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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ244.来襲侍女は戸惑い、


「急げ!!!」

「馬鹿クソそっちじゃねぇこっちだ!!武器根こそぎ持って来い!囲め囲め!!」

「ガキ共邪魔だ!!家入ってろ!!」

「おい!もう備蓄ねぇのか!!」

「あるわけねぇだろ死ね!!」


午前、いっそ早朝と言ってもギリギリまかり通る時間に訪れた私達は思わず足を止めた。

商人として借りた宿に瞬間移動してから、すぐに行動を決めた。ステイルがジルベール宰相とも通信兵を介して相談してくれて、完璧な行程表を地図に書き込んでくれていたから迷う必要もなかった。

最初に挨拶を済ませたら、残りは奴隷商や奴隷市場を中心に回るだけだ。騎士達が今も変わらず街中を巡回と捜索に当たってくれているし、私達はこれ以降別行動も許されない分行動もシンプルだった。そして今は一番最初の予定を済ませるべく足を運んだところだ。

治安の悪い通りで誰に目を付けられることもなく目的場所に辿り付いたから、パッと行ってパッと誰にも気にされずさらっと帰るつもりだった。朝早くからご迷惑とは思ったけれど、それ以上に今の私達には人目に触れず目立たないことの方が最優先だ。

予定をずっと気にするよりもさっさと済ませた方が私達も気持ちと時間に余裕を持って行動を進ませることができる。……と、思ったのだけれど。


「……凄まじい騒ぎですね」

「今まであんま実感なかったけど、貧困街ってこんなに人住んでたんですね」

「何かあったのでしょうか?」

棒立ちになってしまう私の前でステイルが呟けば、応じるようにアラン隊長とエリック副隊長も周囲を見回した。温度感知の騎士も護衛するべく僅かに身構える中、ハリソン副隊長は半分剣を鞘から出していた。アーサーがそっと私の隣で肩が触れるくらい距離を詰めてくれる。


貧困街。今回、私が最後の立ち寄り先として選択したのがここだった。

一番お世話になったケルメシアナサーカス団にも挨拶に行きたかったけれど、一応一度はサーカス脱退でご挨拶したことと昨日のこともあるから今回は諦めた。代わりにカラム隊長に行ってもらった。私達が明日でこの地を発つことと、ご迷惑をおかけしましたの旨だけでも団長にお伝えして貰うようにお願いした。カラム隊長ならきっと上手く話してくれるし、……先生の保釈金も渡して貰わないといけないから。

それが今も捕らえられているだろう先生と団長との約束だ。

正確にはノアは保釈されることよりも、団長が自分の為に文無し散財することを恐れているようだったけれども。ゲームではティペット至上主義しか描かれていなかった彼が、数少ない困らせたくない人とそして帰る場所はこの先も維持して欲しい。私の所為で手放して欲しくもない。

カラム隊長もお願いしたら即答で任されてくれたけれど「なるべく迅速に合流に努めます」と真っ直ぐ私に目を合わせて、いつもより強い声だった。

きっとカラム隊長も傍に離れるのを心配してくれているのだろうなと伝わった。

ステイルも「もし合流が難しい場合は合図を」とカラム隊長に合図の許可も出していた。アーサー以外に緊急時でもないのにそう言うのはちょっと珍しい気がする。……いや、今が緊急事態ということだ。

カラム隊長に、こちらも貧困街とその後に回る奴隷市場の経路は伝えた。貧困街とサーカス団は距離も遠くないし、合流するのはそう後のことにはならないだろうと思ったけれど。……こんな大騒動でなければ。


目の前では貧困街の住人で一人として落ち着いている人はいなかった。

ネイトのゴーグルを掛けていなければ、私達大勢の来訪に一人か二人かは振り返っていたかもしれないけれど、ゴーグルなしがヴァルとエリック副隊長と温度感知の騎士の三人しかいない今の状況では気にも掛けられない。元サーカス団の面々も全員サーカス団に戻った今、余計に取り付く島もなかった。


男達が一方向に武器を掲げて駆け、外に出ている子どもを乱暴に近くの家へ突き飛ばしたり家の中から女の人が引っ張り込む時もある。

今日まで何度か訪問した時はあるけれど、なんとなく閑散として女性と子どもが歩き回っている印象の方が強かったから、男の人が大勢走り回っているだけでもなかなか圧倒された。朝早い時間だしまだ男性達が出払う前だったのかなと思う。

昨日訪問したセドリックからはこんなことは聞いていない。騒ぎの様子から見ても、今ちょうど騒動が起きたばかりといったところだろうか。

あまりに交差してバタバタする人の行き交いに、ぶつからないようにと慎重に歩みながら一先ず私達は首領テントに向かう。途中、やっぱりバタバタし過ぎて私達集団の固まりで移動すれば行き交う人にぶつかりかける。

