第百六十二章 業務継続性
「比較目的――業務継続性確認。」
透は、その一行を見た。
女はすぐには何も言わなかった。
「本人確認じゃない。」
「うん。」
「担当者の確認でもない。」
「そう。」
「業務が続いているかを見る。」
「そう。」
女は画面を拡大した。
「じゃあ。」
「うん。」
「補完された本人識別情報と。」
「うん。」
「旧担当者情報を比較して。」
「うん。」
「人が同じかどうかではなく。」
「そう。」
「仕事が続いているかを確認した。」
「その可能性が高い。」
女は頷いた。
「比較項目は?」
透が開いた。
「担当業務。」
「うん。」
「権限区分。」
「うん。」
「旧記録参照条件。」
「うん。」
「外部連携条件。」
「うん。」
「名称使用区分。」
女は眉を寄せた。
「本人識別情報は?」
「比較対象外。」
「そう。」
「最初から。」
「うん。」
「人を比較する処理ではない。」
「そう。」
女は画面を見た。
「でも。」
「うん。」
「比較対象の片方は。」
「そう。」
「本人識別情報。」
「そう。」
「それを。」
「うん。」
「業務条件と比較している。」
「そう。」
「だから。」
女は少し考えた。
「人の情報が。」
「うん。」
「人を特定するためではなく。」
「そう。」
「業務の継続性を確認する材料になっている。」
「そう。」
「変な感じ。」
「そう見える。」
「でも。」
「うん。」
「記録上は。」
「そう。」
「矛盾していない。」
「そう。」
女は次の項目を開いた。
「比較結果。」
透が読む。
「担当業務――一致。」
「権限区分――一致。」
「旧記録参照条件――一致。」
「外部連携条件――一致。」
「名称使用区分――一致。」
女は画面を見た。
「全部一致。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「業務継続性あり。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「本人一致は。」
「未実施。」
「そう。」
女は静かに言った。
「また同じ。」
「うん。」
「一致。」
「そう。」
「でも。」
「本人ではない。」
「そう。」
彼女はノートを開いた。
「今回の一致。」
「うん。」
「業務。」
「そう。」
「条件。」
「そう。」
「権限。」
「そう。」
「名称。」
「そう。」
「人ではない。」
「そう。」
書き終えると、女はペンを置いた。
「これなら。」
「うん。」
「旧担当者情報が必要だった理由も。」
「少し分かる。」
「どういうこと?」
「補完された情報が。」
「うん。」
「旧担当者に関係するものか確認するためではなく。」
「そう。」
「その情報を含む処理が。」
「うん。」
「旧担当者の時代から続いている業務の範囲内かを見る。」
「そう。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「旧担当者本人を探していたわけじゃない。」
「そう。」
「旧担当者が持っていた仕事を確認していた。」
「そう。」
女はしばらく画面を見ていた。
「でも。」
「うん。」
「一つ残る。」
「何?」
「補完された情報。」
「うん。」
「なぜ必要だったのか。」
「そう。」
「業務継続性を確認するなら。」
「うん。」
「本人識別情報まで必要なの?」
透は記録を確認した。
「条件上は。」
「うん。」
「記録外情報を補完すると。」
「うん。」
「その情報がどの管理区分に属するかを確認する必要がある。」
「そう。」
「本人識別情報が含まれている場合。」
「うん。」
「X―4に移す。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「業務記録との直接結合を避ける。」
「そう。」
女は考えた。
「つまり。」
「うん。」
「本人情報を確認するためではなく。」
「そう。」
「本人情報が混ざったまま業務記録に残らないようにするため。」
「そう。」
「分離する。」
「そう。」
女は頷いた。
「だから。」
「うん。」
「補完は。」
「うん。」
「確認というより。」
「そう。」
「整理に近い。」
「可能性がある。」
女は画面を見た。
「じゃあ。」
「うん。」
「15時12分。」
「うん。」
「本人識別情報を補完した。」
「そう。」
「その直後。」
「うん。」
「X―4へ移した。」
「そう。」
「その後。」
「うん。」
「業務継続性を確認した。」
「そう。」
「この順番。」
「そう。」
女はノートに書いた。
「補完。」
「分離。」
「業務継続性確認。」
「ただし。」
透が言った。
「同じ案件とは限らない。」
女は頷いた。
「そう。」
「記録上は連続している。」
「うん。」
「でも。」
「うん。」
「処理番号は別。」
「そう。」
「自動連携も。」
「一部だけ。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「時間が近いことだけでは。」
「そう。」
「一つの流れとは断定できない。」
「分かった。」
女は書き直した。
「15:12 補完。」
「15:16 X―4分離。」
「15:23 業務継続性確認。」
その横に、
「関連性――未確定。」
と付けた。
透は画面を見た。
「15時23分。」
「うん。」
「確認者は?」
「M―2。」
「C―12?」
「そう。」
「名前。」
「権限制限。」
「また。」
「そう。」
女は苦笑した。
「結局。」
「うん。」
「ずっとM―2。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「M―2を持つ人は複数いる。」
「そう。」
「だから。」
「人は分からない。」
「そう。」
