第一百六十九章 一致項目
「一致項目――名称使用区分。」
女は、その一行を見た。
「名称使用区分。」
「うん。」
「本人じゃない。」
「そう。」
「業務区分でもない。」
「そう。」
「入力経路でもない。」
「そう。」
「名前の使われ方。」
「そう。」
女は少し黙った。
「じゃあ。」
「うん。」
「外部から返ってきた情報が。」
「そう。」
「この名前を。」
「うん。」
「業務名称として扱っている。」
「そう。」
「それと。」
「うん。」
「内部の記録が。」
「そう。」
「同じく業務名称として扱っている。」
「そう。」
「だから。」
「一致。」
「そう。」
女はノートを開いた。
「名称一致。」
「うん。」
「名称使用区分一致。」
「そう。」
「本人一致。」
「違う。」
「同じ名前だから同じ人。」
「違う。」
「同じ業務名称だから同じ人。」
「違う。」
「そう。」
女はペンを置いた。
「また。」
「うん。」
「最初に戻った。」
「そう。」
「名前。」
「うん。」
「使われ方。」
「うん。」
「人。」
「そう。」
「この三つを分ける。」
「そう。」
透は照合結果を開いた。
「照合元――外部回答。」
「うん。」
「照合先――旧名称使用履歴。」
「そう。」
「比較項目――名称使用区分。」
「うん。」
「結果――一致。」
「そう。」
「個人情報照合――なし。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「じゃあ。」
「うん。」
「外部から来た情報の中に。」
「そう。」
「名前そのものが含まれていた可能性は?」
「詳細は権限制限。」
「分からない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「少なくとも。」
「そう。」
「名前の使われ方は。」
「業務名称。」
「そう。」
女は頷いた。
「それなら。」
「うん。」
「外部の回答が。」
「兄の名前だったとは。」
「言えない。」
「そう。」
「兄とは無関係の業務名称だった可能性も。」
「ある。」
「旧名称の互換情報だった可能性も。」
「ある。」
「照会先や業務経路を示す名称だった可能性も。」
「ある。」
「そう。」
女は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「一つだけ。」
「何?」
「外部回答が。」
「うん。」
「旧名称使用履歴と。」
「そう。」
「業務名称として一致した。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「システム上は。」
「そう。」
「関連情報として扱える。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「それ以上ではない。」
「そう。」
女はその言葉を書いた。
「関連情報として扱える≠本人情報である。」
透は頷いた。
「ただ。」
「うん。」
「ここまで来ると。」
「そう。」
「少し変な感じがする。」
「何が?」
「外部回答。」
「うん。」
「旧名称。」
「うん。」
「第七管理系統。」
「うん。」
「Q―1。」
「うん。」
「X―4。」
「うん。」
「全部が。」
「そう。」
「同じ名称使用区分を見ている。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「この名称は。」
「そう。」
「かなり広い範囲で。」
「うん。」
「使われている。」
「そう。」
女は検索画面を開いた。
「名称使用履歴。」
「うん。」
「過去一年。」
「そう。」
「何件?」
「四十八件。」
「多い。」
「そう。」
「そのうち。」
「うん。」
「業務名称として。」
「四十一件。」
「残りは?」
「旧業務名称。」
「そう。」
「個人照会関連名称は?」
透が検索条件を変えた。
「七件。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「同じ表示名が。」
「そう。」
「過去には個人照会にも。」
「うん。」
「業務名称にも。」
「そう。」
「使われている。」
「そう。」
「それなら。」
「うん。」
「名前だけでは。」
「人を特定できない。」
「そう。」
女は頷いた。
「だから兄の名前が。」
「うん。」
「もしこの中にあったとしても。」
「そう。」
「それだけでは。」
「本人だとは言えない。」
「そう。」
透は履歴をさらに遡った。
「六年前。」
「うん。」
「個人照会関連名称。」
「そう。」
「五年前。」
「業務名称へ整理。」
「そう。」
「四年前。」
「旧名称互換性維持。」
「そう。」
「三年前。」
「外部連携方式変更。」
「そう。」
「二年前。」
「業務再編。」
「そう。」
「一年半前。」
「旧名称関連情報を適用条件に追加。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「兄の日。」
「業務窓口から外部入力。」
「そう。」
女はその時間軸を見た。
「全部。」
「うん。」
