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嘘の向こう側  作者: 亀


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第一百六十五章 終わった後

透は、次の記録を開いた。


「差異未解消情報――適用終了後処理。」


女が画面を覗き込む。


「終了後。」


「うん。」


「何をする?」


「まだ開いてない。」


透が詳細を表示した。


「処理区分――分離保存。」


女は黙った。


「また、分ける。」


「そう。」


「何と何を?」


「業務情報と個人関連情報。」


「つまり。」


「うん。」


「差異が解消されないまま。」


「そう。」


「業務側から個人側へ。」


「うん。」


「戻す?」


「そういう意味ではない。」


透がさらに下を読む。


「業務記録――継続保存。」


「うん。」


「個人識別情報――X―4関連管理。」


「うん。」


「関連性情報――Q―1。」


女は画面を見た。


「三つ。」


「そう。」


「業務記録は、そのまま。」


「うん。」


「個人情報はX―4。」


「そう。」


「記録同士の関係はQ―1。」


「そう。」


女は少し考えた。


「じゃあ。」


「うん。」


「処理が終わっても。」


「そう。」


「一つの記録になるわけじゃない。」


「ならない。」


「むしろ。」


「うん。」


「三つに分かれる。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「それぞれが。」


「そう。」


「同じ処理を指している。」


「そう。」


女はノートを開いた。


「業務。」


「うん。」


「個人。」


「うん。」


「関連性。」


三つを書いた。


「これが。」


「うん。」


「別々に残る。」


「そう。」


「だから後から。」


「うん。」


「三つを見れば。」


「そう。」


「一つの出来事に見える。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「一つの記録として保存されたわけではない。」


「そう。」


女は頷いた。


「これも。」


「うん。」


「同じ。」


「何が?」


「さっきの名前。」


「うん。」


「同じものに見えるけど。」


「そう。」


「実際には。」


「別々に管理されている。」


「そう。」


透がさらに下へ進める。


「終了理由――処理完了。」


「普通だね。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「次がある。」


「何?」


「終了後参照。」


女が画面を見る。


「誰かがまた見る。」


「そう。」


「いつ?」


「適用終了の二日後。」


「目的は?」


「旧名称関連情報の継続性確認。」


女は少し黙った。


「また旧名称。」


「そう。」


「またR―3?」


透が開く。


「参照先――R―3。」


「やっぱり。」


「そう。」


「本人識別は?」


「対象外。」


女は目を閉じた。


「ずっと。」


「うん。」


「そこだけは変わらない。」


「そう。」


「名前。」


「うん。」


「業務区分。」


「うん。」


「経路。」


「うん。」


「旧記録。」


「うん。」


「でも本人は見ない。」


「そう。」


「それでも。」


「うん。」


「記録同士の関係は。」


「残る。」


「そう。」


女は画面を見ながら言った。


「この仕組み。」


「うん。」


「人を探すために作られたわけじゃない。」


「そう。」


「仕事を続けるために作られている。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「人を探している人間が見ると。」


