第一百七十一章 確認待ち
「利用状態――確認待ち。」
女は、その文字を見た。
「利用可能ではない。」
「うん。」
「利用停止でもない。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「今は。」
「確認待ち。」
「そう。」
女は画面を指した。
「誰が確認するの?」
透が詳細を開いた。
「確認担当――登録あり。」
「誰?」
「氏名――権限制限。」
「所属は?」
「C―12。」
女は黙った。
「またC―12。」
「そう。」
「M―2?」
「権限――M―2。」
「つまり。」
「うん。」
「これまでと同じ。」
「そう。」
「特定の一人までは分からない。」
「分からない。」
女は履歴を見た。
「確認依頼日時。」
「兄の日から七日後。」
「七日後。」
「そう。」
「外部照会の回答が。」
「六日後。」
「うん。」
「その翌日。」
「そう。」
「利用状態が変更された。」
「そう。」
女は眉を寄せた。
「回答が来たから。」
「そう。」
「確認待ちになった?」
「記録上は、そう見える。」
「でも。」
「うん。」
「回答内容と利用状態変更の因果関係は。」
「直接は記録されていない。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「回答受付――六日後。」
「利用状態変更――七日後。」
その下に、
「因果関係――未確認。」
と書いた。
「また。」
「うん。」
「時間は近い。」
「そう。」
「でも。」
「それだけでは。」
「決められない。」
「そう。」
女は頷いた。
「確認待ち。」
「うん。」
「確認する対象は?」
透が開く。
「旧名称関連情報。」
「本人識別情報ではない?」
「対象外。」
「また。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「何を確認するの?」
「利用条件。」
「何の条件?」
「業務名称区分。」
女は画面を見つめた。
「また同じ。」
「そう。」
「本人じゃない。」
「そう。」
「名前の使われ方。」
「そう。」
「その条件が。」
「うん。」
「今も有効か。」
「そう。」
「確認する。」
「そう。」
女は静かに言った。
「つまり。」
「うん。」
「外部から回答が来た。」
「そう。」
「その回答を使えるかどうか。」
「そう。」
「確認している。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「本人が誰かは。」
「確認しない。」
「そう。」
女はしばらく黙った。
「一年前の案件。」
「うん。」
「本人一致確認をした。」
「そう。」
「不一致だった。」
「そう。」
「そのときは。」
「利用停止。」
「そう。」
「今回は。」
「確認待ち。」
「そう。」
「この違い。」
「うん。」
「何が原因?」
透は条件を比較した。
「一年前の案件には。」
「うん。」
「本人識別情報が。」
「そう。」
「最初から存在していた。」
「そう。」
「兄の日は?」
「外部入力時点では。」
「うん。」
「本人識別情報は未受信。」
「そう。」
「後から補完された。」
「そう。」
「X―4に。」
「そう。」
女は画面を見た。
「つまり。」
「うん。」
「一年前は。」
「そう。」
「本人確認ができる状態だった。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「確認して。」
「不一致だった。」
「そう。」
「兄の日は。」
「うん。」
「本人確認をするための情報が。」
「そう。」
「そもそも別管理にあった。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「後から補完された。」
「そう。」
「それでも。」
「本人一致確認は。」
「対象外。」
「そう。」
女は眉を寄せた。
「なら。」
「うん。」
「後から補完された個人識別情報は。」
「そう。」
「本人確認のためではない。」
「そう。」
「では。」
「うん。」
「何のため?」
透は補完履歴を開いた。
「適用範囲確認。」
「また。」
「そう。」
「所在関連情報。」
「そう。」
「業務継続性確認。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「個人識別情報を。」
「そう。」
「本人の確認ではなく。」
「うん。」
「業務の処理範囲を決めるために使った。」
「そう。」
女は黙った。
「それ。」
「うん。」
「かなり重要じゃない?」
「そう。」
「個人識別情報がある。」
「うん。」
「でも。」
「本人確認には使わない。」
「そう。」
「代わりに。」
「うん。」
「どの業務に適用するか。」
「そう。」
「その判断に使う。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「本人を確認するための情報。」
その下に、
「業務範囲を決めるための情報。」
と書いた。
「同じ情報でも。」
「うん。」
「使い方が違う。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「個人識別情報が存在する。」
「そう。」
「それだけでは。」
「うん。」
「本人確認をしたことにならない。」
「そう。」
女は頷いた。
「分かった。」
「何が?」
「この記録を読むとき。」
「うん。」
「個人情報が出てきた瞬間。」
「そう。」
「人が確定したと思ってしまう。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「この仕組みでは。」
「そう。」
「個人情報が。」
「うん。」
「業務処理の材料として使われることがある。」
「そう。」
「本人確認をせずに。」
「そう。」
女は画面に戻った。
「じゃあ。」
「うん。」
「確認待ちになった理由も。」
「そう。」
「本人が分からないからではなく。」
「そう。」
「業務名称として再利用していいか。」
「そう。」
「まだ確認していないから。」
「そう。」
「そういうこと?」
「記録上は、その解釈が近い。」
女は頷いた。
「でも。」
「うん。」
「一つ気になる。」
「何?」
「利用状態を変更した人。」
「うん。」
「M―2。」
「そう。」
「その人は。」
「そう。」
「外部照会の担当者と同じ?」
透は履歴を比較した。
「氏名は制限されている。」
「うん。」
「所属はどちらもC―12。」
「そう。」
「権限もM―2。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「同一人物だと確認できない。」
「そう。」
「役割コードが同じだから。」
「うん。」
「同じ人とは限らない。」
「そう。」
女は少し笑った。
「また。」
「うん。」
「同じこと。」
「そう。」
「役割は人ではない。」
「そう。」
「権限も人ではない。」
「そう。」
「所属も。」
「そう。」
「人を特定するには。」
「うん。」
「個人情報が必要。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「その個人情報は。」