「兄が来る前からある。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「この名前の仕組みは。」
「そう。」
「兄のために作られたものではない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄の日に。」
「そう。」
「その仕組みが。」
「うん。」
「一つの処理に使われた。」
「そう。」
女は静かに言った。
「そこだけは。」
「うん。」
「確定。」
「そう。」
「それ以上は。」
「分からない。」
「そう。」
彼女はノートを閉じた。
「でも。」
「うん。」
「さっき。」
「うん。」
「『一致』を見たとき。」
「そう。」
「一瞬。」
「うん。」
「兄と何かがつながったと思った。」
透は黙っていた。
「それが。」
「うん。」
「名称使用区分だった。」
「そう。」
「また。」
「うん。」
「自分で補っていた。」
「そう。」
女は少し笑った。
「記録は何も言っていないのに。」
「そう。」
「私が勝手に。」
「そう。」
「続きを作った。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「この記録を読むときは。」
「そう。」
「自分が何を補ったかも。」
「うん。」
「記録しないといけない。」
「そう。」
彼女はノートの端に小さく書いた。
「記録にない意味を、自分が追加していないか。」
透はそれを見た。
「それは。」
「うん。」
「この調査では。」
「そう。」
「かなり重要かもしれない。」
「そう。」
女は画面を戻した。
「まだある。」
「何?」
「一致した後。」
「うん。」
「何をした?」
透が次の記録を開く。
「旧名称関連情報――継続利用。」
「継続利用。」
「そう。」
「どこで?」
「第七管理系統。」
「また。」
「そう。」
「目的は?」
「過去記録参照。」
「新しい処理ではない。」
「そう。」
「過去記録を見るため。」
「そう。」
「そのために。」
「うん。」
「外部回答を使った。」
「そう。」
女は少し考えた。
「じゃあ。」
「うん。」
「外部回答が。」
「そう。」
「兄の所在を教えたわけではなく。」
「そう。」
「過去の業務記録と一致する名称情報を。」
「そう。」
「返した可能性がある。」
「可能性はある。」
「その場合。」
「うん。」
「照会の目的は。」
「人探しではなく。」
「そう。」
「過去記録との互換性確認。」
「そう。」
女は頷いた。
「そうすると。」
「うん。」
「今まで見てきた流れが。」
「そう。」
「少し違って見える。」
「どう?」
「外部照会は。」
「うん。」
「人の所在を確認するためではなく。」
「そう。」
「旧名称を使った過去記録を。」
「うん。」
「現在の業務で利用できるか確認するためだった可能性がある。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「本人一致確認が不要だった。」
「そう。」
「名前だけでよかった。」
「そう。」
「業務名称として一致すれば。」
「そう。」
「処理を続けられた。」
「そう。」
女は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「照会目的が。」
「そう。」
「本当にそれだったかは。」
「まだ。」
「分からない。」
「そう。」
「記録上の目的は。」
「過去記録参照。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「その目的を設定した理由までは。」
「記録されていない。」
「そう。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「ここも。」
「そう。」
「事実と解釈を分ける。」
「そう。」
彼女は書いた。
「記録上の目的――過去記録参照。」
その下に、
「実際の意図――不明。」
と書いた。
透はそれを見た。
「かなり慎重になったね。」
女は少し考えた。
「前は。」
「うん。」
「一つの記録を見ると。」
「そう。」
「そこから人を探そうとしていた。」
「そう。」
「今は。」
「うん。」
「一つの記録から。」
「そう。」
「一つの意味だけを取るようにしている。」
「そう。」
「それ以上は。」
「うん。」
「まだ置いておく。」
「そう。」
二人はしばらく画面を見ていた。
やがて透が次の項目を開いた。
「継続利用後。」
「うん。」
「旧名称使用区分。」
「そう。」
「業務名称。」
「変わらない。」
「本人情報。」
「対象外。」
「そう。」
「外部回答。」
「保存継続。」
「どこに?」
「第七管理系統。」
女は画面を見る。
「つまり。」
「うん。」
「外部から返ってきた情報は。」
「そう。」
「消えていない。」
「そう。」
「業務記録の中に。」
「そう。」
「残っている。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「個人識別情報として。」
「扱われていない。」
「そう。」
