第一百七十五章 用途変更前記録
「用途変更前記録――参照あり。」
女は、その一行を見た。
「変更前。」
「うん。」
「つまり。」
「そう。」
「今の業務連携先になる前。」
「そう。」
「この経路が。」
「うん。」
「何に使われていたか。」
「そう。」
透は記録を開いた。
「参照日時。」
「いつ?」
「兄の日から四日前。」
女は画面を見た。
「兄の日の前。」
「そう。」
「何のために?」
「用途変更の確認。」
「そう。」
「参照対象。」
「旧連携履歴。」
「旧連携履歴。」
「うん。」
「さらに。」
透は次の項目を開いた。
「個人照会関連処理。」
女は黙った。
「やっぱり。」
「うん。」
「昔は。」
「そう。」
「この経路が。」
「個人照会に使われていた。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「四日前に。」
「そう。」
「その過去記録を確認している。」
「そう。」
「兄の日の四日前。」
「そう。」
女はノートを開いた。
「用途変更の確認。」
「うん。」
「兄の日の四日前。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「兄の日。」
「外部照会。」
「そう。」
「四日後。」
「業務連携先へ変更。」
「そう。」
「その翌日。」
「所在関連情報で再利用。」
「そう。」
女はその時間を眺めた。
「近い。」
「そう。」
「かなり近い。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「この確認が。」
「兄の日のためだったとは。」
「言えない。」
「そう。」
「用途変更そのものは。」
「うん。」
「もっと前から計画されていた可能性もある。」
「そう。」
「四日前の確認は。」
「その準備だった可能性がある。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「その確認が何をきっかけに行われたかは。」
「記録にはない。」
「そう。」
女は書いた。
「四日前――旧用途確認。」
「当日――外部照会。」
「四日後――用途変更。」
「五日後――再利用。」
その下に、
「因果関係――不明。」
と書いた。
「でも。」
「うん。」
「一つ。」
「何?」
「用途変更前記録に。」
「うん。」
「旧用途の詳細がある。」
「そう。」
「それを見たい。」
透は続きを開いた。
「旧用途――個人照会関連。」
「うん。」
「照会対象――個人識別情報。」
女の手が止まった。
「個人識別情報。」
「そう。」
「昔は。」
「そう。」
「この経路で。」
「うん。」
「個人識別情報を扱っていた。」
「そう。」
「現在は?」
「業務連携情報。」
「そう。」
「個人識別情報。」
「現在は別管理。」
「X―4。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「つまり。」
「うん。」
「昔は。」
「そう。」
「経路と個人情報が。」
「うん。」
「ある程度近かった。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「三年前の変更で。」
「そう。」
「分離された。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「兄の日には。」
「そう。」
「外部から個人識別情報が届かなかった。」
「そう。」
「後から補完された。」
「そう。」
女は黙った。
「じゃあ。」
「うん。」
「今の仕組みは。」
「そう。」
「昔の仕組みを完全に捨てたわけではない。」
「そう。」
「昔の経路を。」
「うん。」
「残したまま。」
「そう。」
「情報だけ分離した。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「古い識別子が残っている。」
「そう。」
「古い名称も残っている。」
「そう。」
「古い照会履歴も残っている。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「個人情報の扱いだけは。」
「そう。」
「変わった。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「経路――継続。」
「名称――継続。」
「業務――変更。」
「個人情報――分離。」
「そう。」
透は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「同じ番号が。」
「そう。」
「違う意味で使われる。」
「そう。」
「同じ名称が。」
「そう。」
「違う用途で使われる。」
「そう。」
「同じ経路が。」
「そう。」
「違う情報を運ぶ。」
「そう。」
女は静かに言った。
「これなら。」
「うん。」
「記録が矛盾して見える理由も。」
「そう。」
「少し分かる。」
「何が?」
「昔の記録では。」
「うん。」
「個人照会。」
「そう。」
「今の記録では。」
「業務連携。」
「そう。」
「同じ識別子。」
「そう。」
「同じ名称。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「同じ意味ではない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「だから。」
「うん。」
「過去の記録を現在の意味で読むと。」
「そう。」
「人を間違える。」
「そう。」
「現在の記録を過去の意味で読むと。」
「そう。」
「やっぱり人を間違える。」
「そう。」
女は少し黙った。
「でも。」
「うん。」
「一つ気になる。」
「何?」
「兄の日の四日前に。」
「うん。」
「旧用途を確認している。」
「そう。」
「なぜ?」
「分からない。」
「変更準備だった?」
「可能性はある。」
「外部照会の準備?」
「可能性はある。」
「別の案件?」
「可能性はある。」
「兄とは無関係?」
「それもある。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「ここでは。」
「そう。」
「『兄の日の四日前だから兄のため』とは。」
「言わない。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「四日前に。」
「そう。」
「古い用途が確認された。」
「それだけは。」
「確定。」
「そう。」
彼女はその事実だけを書いた。
「用途変更前確認――実施。」
「目的――旧用途確認。」
「対象――個人照会関連。」
「兄との関係――不明。」
透は画面を見た。
「もう一つある。」
「何?」
「参照後処理。」
「うん。」
「旧用途確認の後。」
「何をした?」
「用途変更申請。」
女は顔を上げた。
「四日前に?」
「そう。」
「すぐ?」
「確認終了から二時間後。」
「申請理由。」
透が読む。
「旧連携経路の現行業務適合性確認。」
女は黙った。
「現行業務適合性。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「昔の個人照会用経路を。」
「そう。」
「今の業務で使っていいか。」
「そう。」
「確認した。」
「そう。」