私達もネイトの発明であくまで認識されないだけだから、先頭を歩くステイルの隣に守ろうとアーサーが並んだら逆に肩を掴まれて下げられた。「お前は違う」と結構低い声で言われてアーサーもちょっと「アァ?」って唸ってたけど、ステイルと目を合わせたと思ったらちょっと肩を丸くしてまた私の隣に戻ってきてくれた。

多分、ステイルのことだから自分に護衛は要らないではなくて私の護衛にアーサーを付けようとしてくれたのかなと思う。その後代わりにエリック副隊長がステイルの隣に立っても「ありがとうございます」とさらりと受け入れていた。エリック副隊長も察してくれたのか、ステイルにお礼を言われてちょっと口元が優しく笑んでいた。


子どもが私達の隙間を通るように駆け抜ければアーサーが腕で私を下げながら守ってくれ、背後から駆けてくる大人もアラン隊長が腕を伸ばすようにしてぶつかる前に弾いてくれた。……鎌を持った男の人は「どけッ!!」とハリソン副隊長を突き飛ばそうとして逆に返り討ちに遭い、ひっくり返った。さらにはフィリップの特殊能力で見かけを変えられているヴァルは肩をぶつけられ、直後に地面に足を取られて転ばしたりとちょっとプチ災害の固まりになってしまった。全員大怪我にはならなかったものの、そうして首領テントに近付いた時だった。


「もっと数増やせ!!ガキは殴ってでも近付けんじゃねぇぞ!!」


テントの外で周囲に怒鳴り散らしている青年が目に入る。エルドだ。隣には弟のホーマーや、他にも幹部らしき人だった大人達も集まって彼の言葉に覇気のある声で従っていた。

貧困街の中枢まで進んだからか、人の流れも大分一方向に落ち着いているように見える。あれだけいた子どもや女性の姿も見られない。どこを見ても男性ばかりだ。一人二人女性がいる、と思ったら確かあの人達も幹部だった気がする。エルドのテントで見た人だ。

乱暴な言葉で大勢の前で息巻くエルドの姿を見ると、少しだけゲームのレオンルートの彼らを思い出す。今は服装も服装だから、本当に元王子様なんて誰も信じないだろう。

そのまま大勢が駆け込んでいくと、何かホーマーに指示を出してから後を追うよう走り出そうとするエルド達の背中にステイルが「エルド!」と声を掛けた。ステイルの張った声にすぐ気付いたらしく振り返ってはくれたエルドだけれど、少し間があった。多分ネイトのゴーグルの影響だろう、私達の声もましてや彼が騎士達の顔も記憶に止めていなかったのもきっとある。「誰だこいつら」から数秒かけて目を見開いた。


「ッ邪魔だ帰れ!!!お前達の相手してる暇はねぇんだよ!!」

そう唾が飛びそうなほど叫ぶと、もう足を止める必要もないと言わんばかりに駆け去ってしまった。

せっかく居場所に辿り付いたのに本人だけが遠ざかる。ホーマーは追わずに残っていたけれど、やっぱりこちらを睨み付けると、地面に唾を吐き捨ててから早足でエルドのテントに入ってしまった。完全に、私達の相手はしたくないという意思表示だろう。

やはりそれだけ忙しい事態なのか、とも思うけれど……昨日のセドリックの話を思い出すとどうだろうなとも思う。一字一句違わずやり取りの会話も状況も鮮明に説明してくれたセドリックの話を総合すると、うっかりエルドの地雷を踏み抜いてしまったらしい。

まぁ、奴隷なんて過去を知られたくない人が殆どだし、首領として彼らのプライバシーを守るのも当然だ。……正直、あのエルドがそこまで部下達に気を回す人になったのなら意外でもある。今だって子どもを殴ってでもとか物騒な台詞聞こえたばかりだもの。

逃げた奴隷を匿っている可能性も鑑みて、少し探ってみるとステイルも言ってくれた。予知した民の可能性もあるし、……けれどこの状況だと難しそうだ。

単純に秘密主義の非合法組織だから探られたくない腹を探られて怒った可能性もあるから、調査自体の優先度はまだ低い。それよりも奴隷収容所に行く方が効率的だ。逃げた奴隷についても教えてくれる可能性はここよりは高い。ただ、それを抜いてもやはり挨拶は礼儀として住ませたかった。もうセドリックが前払いしてくれているとはいえ、一応は約束通り悪さもせずサーカス団に来るお客さんをカモにもせずに大人しくしてくれたことは事実だ。約束を守られた以上、一言くらい礼儀はこちらから通しておきたかった。


「どうしましょうか……。テントで待つか、それともエルドを追うか。言付けを残して終えるのも一つの手です」


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