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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百七十三章 照会先

「照会先――記録対象外。」


透は、その一行を見た。


女はしばらく何も言わなかった。


「記録対象外。」


「うん。」


「さっきと同じ。」


「そう。」


「誰に照会したのか。」


「分からない。」


「何を照会したのか。」


「詳細は権限制限。」


「でも。」


「うん。」


「照会そのものは。」


「記録されている。」


「そう。」


女は画面を見た。


「照会開始。」


「うん。」


「所在関連情報照会。」


「そう。」


「照会先――記録対象外。」


「そう。」


「回答。」


「記録あり。」


「回答内容。」


「権限制限。」


「そう。」


女は少し考えた。


「つまり。」


「うん。」


「照会したことは残る。」


「そう。」


「回答があったことも残る。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「誰に聞いたか。」


「そう。」


「何を聞いたか。」


「そう。」


「何を答えられたか。」


「詳細は見えない。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「また。」


「うん。」


「結果だけが残っている。」


「そう。」


「過程の一部がない。」


「そう。」


彼女は少し考えてから書いた。


「照会の存在――確認できる。」


「うん。」


「照会先――確認できない。」


「そう。」


「回答の存在――確認できる。」


「うん。」


「回答内容――確認できない。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「ここから人を特定するのは難しい。」


「そう。」


女は画面を戻した。


「でも。」


「うん。」


「照会先が記録対象外になっている理由は。」


「ある。」


「何?」


透が詳細を開いた。


「照会先情報――別管理。」


「また別管理。」


「そう。」


「どこ?」


「X―4関連管理。」


女は黙った。


「またX―4。」


「そう。」


「依頼者情報。」


「うん。」


「外部連携履歴。」


「うん。」


「今回の照会先。」


「そう。」


「全部、同じ管理系統?」


「同じ管理系統の中にある。」


「同じ情報ではない。」


「そう。」


女は頷いた。


「X―4は。」


「うん。」


「人を保存している場所じゃない。」


「そう。」


「外部との連携に関する情報を。」


「そう。」


「別々に管理している。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「X―4を見ても。」


「そう。」


「一人の人間が出てくるとは限らない。」


「そう。」


女は画面を拡大した。


「照会先区分。」


「外部。」


「照会方式。」


「業務連携。」


「照会対象。」


「所在関連情報。」


「照会目的。」


「適用範囲確認。」


「そう。」


女は眉を寄せた。


「やっぱり。」


「何?」


「人を探すための照会とは。」


「そう。」


「書かれていない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「『所在関連情報』という言葉がある。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「人の所在だと思ってしまう。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「ここでいう所在は。」


