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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百七十六章 担当者情報

「担当者――権限制限。」


透は、その表示をしばらく見ていた。


女は画面の横に座ったまま、すぐには何も言わなかった。


「受付担当。」


「うん。」


「本番処理開始。」


「そう。」


「担当者情報は。」


「権限制限。」


「つまり。」


「名前は見えない。」


「そう。」


女は少し考えた。


「でも。」


「うん。」


「担当者が登録されていること自体は。」


「確認できる。」


「そう。」


「所属も?」


「記録上はある。」


「どこ?」


「C―12。」


女は頷いた。


「M―2?」


「そう。」


「じゃあ。」


「うん。」


「これまで出てきた担当者候補と。」


「同じ範囲にいる。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「同じ人だとは。」


「言えない。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「受付担当。」


「うん。」


「所属――C―12。」


「うん。」


「権限――M―2。」


「うん。」


「氏名――権限制限。」


「うん。」


「在籍期間――権限制限。」


「そう。」


彼女は少し考えてから書いた。


「役割は見える。」


「うん。」


「個人は見えない。」


「そう。」


透は画面を拡大した。


「もう一つある。」


「何?」


「担当者の登録区分。」


「どうなっている?」


「二種類。」


「二種類?」


「受付担当。」


「うん。」


「それと処理確認担当。」


「違う人?」


「分からない。」


「同じ人の可能性も?」


「ある。」


「別の人の可能性も?」


「ある。」


女は画面を見た。


「つまり。」


「うん。」


「受付した人と。」


「そう。」


「確認した人が。」


「別とは限らない。」


「そう。」


「同じとも限らない。」


「そう。」


女はため息をつくように息を吐いた。


「また。」


「うん。」


「役割と人を分ける。」


「そう。」


「受付担当という役割が。」


「うん。」


「誰に割り当てられたか。」


「そう。」


「それは別の記録。」


「そう。」


女はノートに書いた。


「役割≠担当者。」


「でも。」


「うん。」


「担当者情報は。」


「存在する。」


「そう。」


「ただ。」


「見えない。」


「そう。」


「じゃあ。」


女は画面を見た。


「その担当者を。」


「うん。」


「別の記録から探せる?」


「できる可能性はある。」


「J―3?」


「そう。」


透はJ―3を開いた。


「C―12。」


「うん。」


「兄の日。」


「うん。」


「M―2保有者。」


「何人?」


「二人。」


女は黙った。


「二人。」


「そう。」


「受付担当が。」


「その二人のどちらか。」


「可能性はある。」


「でも。」


「うん。」


「勤務時間が分かれば。」


「絞れる?」


「勤務時間は別管理。」


「見られる?」


「一部。」


透が別の記録を開いた。


「一人目。」


「うん。」


「午前勤務。」


「もう一人は?」


「午後勤務。」


女は少し考えた。


「受付開始。」


「11時14分。」


「じゃあ。」


「午前勤務の人?」


「そうとは限らない。」


「どうして?」


「交代。」


「そうか。」


「受付処理が自動で開始されて。」


「うん。」


「後から担当者が割り当てられる場合もある。」


「なるほど。」


「実際。」


「うん。」


「担当者登録時刻を見る必要がある。」


「そう。」


透は時間を確認した。


「受付開始――11:14。」


「うん。」


「担当者登録――11:22。」


女は画面を見た。


「八分後。」


「そう。」


「担当者登録は。」


「手動?」


「自動登録。」


「じゃあ。」


「うん。」


「登録された担当者は。」


「処理を開始した人とは限らない。」


「そう。」


女は少し黙った。


「受付が始まった。」


「うん。」


「八分後。」


「そう。」


「担当者情報が登録された。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「受付開始者と。」


「そう。」


「担当者登録者を。」


「同じものとして見てはいけない。」


「そう。」


女はその言葉を書いた。


「受付開始≠担当者登録。」


「そう。」


「自動登録≠実作業者。」


「そう。」


透は頷いた。


「また一つ。」


「うん。」


「記録の意味が違う。」


「そう。」


女は画面を見た。


「じゃあ。」


「うん。」


「実際に作業した人は。」