女は画面を閉じた。
「でも。」
「うん。」
「M―2が何を意味するのかは。」
「分かる。」
「原情報参照。」
「そう。」
「業務条件確認。」
「そう。」
「旧記録確認。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「この処理で重要なのは。」
「うん。」
「誰がやったかだけではない。」
「そう。」
「M―2を持つ人なら。」
「うん。」
「同じ種類の確認ができる。」
「そう。」
「だから。」
「うん。」
「人が交代しても。」
「そう。」
「処理が続く。」
「そう。」
女は少し黙った。
「これ。」
「うん。」
「前に見た。」
「そう。」
「引継ぎ。」
「うん。」
「人が変わって。」
「うん。」
「仕事が続く。」
「そう。」
「権限が残る。」
「そう。」
「記録も残る。」
「そう。」
「だから。」
女は画面を見た。
「記録だけ見ると。」
「うん。」
「同じ人がずっとやっているように見える。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「実際には。」
「そう。」
「人が入れ替わっている。」
「そう。」
「名前を追うと。」
「うん。」
「途中で別人になる。」
「そう。」
「権限を追うと。」
「うん。」
「同じように見える。」
「そう。」
「だから。」
女は言った。
「権限の継続と。」
「うん。」
「人の継続を。」
「そう。」
「同じものとして扱ったら。」
「間違える。」
「そう。」
女はノートを閉じた。
「兄も。」
「うん。」
「もし。」
「うん。」
「この記録を見ていたなら。」
「そう。」
「同じことに気づいたかもしれない。」
透は彼女を見た。
「でも。」
「うん。」
「それは分からない。」
「そう。」
「兄がこの仕組みを知っていた証拠はない。」
「そう。」
「だから。」
女は頷いた。
「言わない。」
「うん。」
二人は再び画面を見た。
そこには、業務継続性確認の結果が残っていた。
「継続――確認済み。」
その下に、
「本人一致――対象外。」
とあった。
女は指を止めた。
「これ。」
「うん。」
「重要。」
「どこ?」
「本人一致――対象外。」
「そう。」
「未実施じゃない。」
「そう。」
「対象外。」
「そう。」
「つまり。」
「うん。」
「最初から。」
「そう。」
「本人を比較する必要がない処理として。」
「そう。」
「設計されている。」
「そう。」
女は頷いた。
「なら。」
「うん。」
「兄の日に。」
「そう。」
「本人識別情報が補完されたこと自体が。」
「うん。」
「本人確認のためだったとは。」
「言えない。」
「そう。」
「むしろ。」
「うん。」
「本人確認をしないまま。」
「そう。」
「情報を業務上扱えるように。」
「そう。」
「分離した可能性がある。」
「そう。」
女はしばらく黙っていた。
「それなら。」
「うん。」
「私たちが探しているものも。」
「うん。」
「少し変わる。」
透は聞いた。
「どう変わる?」
「兄本人を示す記録。」
「うん。」
「じゃなくて。」
「うん。」
「兄の日の処理が。」
「うん。」
「どの情報を必要として。」
「そう。」
「どの情報を捨てて。」
「うん。」
「どの情報を別管理に移したのか。」
「そう。」
女は画面を指した。
「そこを見る。」
「情報の流れ?」
「そう。」
「人の流れじゃなく。」
「そう。」
女は次の検索欄を開いた。
「補完前。」
「うん。」
「補完後。」
「うん。」
「分離前。」
「うん。」
「分離後。」
「そう。」
「その四つを並べる。」
透が検索条件を入力した。
結果が表示された。
「補完前――記録外情報。」
「補完後――本人識別情報。」
「分離後――X―4。」
女は画面を見た。
「分離前は?」
「業務記録。」
「分離後は?」
「X―4。」
「じゃあ。」
「うん。」
「情報は。」
女は指で画面をなぞった。
「外から入って。」
「うん。」
「一度業務記録の外側に置かれて。」
「うん。」
「本人識別情報として補完されて。」
「うん。」
「その後。」
「X―4へ分離された。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「最初の情報が。」
「何だったかは。」
「分からない。」
「そう。」
女は画面を閉じた。
「ここまで。」
「うん。」
「一つだけ。」
「何?」
「兄の日の処理には。」
「うん。」
「『誰か』が必要だったというより。」
「そう。」
「『何かの情報』が必要だった。」
「そう。」
「そして。」
「うん。」
「その情報は。」
「そう。」
「人を特定する形では。」
「うん。」
「最後まで残らなかった。」
「そう。」
女は立ち上がった。
「だから。」
「うん。」
「兄がそこにいたかどうかは。」
「まだ分からない。」
「そう。」
「でも。」
「うん。」
「兄の日に。」
「そう。」
「誰かに関する情報が。」
「うん。」
「業務処理の中を通った可能性はある。」
「可能性はある。」
女は頷いた。
「そこまで。」
「うん。」
「それ以上は。」
「まだ言えない。」
透も頷いた。
そのとき、画面の端に新しい通知が表示された。
「X―4――追加参照履歴。」
女が振り向いた。
「今日?」
「そう。」
「何時?」
透が開く。
「現在から三十二分前。」
「目的は?」
「補完情報の適用範囲確認。」
女は画面を見つめた。
「適用範囲。」
「そう。」
「誰に適用したかじゃない。」
「うん。」
「どの業務に適用したか。」
「そう。」
「じゃあ。」
女は静かに言った。
「まだ続いてる。」
透は画面を開いた。
その記録の最初には、
「適用範囲――所在関連情報。」
と表示されていた。