女は静かに頷いた。
「これも。」
「うん。」
「人と情報が。」
「そう。」
「完全には同じ場所に置かれない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「人を探す側からすると。」
「そう。」
「余計に分かりにくい。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「システム側からすると。」
「別々に置く理由がある。」
「そう。」
「個人情報と業務情報を。」
「そう。」
「直接つなげないため。」
「そう。」
女は画面を見た。
「それなのに。」
「うん。」
「私たちは。」
「そう。」
「複数の記録をつなげて。」
「うん。」
「兄を探している。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「システムが分けたものを。」
「そう。」
「私たちがもう一度つないでいる。」
「そう。」
女は少し考えた。
「でも。」
「うん。」
「つなぐこと自体が悪いわけではない。」
「そう。」
「つながないと。」
「うん。」
「何が起きたか分からない。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「つないだ結果を。」
「そう。」
「本人だと思い込まない。」
「そう。」
「そこだけ。」
「うん。」
透は頷いた。
そのとき、画面の下に新しい履歴が表示された。
「旧名称関連情報――参照終了後確認。」
女が画面を見る。
「参照終了後。」
「うん。」
「何を確認した?」
透が開く。
「名称使用区分――業務名称。」
「また同じ。」
「そう。」
「個人識別用途――禁止。」
「そう。」
「業務照会用途――継続。」
「そう。」
女は少し黙った。
「ここまで来ても。」
「うん。」
「結局。」
「そう。」
「名前は業務名称として残った。」
「そう。」
「個人識別用途は禁止。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「この一連の処理は。」
「そう。」
「名前を人に戻す処理ではなかった。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「兄の日の外部照会で。」
「うん。」
「もし兄の情報が何か含まれていたとしても。」
「そう。」
「システム上では。」
「うん。」
「業務名称として処理された可能性がある。」
「そう。」
「その場合。」
「うん。」
「人の情報が。」
「そう。」
「名前という形で。」
「うん。」
「業務の情報へ変換される。」
「そう。」
女は静かに言った。
「それなら。」
「うん。」
「後から見る人が。」
「そう。」
「その業務名称を人の名前だと思ったら。」
「うん。」
「逆方向の誤りが起きる。」
「そう。」
「業務上の名前を。」
「うん。」
「人の名前として読む。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「そこから一人の人間を作ってしまう。」
「そう。」
透は何も言わなかった。
女はノートを閉じた。
「まだ兄は見つかっていない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄を探している途中で。」
「そう。」
「別のものが見えてきた。」
「何?」
女は画面を見た。
「人が消えるとき。」
「うん。」
「必ずしも。」
「そう。」
「人の記録が消えるとは限らない。」
透は黙って聞いていた。
「名前は残る。」
「うん。」
「業務は残る。」
「うん。」
「照会履歴も残る。」
「うん。」
「関連情報も残る。」
「うん。」
「でも。」
女は一度言葉を止めた。
「その全部が。」
「うん。」
「同じ人を指しているとは限らない。」
「そう。」
そのとき、透の画面に新しい通知が入った。
「外部照会結果――再利用可能。」
女が顔を上げた。
「再利用可能?」
「そう。」
「何を?」
透が詳細を開いた。
そこには、
「利用対象――旧名称関連情報。」
「本人識別――対象外。」
そして最後に、
「次回利用条件――業務名称区分一致。」
と表示されていた。
女は、その一行を長く見つめた。
「また。」
「うん。」
「名前。」
「そう。」
「人ではなく。」
「そう。」
「名前の使われ方だけで。」
「そう。」
「次の処理が決まる。」
「そう。」
女はゆっくりノートを開いた。
今度は何も書かなかった。
ただ画面を見ながら、静かに言った。
「もし兄の情報がここに混ざっていたとしても。」
「うん。」
「それは。」
「そう。」
「兄として残るとは限らない。」
「そう。」
「業務名称として残る。」
「そう。」
「照会条件として残る。」
「そう。」
「関連情報として残る。」
「そう。」
「そして。」
女は画面を見た。
「次の誰かが、それを見て。」
「うん。」
「また別の意味を作る。」
透は答えなかった。
画面には、
「次回利用条件――業務名称区分一致。」
その一行だけが残っていた。