「分からない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「M―2の権限を持つ人が。」


「そう。」


「処理を担当できる。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「候補者は二人。」


「そう。」


「ただし。」


「そう。」


「候補者であって。」


「担当者確定ではない。」


「そう。」


女は画面を閉じた。


「前にも。」


「うん。」


「同じことがあった。」


「そう。」


「二人ともM―2。」


「そう。」


「一人は権限継続。」


「うん。」


「もう一人は業務再編で付与。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「今回も。」


「そう。」


「二人。」


「そう。」


女は少し考えた。


「この二人。」


「うん。」


「その後どうなった?」


透がJ―3の履歴を開いた。


「一人は三か月後に異動。」


「もう一人は。」


「半年後に権限変更。」


「何に?」


「M―2は継続。」


女は画面を見る。


「つまり。」


「うん。」


「今回の担当者が誰だったとしても。」


「そう。」


「その後も。」


「うん。」


「権限構造は残った。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「担当者が変わっても。」


「そう。」


「同じ業務が続く。」


「そう。」


女は頷いた。


「それなら。」


「うん。」


「兄の日の担当者を特定することより。」


「そう。」


「どんな権限を持った人が。」


「うん。」


「どんな処理をできる状態だったか。」


「そう。」


「そっちの方が。」


「記録上は追いやすい。」


「そう。」


透は次の項目を開いた。


「担当者の操作履歴。」


女が顔を上げる。


「ある?」


「ある。」


「何時?」


「11:23。」


「受付開始の九分後。」


「そう。」


「操作内容は?」


透が読む。


「旧名称関連情報――確認。」


女は黙った。


「担当者が。」


「うん。」


「旧名称関連情報を確認した。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「それが兄の情報だとは。」


「分からない。」


「そう。」


「対象番号は?」


「権限制限。」


「業務区分。」


「所在関連情報。」


「入力経路。」


「業務窓口。」


女は画面を見つめた。


「今まで出てきた条件と。」


「一致している。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「同じ処理条件の中で。」


「そう。」


「担当者が確認した。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「その対象が何だったかは。」


「見えない。」


「そう。」


女はしばらく画面を見ていた。


「ここで。」


「うん。」


「一つ。」


「何?」


「確認したい。」


「どうぞ。」


「担当者の操作。」


「うん。」


「旧名称関連情報の確認。」


「そう。」


「その後。」


「うん。」


「外部入力。」


「そう。」


「順番は。」


「外部入力の後。」


「そう。」


「じゃあ。」


「うん。」


「11:23の確認は。」


「外部入力を受け取った後。」


「そう。」


「それなら。」


「うん。」


「何を確認したか。」


「外部入力に含まれていた旧名称関連情報。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「外部から来た情報を。」


「そう。」


「既存の旧名称情報と照合した。」


「そう。」


女は頷いた。


「ここは。」


「うん。」


「今までより少し分かる。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「誰が送ったか。」


「分からない。」


「そう。」


「誰が確認したか。」


「候補はいるが確定できない。」


「そう。」


「何を具体的に見たか。」


「詳細は制限。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「外部入力。」


「うん。」


「旧名称確認。」


「うん。」


「業務区分。」


「うん。」


「所在関連情報。」


「うん。」


「全部つながっている。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「人だけが。」


「そう。」


「つながらない。」


「そう。」


透は何も言わなかった。


女は続けた。


「これ。」


「うん。」


「最初は。」


「そう。」


「人が意図的に隠しているのかと思っていた。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「実際には。」