「業務上の所在。」


「そう。」


「情報がどの処理経路にあるか。」


「そう。」


「どの管理区分にあるか。」


「そう。」


「どこへ照会すればいいか。」


「そう。」


女は頷いた。


「言葉は同じ。」


「うん。」


「意味が違う。」


「そう。」


「これが。」


「そう。」


「一番ややこしい。」


透は画面を見た。


「『所在』という言葉が。」


「うん。」


「人の場所にも。」


「そう。」


「情報の管理位置にも。」


「そう。」


「業務経路にも。」


「そう。」


「使われている。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「記録を読む人が。」


「そう。」


「普通の意味で読んだら。」


「うん。」


「人がどこにいるかの話に見える。」


「そう。」


女は小さく息を吐いた。


「兄が南区に入った。」


「うん。」


「その後。」


「そう。」


「所在関連情報が照会された。」


「そう。」


「普通なら。」


「うん。」


「兄の所在を調べたと思う。」


「そう。」


「でも。」


「そう。」


「記録の定義では。」


「業務経路の所在。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「この二つは。」


「別。」


「そう。」


女はノートに書いた。


「同じ言葉でも、対象が違う。」


その下に、


「対象を確認しないまま、意味を決めない。」


と書いた。


「じゃあ。」


「うん。」


「今回の照会。」


「そう。」


「実際には何を確認した?」


透が照会条件を開いた。


「適用範囲。」


「うん。」


「関連先。」


「うん。」


「旧名称関連情報。」


「そう。」


「業務名称区分。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「所在関連情報。」


「そう。」


女は画面を見た。


「つまり。」


「うん。」


「旧名称を。」


「そう。」


「現在の業務で使えるか。」


「そう。」


「その情報を。」


「うん。」


「所在関連業務に適用できるか。」


「そう。」


「そこを確認した。」


「記録上はそう。」


女は頷いた。


「でも。」


「うん。」


「照会先が外部。」


「そう。」


「ということは。」


「うん。」


「内部の記録だけでは。」


「そう。」


「判断できなかった。」


「可能性はある。」


「それとも。」


「うん。」


「単純に。」


「そう。」


「外部連携の手順だった。」


「その可能性もある。」


女は少し考えた。


「だから。」


「うん。」


「ここも分からない。」


「そう。」


「ただ。」


「うん。」


「外部照会が実施された。」


「そう。」


「回答が返ってきた。」


「そう。」


「回答は。」


「そう。」


「業務名称区分として扱われた。」


「そう。」


「その後。」


「うん。」


「旧名称関連情報と一致した。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「所在関連情報として適用された。」


「そう。」


女はその流れを見た。


「一見すると。」


「うん。」


「一つの情報が。」


「そう。」


「ずっと同じ場所を通っているように見える。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「実際には。」


「そう。」


「何度も分類が変わっている。」


「そう。」


「外部回答。」


「うん。」


「業務名称。」


「うん。」


「旧名称関連情報。」


「うん。」


「所在関連情報。」


「うん。」


「個人識別情報。」


「うん。」


「それぞれ。」


「そう。」


「同じものではない。」


「そう。」


女は黙った。


「なのに。」


「うん。」


「同じ情報についての記録として。」


「そう。」


「つながっている。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「どこかで意味が変わっている可能性がある。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「意味が変わったこと自体が。」


「異常とは限らない。」


「そう。」


「業務処理では。」


「うん。」


「分類を変えることは普通にある。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「問題は。」


「そう。」


「その分類変更が。」


「うん。」


「何を根拠に行われたか。」


「そう。」


女は画面を見た。


「今回の分類変更。」


「うん。」


「業務名称から。」


「そう。」


「所在関連情報。」


「そう。」


「根拠は?」


透が記録を開く。


「入力内容。」


「うん。」


「旧名称関連情報。」


「そう。」


「外部回答。」


「そう。」


「業務区分。」


「所在関連情報。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「外部から返ってきた情報そのものの内容より。」


「そう。」


「その情報がどの形式で届いたか。」


「そう。」


「どの業務区分で受け取ったか。」


「そう。」


「どの名称区分に分類されていたか。」


「そう。」


女は眉を寄せた。


「じゃあ。」


「うん。」


「分類が分類を呼んでいる。」


「そう。」


「外部から来た情報が。」


「うん。」


「業務名称として受け取られる。」


「そう。」


「業務名称だから。」


「うん。」


「旧名称関連情報と照合できる。」


「そう。」


「旧名称関連情報だから。」


「うん。」


「所在関連情報として適用できる。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「所在関連情報として適用されたから。」


「そう。」


「次の処理でも。」


「うん。」


「同じ情報が。」


「そう。」


「所在関連情報として扱われる。」


「そう。」


女はしばらく黙っていた。


「これ。」


「うん。」


「間違いとは言えない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「最初の分類が何を意味していたのかを確認しないまま。」


「そう。」


「後の処理だけを積み重ねたら。」


「うん。」


「最後には。」


「そう。」


「最初とは違う意味になっている可能性がある。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「分類の連鎖。」