「そう。」
「本人確認には使われていない。」
「そう。」
女は黙った。
「この仕組み。」
「うん。」
「かなり複雑。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「複雑だから。」
「そう。」
「誰かが隠しているとは限らない。」
「そう。」
「単純に。」
「うん。」
「それぞれの目的で。」
「そう。」
「別々に情報を管理している。」
「そう。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「外から見ると。」
「そう。」
「一人の人間についての記録に見えるものが。」
「うん。」
「実際には。」
「そう。」
「複数の業務の記録。」
「そう。」
「複数の担当者の権限。」
「そう。」
「複数の情報の管理場所。」
「そう。」
「それが。」
「うん。」
「同じ名前や同じ条件で。」
「そう。」
「つながって見える。」
「そう。」
透は画面を戻した。
「利用状態変更。」
「うん。」
「確認待ち。」
「そう。」
「次の確認予定。」
「未設定。」
女は目を細めた。
「未設定?」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「確認待ちのまま。」
「可能性はある。」
「実際に。」
「そう。」
「過去にも?」
透が検索した。
「同じ状態。」
「何件?」
「十九件。」
「そのうち。」
「うん。」
「後から確認されたもの。」
「四件。」
「残りは?」
「確認待ちのまま。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の記録だけが。」
「そう。」
「止まっているわけではない。」
「そう。」
「この状態自体が。」
「うん。」
「通常のこと。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「通常だから。」
「そう。」
「兄の日も問題がないとは言えない。」
「そう。」
「逆も同じ。」
「うん。」
「確認待ちだから。」
「そう。」
「兄に関係する何かが見つかったとも言えない。」
「そう。」
女は頷いた。
「また。」
「うん。」
「どちらにも行けない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「このまま記録を追う。」
「そう。」
透は検索画面を開いた。
「確認待ちになった十九件。」
「うん。」
「そのうち。」
「そう。」
「旧名称関連情報を含むもの。」
「何件?」
「六件。」
「外部照会あり。」
「四件。」
「本人識別情報補完あり。」
「三件。」
「所在関連情報。」
「二件。」
「全部の条件が重なるもの。」
透が検索を続ける。
「兄の日を含めて。」
「うん。」
「二件。」
女は顔を上げた。
「もう一件ある。」
「そう。」
「どんな案件?」
「兄の日より三か月前。」
「外部照会。」
「あり。」
「旧名称。」
「あり。」
「所在関連情報。」
「あり。」
「個人識別情報補完。」
「あり。」
「本人一致確認。」
「未実施。」
女は少し黙った。
「かなり似ている。」
「そう。」
「その後。」
「どうなった?」
透が履歴を下へ送る。
「確認待ち。」
「ずっと?」
「三か月後。」
「うん。」
「利用停止。」
女は画面を見る。
「なぜ?」
「確認理由。」
「何?」
透が読む。
「外部回答内容との不整合。」
女は黙った。
「不整合。」
「そう。」
「本人確認ではない。」
「そう。」
「外部回答と。」
「うん。」
「業務名称区分が。」
「そう。」
「一致しなかった。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「利用停止。」
「そう。」
女は少し考えた。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日も。」
「そう。」
「この先。」
「うん。」
「業務名称区分が。」
「そう。」
「回答内容と一致しなければ。」
「うん。」
「利用停止になる可能性がある。」
「可能性はある。」
「でも。」
「うん。」
「今は。」
「確認待ち。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「その三か月前の案件。」
「うん。」
「本人確認をしなかった。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「後から。」
「そう。」
「業務名称区分の不整合を見つけた。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「本人を確認しなくても。」
「そう。」
「業務上の矛盾は見つけられる。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「その矛盾だけで。」
「そう。」
「利用停止になる。」
「そう。」
女は頷いた。
「それなら。」
「うん。」
「兄の日で本当に見るべきなのは。」
「そう。」
「本人一致ではなく。」
「うん。」
「外部回答と。」
「そう。」
「内部の業務名称区分が。」
「うん。」
「一致しているか。」
「そう。」
女は画面を見た。
「さっき。」
「うん。」
「一致していた。」
「そう。」
「名称使用区分。」
「業務名称。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「利用停止にはならなかった。」
「そう。」
「今は。」
「確認待ち。」
「そう。」
女は考え込んだ。
「でも。」
「うん。」
「確認待ちの理由が。」
「そう。」
「まだ分からない。」
「そう。」
「それを見たい。」
「うん。」
透が確認理由を開く。
しばらく画面を見ていた。
「……出た。」
女が顔を上げる。
「何?」
透は画面を読む。
「確認待ち理由――『旧名称関連情報の適用範囲に未確定項目あり』。」
女は黙った。
「未確定項目。」
「そう。」
「何が?」
透がさらに詳細を開く。
そこには、
「適用範囲――所在関連情報。」
「関連先――複数。」
「優先範囲――未設定。」
と表示されていた。
女はその三行を見つめた。
「複数。」
「そう。」
「関連先が。」
「そう。」
「一つじゃない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「どこに適用するか。」
「そう。」
「まだ決まっていない。」
「そう。」
女は静かに言った。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の問題は。」
透は画面を見た。
「人が誰か。」
ではなく。
「そう。」
「この情報を。」
「うん。」
「どの業務に属させるか。」
「そう。」
女は頷いた。
「まだ。」
「うん。」
「情報の行き先が。」
「そう。」
「決まっていない。」
画面には、
「優先範囲――未設定。」
と残っていた。