「そう。」


「仕組みそのものが。」


「うん。」


「人と仕事を分けて記録している。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「結果として。」


「そう。」


「人が見えなくなる。」


「そう。」


「それが。」


「うん。」


「誰かの意図だったかどうかは。」


「分からない。」


「そう。」


女は画面を見た。


「でも。」


「うん。」


「その仕組みの中では。」


「そう。」


「人が見えなくても。」


「うん。」


「業務は続けられる。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「記録上は。」


「そう。」


「何も止まっていない。」


「そう。」


女は少し黙った。


「兄がいなくなったこと。」


「うん。」


「それ自体は。」


「そう。」


「この記録には。」


「直接出てこない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「兄がいなくなった後にも。」


「そう。」


「業務処理は。」


「続いている。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「業務記録だけを見ると。」


「そう。」


「何も起きていないように見える。」


「そう。」


女はその言葉をすぐには書かなかった。


しばらくしてから、ゆっくり記した。


「人の出来事と、業務の出来事は、同じ速度で記録されない。」


透はその一文を見た。


「いいと思う。」


「でも。」


「うん。」


「これも結論ではない。」


「そう。」


「ただ。」


「うん。」


「今までの記録を読むための視点。」


「そう。」


透は画面を戻した。


「もう一件。」


「何?」


「担当者の操作履歴。」


「まだある?」


「11:27。」


「何をした?」


「照会先情報確認。」


女は顔を上げた。


「照会先?」


「そう。」


「外部連携先。」


「そう。」


「何を確認した?」


「連携経路。」


「また経路。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「11:31。」


「何?」


「照会結果反映。」


「どこへ?」


「Q―1。」


女は黙った。


「じゃあ。」


「うん。」


「11:23。」


「旧名称関連情報確認。」


「11:27。」


「照会先情報確認。」


「11:31。」


「Q―1へ反映。」


「そう。」


女はその三つを見た。


「この四分間。」


「うん。」


「何かが。」


「そう。」


「かなり速く進んでいる。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「操作した人は。」


「権限制限。」


「そう。」


「三つとも。」


「同じ人?」


「記録上は担当者区分が同じ。」


「同じ人とは限らない。」


「そう。」


「自動処理が混ざっている可能性は?」


「ある。」


女は画面を見た。


「だから。」


「うん。」


「11:23から11:31までの八分間に。」


「そう。」


「人が全部操作したとは。」


「言えない。」


「そう。」


透は一つずつ確認した。


「11:23――手動確認。」


「これは人?」


「手動確認だから、実行主体は登録されている。」


「でも名前は見えない。」


「そう。」


「11:27――照会先情報確認。」


「自動参照。」


「人ではない。」


「そう。」


「11:31――Q―1反映。」


「自動通知。」


「そう。」


女は頷いた。


「なるほど。」


「うん。」


「三つが連続して見えるけど。」


「そう。」


「実際には。」


「手動。」


「うん。」


「自動。」


「うん。」


「自動。」


「そう。」


「また。」


「うん。」


「連続≠同一主体。」


「そう。」


女はその言葉を書いた。


「一人の操作に見える連続処理が、実際には複数の主体で動いている。」


透は画面を見た。


「それなら。」


「うん。」


「兄の日の処理を。」


「そう。」


「一人の担当者の判断として。」


「そう。」


「まとめるのは危ない。」


「そう。」


「受付。」


「うん。」


「確認。」


「うん。」


「照会。」


「うん。」


「通知。」


「うん。」


「全部。」


「そう。」


「別の主体かもしれない。」


「そう。」


女は椅子から少し離れた。


「じゃあ。」


「うん。」


「今まで。」


「そう。」


「『誰がやったのか』を探していたけど。」


「そう。」


「実際には。」


「うん。」


「『どの処理を、誰が、または何が実行したのか』を。」


「そう。」


「分けて見る必要がある。」


「そう。」


透は頷いた。


「そして。」


「うん。」


「人だけじゃない。」


「自動処理も主体の一つ。」


「そう。」


女は画面を見た。


「人が判断した部分。」


「うん。」


「システムが条件に従って動いた部分。」


「うん。」


「それを分ける。」


「そう。」


「そうしないと。」


「うん。」


「システムの結果を。」


「人の判断だと思ってしまう。」


「そう。」


女はしばらく黙っていた。


そして、11:23の記録をもう一度開いた。


「手動確認者。」


「うん。」


「所属――C―12。」


「そう。」


「権限――M―2。」


「そう。」


「氏名――権限制限。」


「そう。」


「確認内容。」


「旧名称関連情報。」


「そう。」


「確認結果。」


透が画面を見た。


「関連情報あり。」


女はそこで止まった。


「関連情報あり。」


「そう。」


「これ。」


「うん。」


「何に対して『あり』なの?」


透は詳細を探した。


しばらくして、別の項目が出た。


「関連対象――旧名称使用履歴。」


女は画面を見つめた。


「人じゃない。」


「そう。」


「案件でもない。」


「そう。」


「旧名称の使用履歴。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「11:23の担当者は。」


「そう。」


「誰かを確認したのではなく。」


「うん。」


「名前が過去にどう使われたかを確認した。」


「そう。」


女はゆっくり頷いた。


「また。」


「うん。」


「人から。」


「そう。」


「名前の使われ方へ。」


「そう。」


彼女はノートを開いた。


「兄を探す。」


その下に、


「名前を探す。」


さらに、


「名前の使われ方を探す。」


と書いた。


三つの文をしばらく見つめたあと、女は最後の一行に線を引いた。


「今、追っているのは。」


「うん。」


「これ。」


透は答えなかった。


画面には、まだ次の記録が残っていた。


「旧名称使用履歴――最終確認時刻。」


その時刻は、兄が南区へ入った時刻より、さらに前だった。

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