「うん。」


「最初の意味が。」


「そう。」


「最後まで同じとは限らない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「記録上は。」


「そう。」


「全部が連続している。」


「そう。」


女はペンを止めた。


「だから。」


「うん。」


「連続していることと。」


「そう。」


「意味が同じことは。」


「違う。」


「そう。」


透は次の履歴を開いた。


「分類起点。」


「うん。」


「見つかった?」


「そう。」


「どこ?」


透が画面を見た。


「現行業務名称管理。」


「それは。」


「C―12。」


「うん。」


「最初の登録は。」


「兄の日より。」


「ずっと前。」


「そう。」


「名称使用区分を。」


「うん。」


「業務名称にした起点。」


「そう。」


女は画面を見た。


「つまり。」


「うん。」


「今回の外部回答が業務名称になった理由は。」


「そう。」


「兄の日の誰かが判断したわけではない。」


「記録上は、既存の分類を継承している。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「外部回答は。」


「そう。」


「既に業務名称として扱われていた名称に。」


「そう。」


「関連づけられた。」


「そう。」


女は少し黙った。


「それなら。」


「うん。」


「『一致』の正体が。」


「そう。」


「少し見えてきた。」


「何?」


「新しく二つの情報が一致したというより。」


「うん。」


「以前から業務名称として登録されていたものを。」


「そう。」


「外部回答も業務名称として扱った。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「同じ分類になった。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「一致の一部は。」


「そう。」


「過去に設定された分類を。」


「うん。」


「現在も使い続けた結果。」


「そう。」


女は画面を見た。


「それなら。」


「うん。」


「この『一致』を。」


「そう。」


「新しい発見だと思う必要はない。」


「そう。」


「昔決めた分類が。」


「うん。」


「今も使われている。」


「そう。」


「それだけかもしれない。」


「そう。」


女は少し笑った。


「でも。」


「うん。」


「それでも。」


「そう。」


「大事。」


「どうして?」


「兄の日の外部照会が。」


「うん。」


「その古い分類を。」


「そう。」


「利用したことが分かったから。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「兄の日の処理は。」


「そう。」


「その日だけ突然始まったものではない。」


「そう。」


「何年も前から積み上がっていた。」


「そう。」


「古い分類。」


「うん。」


「古い名称。」


「うん。」


「古い照会履歴。」


「うん。」


「古い権限。」


「うん。」


「それが。」


「そう。」


「その日に。」


「うん。」


「一つの処理として重なった。」


「そう。」


女は画面を閉じた。


「それなら。」


「うん。」


「今まで追ってきたものを。」


「そう。」


「人の動きだけで考える必要はない。」


「そう。」


「仕組みの時間も見る。」


「そう。」


「人が変わっても。」


「うん。」


「分類は残る。」


「そう。」


「担当者が変わっても。」


「うん。」


「権限は引き継がれる。」


「そう。」


「名称が変わっても。」


「うん。」


「旧名称は互換性のため残る。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「人がいなくなった後も。」


「そう。」


「仕組みだけが。」


「うん。」


「動き続ける。」


「そう。」


女はその言葉をしばらく見つめた。


「でも。」


「うん。」


「兄がいなくなった後。」


「そう。」


「仕組みが動いていたことと。」


「うん。」


「兄がその仕組みに関係していたことは。」


「別。」


「そう。」


「ここも混ぜない。」


「そう。」


女は頷いた。


「分かった。」


そのとき、透の画面に新しい履歴が表示された。


「照会先情報――利用履歴。」


女が画面を見る。


「利用履歴?」


「そう。」


「今まで見えていなかった。」


「そう。」


「何がある?」


透が開いた。


「兄の日から。」


「うん。」


「四日後。」


「四日後。」


「照会先情報参照。」


「誰が?」


「C―12。」


「M―2?」


「そう。」


「目的。」


透は画面を見た。


「照会先の継続利用確認。」


女は黙った。


「そして。」


「うん。」


「参照後処理。」


「何?」


透が次の行を読む。


「照会先区分――変更。」


女が顔を上げた。


「変更前は?」


透は画面を見た。


「外部。」


「変更後。」


「業務連携先。」


女はしばらく黙っていた。


「また。」


「うん。」


「外部が。」


「そう。」


「業務連携先に変わった。」


「そう。」


「つまり。」


「うん。」


「最初は。」


「外部。」


「そう。」


「その後。」


「うん。」


「内部の業務上の連携先として扱われるようになった。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「じゃあ。」


「うん。」


「次に見るべきなのは。」


透は答えなかった。


女が自分で言った。


「その変更理由。」


画面には、まだ変更前後の二つの区分だけが表示されていた。

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