ。

アーサーも首を傾ける中、どうみてもエルドが見栄を張っているようにも見えない。取り繕いは感じない。

アラン達も騎士同士目配せし合う中、エルドは「捕まってる間に知ったんだろうな」とどこか投げやりな口調で幹部達へ視線を向ける。


「標的はこの国でだけじゃねぇ。……こっちも情報を集めてたから耳には入ってた」

チッと舌打ちまじりに吐き捨てる。

エルドの言葉に、ラジヤ帝国の属州に住む彼らが複合的な国の存在を仄めかすことにプライド達の胸が早くも騒ぐ。ラジヤ帝国というだけでも不快で厄介だというのに、他にどんな国が関わっているのかと各々が思考を巡らせる。まさか属州国だけでなく、本国までもと



「ミスミ王国」



は、と。

その国の名が出たところでプライド達は一音漏らすか息を飲む。

想定しなかった国を出され、プライドも大きく目を見開いた。何故そこで、その名が出るのかと前世の記憶も含み思考を巡らせるがやはりわからない。ラジヤの一角にいる貧困街が異国に仕掛けるならば本当にそれは戦争の引き金にもなりかねない。ただ一つ、疑問も過ぎる。

この地の隣国にも相当するミスミ王国で人身売買は認められていない。奴隷容認国ではあっても、売買は禁じられている。

多くの情報に頭が混乱するプライド達へ、エルドはそこで静かに上目で覗くように見据えた。

「貴様らも、そこに用があってここに滞在したんだろ」

「……何を誤解なさっているかわかりませんが。我々商会が用があるのはミスミ王国のオークションです。人身売買と関係は」



「そう、その〝裏〟だ」



初めて、エルドの言葉がステイルを上塗り上回った。

言葉を遮られ、それも気にならないほどにステイルは目を見張り言葉どころか呼吸を止めた。裏という含みに、王国一番の頭脳を持つ王子は恐ろしくその先が読めてしまった。まさか、とその言葉も躊躇うほどに考えたくはない事実が浮かぶ。確信にも近い、濃い色に。

顔色を変えたステイル達に、エルドも今は満足もしない。やはりなと、彼らがミスミ王国で行われる大国最大規模のオークションに関わるであろうことは想像できていた。時期と、そしてフリージア王国の騎士まで連れてくる商人であろうとなかろうと。こんな安い地に訪れる理由など、限られている。

ミスミ王国でも、そのオークションでも、人身売買が禁じられていることはエルドだけでなく貧困街の人間も知っている。しかしその〝裏〟についても知っているのはただ単純に、彼ら貧困街がちょうど情報を集めていたからだ。奴隷収容所に売られたレオナルドが、一体どこに流されていくのかを。






〝闇オークション〟






その悍ましい言葉がエルドの口から放たれた瞬間、第一王女の眼の色が紫から赤黒く燃え出した。


「バッドエンドから一年後~誰にも期待されない魔法使いの私が、伝説の精霊魔法使いに実力を認められ王子を救う~」 略して「バドいち」連載中です。


ncode.syosetu.com/n9682ly/


本日更新しました!!

こちらも是非よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
「闇オークション」 やはり、これ来ましたね。 あと、 「視線はレオナルドにではなくちらちらと盗み見るようにレオナルドの方に向いていた。」 ↓ 「視線はレオナルドにではなくちらちらと盗み見るようにエル…
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