「そう。」


「別のものが見える。」


透は黙っていた。


「ここに。」


「うん。」


「名前がある。」


「そう。」


「ここに。」


「うん。」


「個人識別情報がある。」


「そう。」


「ここに。」


「うん。」


「旧記録がある。」


「そう。」


「そして。」


「うん。」


「全部が参照関係でつながっている。」


「そう。」


「だから。」


女は言葉を選んだ。


「人が一人いるように見える。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「実際には。」


「そう。」


「業務の継続性を保つための線かもしれない。」


「そう。」


「人の線ではなく。」


「記録の線。」


女はノートに書いた。


「記録の線≠人の線。」


透は次の履歴を開いた。


「参照後処理。」


「何か変わった?」


「変更なし。」


「何も?」


「そう。」


「旧名称も。」


「変わらない。」


「業務区分も。」


「変わらない。」


「個人情報も。」


「そう。」


「新しい情報は?」


透が少し下へ進む。


「関連性区分――確認済み。」


女が顔を上げた。


「確認済み?」


「そう。」


「何を確認した?」


「ここ。」


「うん。」


「条件適合。」


「それだけ?」


「それだけ。」


女は黙った。


「本人確認済みではない。」


「違う。」


「関連性確認済み。」


「そう。」


「条件に合った。」


「そう。」


「だから関連性確認済み。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「何と何が関係しているか。」


「それは別。」


「そう。」


女はため息をついた。


「言葉が似ている。」


「うん。」


「だから。」


「そう。」


「間違える。」


「そう。」


「確認済み。」


「うん。」


「本人確認済み。」


「違う。」


「関連性確認済み。」


「そう。」


「条件適合。」


「そう。」


「全部。」


「違う。」


女はその四つをノートに並べた。


「確認済み。」


「本人確認。」


「関連性。」


「条件。」


一つずつ離して書いた。


「同じ『確認』でも。」


「そう。」


「対象が違う。」


「そう。」


透は画面を見た。


「まだある。」


「何?」


「関連性区分の変更履歴。」


「変更?」


「兄の日の翌日。」


「何から?」


「未確定。」


「何へ?」


「確認対象。」


「その後?」


「三日後。」


「うん。」


「確認対象から確認済み。」


女は黙った。


「じゃあ。」


「うん。」


「三日かけて。」


「そう。」


「本人を確認したわけではない。」


「そう。」


「関連性の条件を確認した。」


「そう。」


「だから。」


「うん。」


「関連性区分だけが変わった。」


「そう。」


女は画面を見つめた。


「もし。」


「うん。」


「この記録だけを見た人が。」


「うん。」


「『確認済み』とだけ書かれているのを見たら。」


「そう。」


「本人が確認されたと思うかもしれない。」


「そう。」


「でも。」


「実際は。」


「条件適合。」


「そう。」


「ここにも。」


女はノートに書いた。


「表示されている言葉と、実際の対象を分ける必要がある。」


透は頷いた。


そのとき、女が別の欄を見つけた。


「ねえ。」


「何?」


「関連性区分。」


「うん。」


「この『確認済み』。」


「うん。」


「いつまで残る?」


透が履歴を開く。


「現在も。」


「ずっと?」


「少なくとも。」


「うん。」


「今のところ変更なし。」


「じゃあ。」


「うん。」


「後から見た人は。」


「そう。」


「確認済みだけを見る。」


「そう。」


「元の理由まで見ない可能性がある。」


「そう。」


女は画面を見た。


「それが。」


「うん。」


「危ない。」


透は少し考えた。


「危ないというより。」


「うん。」


「情報が省略されている。」


「そう。」


「省略された結果。」


「うん。」


「読み手が補う。」


「そう。」


「補う内容は。」


「人によって違う。」


「そう。」


女は頷いた。


「だから。」


「うん。」


「同じ記録を見ても。」


「そう。」


「違う意味に取れる。」


「そう。」


「嘘を書いていないのに。」


「うん。」


「違う話になる。」


透はその言葉を聞いていた。


「それが。」


「うん。」


「最初から。」


「そう。」


「今まで見てきたもの。」


「そう。」


女は画面を閉じた。


「でも。」


「うん。」


「まだ一つ。」


「何?」


「兄の日の記録。」


「うん。」


「最終的に。」


「そう。」


「誰かが直接見たのかどうか。」


「まだ分からない。」


「そう。」


「自動処理は。」


「うん。」


「何度も出てきた。」


「そう。」


「権限も。」


「うん。」


「M―2。」


「そう。」


「でも。」


「実際の操作担当者は。」


「特定できない。」


「そう。」


「だから。」


女は少し考えた。


「ここまで来ても。」


「うん。」


「誰が何を見たのか。」


「完全には分からない。」


「そう。」


「でも。」


「うん。」


「誰が見たかを先に決める必要もない。」


透が顔を上げた。


「どうして?」


「今ある記録だけでも。」


「うん。」


「何が自動で。」


「うん。」


「何が条件で。」


「うん。」


「何が人の確認だった可能性があるか。」


「そう。」


「分けられる。」


「そう。」


「なら。」


「うん。」


「人を決める前に。」


「そう。」


「処理を決めればいい。」


透は頷いた。


「処理を先に。」


「そう。」


「人は後。」


「そう。」


女はノートを閉じた。


「それなら。」


「うん。」


「兄がどこにいたのか。」


「うん。」


「誰と会ったのか。」


「うん。」


「まだ分からなくても。」


「そう。」


「記録がどう動いたかは。」


「そう。」


「少しずつ分かる。」


「そう。」


二人はしばらく黙っていた。


やがて透が画面を戻した。


「一番最初。」


「うん。」


「兄の日。」


「そう。」


「外部入力。」


「うん。」


「所在関連情報。」


「そう。」


「本人識別情報は未受信。」


「そう。」


「その後。」


「うん。」


「記録外情報。」


「そう。」


「補完。」


「そう。」


「差異。」


「そう。」


「保留。」


「そう。」


「適用。」


「そう。」


「分離保存。」


「そう。」


「関連性確認。」


「そう。」


女はその流れを見た。


「人が一人、移動したように見える。」


「うん。」


「でも。」


「そう。」


「実際に記録されているのは。」


「情報の分類と移動。」


「そう。」


「人間の移動ではない。」


「そう。」


女は小さく息を吐いた。


「じゃあ。」


「うん。」


「ここから先は。」


「何を見る?」


透は画面の最後を確認した。


一つだけ、まだ開いていない項目が残っていた。


「関連性確認済み――後続利用履歴。」


女がそれを見た。


「確認が終わった後。」


「うん。」


「この情報が。」


「そう。」


「誰かの処理に使われたか。」


「そう。」


「それを見る。」


透が項目を開いた。


最初に表示されたのは、


「後続利用――一件。」


だった。


その下に、


「利用目的――本人所在関連情報確認。」


とあった。


女の手が止まった。


「……本人所在。」


透も画面を見た。


今までの「所在関連情報」とは、少し違う言葉だった。


女はゆっくり言った。


「ここだけ。」


「うん。」


「初めて。」


「そう。」


「『本人所在』と書いてある。」


透は次の項目を開こうとした。


画面には、まだ詳細が表示されていなかった。

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