第一百六十八章 内容未確定
「回答状態――内容未確定。」
女は、その文字をしばらく見ていた。
「未取得。」
「うん。」
「内容未確定。」
「そう。」
「この二つ。」
「うん。」
「同じじゃない。」
「そう。」
女は画面を指した。
「未取得は。」
「回答内容を取得していない。」
「そう。」
「内容未確定は。」
「回答として受け付けたものの。」
「うん。」
「内容の分類や確定がまだ終わっていない。」
「そう。」
女は頷いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「何かは届いた。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「それが何なのか。」
「まだ確定していない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「未取得という表示だけを見ると。」
「そう。」
「何も届かなかったように見える。」
「そう。」
「でも。」
「実際には。」
「回答受付は一件。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「未取得≠未到着。」
透が頷いた。
「さらに。」
「うん。」
「内容未確定≠内容なし。」
「そう。」
女はその二つを並べた。
「また。」
「うん。」
「言葉の隙間。」
「そう。」
透は回答受付履歴を開いた。
「受付日時――兄の日から六日後。」
「一日後?」
「いや。」
「うん。」
「五日後に外部照会。」
「そう。」
「六日後に回答受付。」
「なるほど。」
女は時間を書いた。
「照会。」
「五日後。」
「回答受付。」
「六日後。」
「約一日。」
「そう。」
「回答が返るまでの時間として。」
「うん。」
「特別に長いとは言えない。」
「そう。」
「短いとも。」
「そう。」
女は頷いた。
「ここも判断しない。」
「そう。」
「ただ。」
「うん。」
「回答があった。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「内容は確定していない。」
「そう。」
透は次の項目を開いた。
「回答形式――外部連携情報。」
女が画面を見る。
「普通の文章ではない?」
「そう。」
「構造化された情報?」
「可能性がある。」
「回答内容は。」
「権限制限。」
女は黙った。
「また。」
「うん。」
「見えない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「形式は分かる。」
「そう。」
「外部連携情報。」
「そう。」
女は考えた。
「じゃあ。」
「うん。」
「外部の人が。」
「うん。」
「自由に書いた回答ではなく。」
「そう。」
「システム同士で返した情報かもしれない。」
「可能性はある。」
「でも。」
「確定できない。」
「そう。」
女は頷いた。
「じゃあ。」
「うん。」
「次。」
透が続ける。
「回答受付後処理――分類。」
「何に分類された?」
「所在関連情報。」
女は画面を見る。
「また。」
「そう。」
「外部から返ってきたものも。」
「そう。」
「所在関連情報。」
「そう。」
「それなら。」
「うん。」
「最初から最後まで。」
「そう。」
「所在関連情報として処理されている。」
「そう。」
女は少し考えた。
「でも。」
「うん。」
「その途中で。」
「そう。」
「X―4。」
「うん。」
「個人関連情報。」
「そう。」
「Q―1。」
「うん。」
「分離後個人識別情報。」
「そう。」
「それが使われている。」
「そう。」
「なのに。」
「うん。」
「最後は。」
「所在関連情報。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「個人関連情報」
「↓」
「業務分類」
「↓」
「外部照会」
「↓」
「所在関連情報」
しばらく見つめた。
「この流れだけ見ると。」
「うん。」
「個人情報が。」
「そう。」
「所在情報に変わったように見える。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「実際に変換されたとは限らない。」
「そう。」
「個人関連情報はX―4に残ったまま。」
「そう。」
「Q―1も。」
「うん。」
「関連性情報として残る。」
「そう。」
「業務記録も。」
「そう。」
「別に残る。」
「そう。」
「だから。」
女は言った。
「情報が一つに変わったんじゃない。」
「うん。」
「同じ処理について。」
「そう。」
「複数の記録が作られた。」
「そう。」
「それぞれが。」
「うん。」
「違う部分を持っている。」
「そう。」
女はノートに追記した。
「一つの情報が変化したのではなく、複数の記録が同じ処理を別々に表している。」
透は画面を見た。
「次。」
「うん。」
「回答分類後の処理。」
「何?」
「所在関連情報――外部照会結果。」
女は顔を上げた。
「結果。」
「そう。」
「何だった?」
透が詳細を開いた。
「回答分類――該当情報あり。」
女は黙った。
「該当情報あり。」
「そう。」
「それは。」
「うん。」
「兄がいたという意味?」
「分からない。」
「所在が確認された?」
「分からない。」
「照会先が見つかった?」
「分からない。」
「業務上の情報があった?」
「可能性はある。」
女は画面を見た。
「また。」
「うん。」
「該当情報あり。」
「そう。」
「何に該当したのか。」
「詳細は権限制限。」
女は椅子に背を預けた。
「これ。」
「うん。」
「言葉だけなら。」
「そう。」
「すごく重要に見える。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「実際には。」
「そう。」
「何が該当したのか分からない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「兄の所在が確認されたとは言えない。」
「そう。」
「逆に。」
「うん。」
「兄とは無関係とも言えない。」
「そう。」
女は頷いた。
「また。」
「うん。」
「ここまで。」
「そう。」
「決められない。」
「そう。」
二人はしばらく黙っていた。
やがて女が言った。
「でも。」
「うん。」
「一つ変わった。」
「何が?」
「最初は。」
「うん。」
「外部照会。」
「そう。」
「回答未取得。」
「うん。」
「内容未確定。」
「そう。」
「そこから。」
「うん。」
「回答受付。」
「そう。」
「分類。」
「うん。」
「該当情報あり。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「何もなかったわけではない。」
「そう。」
「何かが。」