「その後。」
「うん。」
「申請した。」
「そう。」
女は画面を見た。
「申請は。」
「承認済み。」
「いつ?」
「兄の日の二日前。」
女はしばらく黙っていた。
「二日前。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「兄の日。」
「外部照会。」
「そう。」
「四日後。」
「業務連携先として正式変更。」
「そう。」
女はノートを見た。
「これは。」
「うん。」
「かなり具体的。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「まだ。」
「そう。」
「兄の日の外部照会が。」
「この申請のためだったとは。」
「言えない。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「申請が承認された後。」
「そう。」
「最初の本番利用が。」
「兄の日。」
「そう。」
女は黙った。
「テスト利用は?」
透が検索する。
「二件。」
「いつ?」
「兄の日の前日。」
「その二件は?」
「一件は連携システム。」
「もう一件は手動受付。」
「業務窓口?」
「違う。」
「じゃあ。」
「内部受付。」
女は画面を見た。
「兄の日の本番だけ。」
「うん。」
「外部。」
「そう。」
「業務窓口。」
「そう。」
「所在関連情報。」
「そう。」
「旧名称関連情報。」
「そう。」
女はしばらく考えた。
「つまり。」
「うん。」
「前日にテストして。」
「そう。」
「二日前に承認されて。」
「そう。」
「四日前に旧用途を確認して。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「兄の日に。」
「そう。」
「初めて外部の本番処理に使った。」
「そう。」
「これなら。」
「うん。」
「業務再編の流れとしては。」
「そう。」
「自然。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄の日に。」
「そう。」
「なぜその案件が最初の本番になったのかは。」
「分からない。」
女は頷いた。
「ここも。」
「そう。」
「空白。」
「そう。」
透は少し考えた。
「この空白。」
「うん。」
「今までと違うかもしれない。」
女が顔を上げる。
「どういう意味?」
「今までは。」
「うん。」
「処理そのものの意味を追っていた。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「ここには。」
「そう。」
「処理が本番に入る直前の。」
「うん。」
「準備が残っている。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「次に見るべきなのは。」
「本番になった理由?」
「そう。」
「でも。」
「それは記録に残らないかもしれない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「本番前の受付順を見る。」
「受付順?」
「兄の日。」
「うん。」
「最初に何が入ったか。」
「そう。」
「誰の案件だったかではなく。」
「そう。」
「どの業務処理が最初に新しい経路を使ったか。」
女は頷いた。
「人ではなく。」
「うん。」
「最初の処理。」
「そう。」
透は兄の日のログを開いた。
時刻が並んだ。
09:12。
10:24。
10:36。
10:43。
10:59。
11:14。
11:31。
14:38。
15:12。
15:27。
女はその並びを見た。
「これ。」
「うん。」
「今まで何度も見ている。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「順番としては。」
「そう。」
「まだ一度も。」
「うん。」
「全部を並べて見ていない。」
透は時刻を並べ直した。
「09:12――旧名称使用可否確認。」
「10:24――旧名称関連情報参照。」
「10:36――第三の記録参照。」
「10:43――現行経路使用可。」
「10:59――最終経路確認。」
「11:14――外部入力開始。」
「11:31――分類処理。」
「14:38――記録外情報確認。」
「15:12――個人識別情報補完。」
「15:27――Q―1通知。」
女は画面を見つめた。
「こうして見ると。」
「うん。」
「兄が南区に入った時刻より。」
「そう。」
「前から。」
「そう。」
「処理の準備が動いている。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「その準備が兄のためだったかは。」
「分からない。」
「そう。」
女は最初の時刻を指した。
「09:12。」
「うん。」
「ここから。」
「そう。」
「始まっている。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「次は。」
透がその記録を開いた。
画面には一行だけ表示された。
「確認対象――旧名称使用履歴。」
その下に、
「確認理由――本番処理前条件確認。」
さらに、
「次処理――外部連携受付。」
と続いていた。
女は画面から目を離さなかった。
「本番処理前。」
「そう。」
「最初から。」
「そう。」
「次に外部連携受付が予定されていた。」
「そう。」
女はゆっくり息を吐いた。
「それなら。」
「うん。」
「兄の日の外部照会は。」
「そう。」
「少なくとも。」
「うん。」
「その日の朝には。」
「そう。」
「業務上の予定された処理だった。」
「記録上は、そう読める。」
「でも。」
「うん。」
「誰のための処理だったかは。」
「分からない。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「じゃあ。」
「うん。」
「南区に入ったことと。」
「そう。」
「09:12の準備。」
「そう。」
「どちらが先だったか。」
「時間だけなら。」
「うん。」
「南区への移動が先。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「この準備が。」
「南区への移動を受けて始まったかは。」
「分からない。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「ここも。」
「そう。」
「二つの出来事を。」
「因果関係でつながない。」
「そう。」
透は画面を閉じなかった。
女は最後に、09:12の記録をもう一度見た。
「でも。」
「うん。」
「一つだけ。」
「何?」
「この日の朝。」
「うん。」
「新しい経路を使う準備が。」
「そう。」
「すでに完了していた。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「11:14に。」
「そう。」
「実際に使われた。」
「そう。」
女は小さく頷いた。
「準備された経路が。」
「うん。」
「誰かの案件を通した。」
「そう。」
「その誰かが兄だったかは。」
「分からない。」
「そう。」
画面の下には、まだ一つの記録が残っていた。
「本番処理開始――受付担当情報。」
その項目には、
「担当者――権限制限。」
とだけ表示されていた。