「うん。」
「処理の中に入った。」
「そう。」
女は画面を見つめた。
「でも。」
「うん。」
「それが何なのかは。」
「まだ見えない。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「ここも。」
「そう。」
「結果だけではなく。」
「うん。」
「結果が何を指しているのかを見る必要がある。」
「そう。」
透は「該当情報あり」の詳細欄を開いた。
「判定根拠。」
「何?」
「照会条件一致。」
女は眉を寄せた。
「また。」
「そう。」
「人じゃない。」
「そう。」
「条件。」
「そう。」
「じゃあ。」
「うん。」
「該当情報あり。」
「そう。」
「というのは。」
「照会条件に合う情報が存在した。」
「そう。」
「という意味。」
「そう。」
「それだけ。」
「そう。」
女は静かに息を吐いた。
「だったら。」
「うん。」
「ここで『兄の所在が確認された』と読むのは。」
「飛躍になる。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「照会条件に合う情報が存在したこと自体は。」
「確定。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「該当情報あり=条件に合う情報あり。」
「本人所在確認済み、ではない。」
透は頷いた。
「そして。」
「うん。」
「次の処理。」
「何?」
「回答結果通知。」
「どこへ?」
「Q―1。」
女は画面を見る。
「またQ―1。」
「そう。」
「通知内容。」
「外部照会結果――該当情報あり。」
「そのまま?」
「そう。」
「本人一致?」
「対象外。」
女は目を閉じた。
「また。」
「うん。」
「本人を確認しないまま。」
「そう。」
「該当情報だけが。」
「うん。」
「Q―1へ戻る。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「Q―1の関連性情報に。」
「そう。」
「追加される。」
「そう。」
女は画面を見た。
「これ。」
「うん。」
「最初から最後まで。」
「そう。」
「本人を確認していない。」
「そう。」
「なのに。」
「うん。」
「本人関連の情報だけが。」
「そう。」
「何度も処理されている。」
「そう。」
女はしばらく黙った。
「だから。」
「うん。」
「ここで初めて。」
「そう。」
「少し怖い理由が分かった。」
透は黙っていた。
「人を確認していない。」
「うん。」
「でも。」
「そう。」
「人に関係する情報を使って。」
「うん。」
「人に関係する照会をして。」
「そう。」
「その結果を。」
「うん。」
「また人に関する管理へ戻している。」
「そう。」
「その途中で。」
「うん。」
「誰なのかは。」
「確認されない。」
「そう。」
女はノートを閉じた。
「でも。」
「うん。」
「これも。」
「そう。」
「誰かが悪意を持ってやったとは限らない。」
「そう。」
「最初から。」
「うん。」
「本人確認をしない設計だった。」
「そう。」
「業務を止めないために。」
「そう。」
「情報だけを処理できるようにした。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「問題があるとしても。」
「そう。」
「それは一人の判断ではなく。」
「うん。」
「仕組みの中にある。」
「そう。」
透は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「仕組みが正しいかどうか。」
「そう。」
「今は決められない。」
「そう。」
「何を目的に設計されたか。」
「うん。」
「それによって評価も変わる。」
「そう。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「今は。」
「そう。」
「ただ追う。」
「そう。」
「誰かを責めるためじゃない。」
「そう。」
「誰かを守るためだけでもない。」
「そう。」
「何が起きたか。」
「そう。」
「分かる範囲まで。」
「うん。」
「分けていく。」
「そう。」
二人は画面を見た。
その下に、もう一つの項目があった。
「回答結果――後続利用。」
透が開く。
一件だけだった。
「利用先――第七管理系統。」
女が顔を上げた。
「第七管理系統。」
「そう。」
「外部から返ってきた情報が。」
「うん。」
「そこへ入っている。」
「そう。」
「目的は?」
透が読む。
「旧名称関連情報との照合。」
女は黙った。
「また旧名称。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「外部照会の回答が。」
「そう。」
「旧名称と照合されている。」
「そう。」
「本人とは。」
「対象外。」
「そう。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「外部から来た情報が。」
「そう。」
「旧名称と関係があるか。」
「そう。」
「確認した。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「その結果が。」
「そう。」
「第七管理系統に残った。」
「そう。」
女はゆっくり言った。
「人ではなく。」
「うん。」
「名前。」
「そう。」
「人ではなく。」
「うん。」
「業務。」
「そう。」
「人ではなく。」
「うん。」
「記録。」
「そう。」
「ずっと。」
「うん。」
「そっちが追われている。」
透は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「その記録の中に。」
「そう。」
「人に関する情報がある。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「人を追っていなくても。」
「そう。」
「結果的に。」
「うん。」
「人の情報に近づいてしまう。」
「そう。」
女は静かに言った。
「そして。」
「うん。」
「その人が。」
「そう。」
「誰なのか分からないまま。」
「そう。」
画面の最後に、新しい記録が表示された。
「旧名称照合結果――一致。」
その下に、
「本人一致――対象外。」
とあった。
女は、その二行を交互に見た。
「一致した。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「誰が一致したのかは。」
透は答えた。
「記録には書かれていない。」
女は頷いた。
「なら。」
少し間を置いて、
「次は、この『一致』が何に対しての一致なのかを見る。」
透は詳細欄を開いた。
その中には、
「一致項目――名称使用区分。」
とだけ表示されていた。




